ストレージ業界を席巻する新興ストレージベンダーを集めて開催した座談会。前回は、参加企業各社に挨拶も兼ねて、自社製品の特徴を紹介してもらった。同じストレージではあるが、各社とも特徴の異なる色取り取りの製品を提供していることがおわかりいただけただろう。

参加企業が8社もあり、紙幅の都合から前回は自社製品の紹介だけで終わってしまったが、今回からはいよいよ本題に入る。まずは、自社製品以外で気にしている製品や企業があるのか、業界大注目の「3D NAND」が与えるインパクトはどれほどか、そんな質問をぶつけてみた。

シリーズ企画『新興ストレージベンダー座談会』

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新興ベンダー各社が挙げる “気になる存在”

──次に、他社の製品のことをどう考えているのかを聞いていきたいと思います。QNAPさんとSynologyさんは台湾のNASベンダーという点で同じですが、その辺りはどうですか。

QNAP (テックウィンド) 野嵜氏

QNAP(テックウィンド) 野嵜太郎氏

QNAP Systems(テックウィンド) マーケティング部 部長 神崎尚君氏:Synologyさんとは、グローバルにおいて、特にSMB向けのNASでかち合うケースが多いです。コンシューマ向け製品が伸びていて、ユーザーさんからの支持も高いと聞いています。Synologyさんは、グローバル展開で日本を最後に据えたということでしたが、QNAPは逆に日本を最初に据えて展開しました。そのあたりの戦略の違いもあり、気になっています。

Synology (アスク) 児島氏:確かに、コンシューマ向け製品はワールドワイドでも国内でも売れていますね。台湾にいると、どちらの製品がどう優れているということはまったくありません。メーカーとして他社比較はしない方針なのですが、やはりQNAPは意識していますね。リスペクトしています。

──Nimbleさんは回答に、まだあまり知られていないベンダーのお名前を挙げていらっしゃいました。

Nimble 川端氏

Nimble Storage シニアセールスエンジニア 川端真氏

Nimble 川端氏:今回集まったベンダーは2008年頃までに創業した企業が多いと思いますが、ここにきて、新しいベンダーも登場してきています。そうした新しいベンダーがどんな技術を使って市場に入ってくるのかは注意して見ていますね。具体的には、ステルスモードから抜けて情報公開を始めつつあるCohesityやDatriumなどです。そのほかにも、まだステルスモードの企業が数社あります。

また、自社の次期製品にも注目しています。特定用途向けにはオールフラッシュが向いている場合もあるので、Nimbleとしても、オールフラッシュの製品は考えています。

──フラッシュという意味では、Violin Memoryさんは、サンディスクの超高集積度のNANDストレージを挙げていらっしゃいます。

Violin Memory 青野氏:はい。国内でも早く出荷開始してほしいという期待も込めて。

Violin Memory 青野氏

Violin Memory シニアテクニカルセールスマネージャー青野雅明氏

我々はデータセンターをオールフラッシュで構築していくという将来ビジョンを持っていますが、NANDフラッシュが全てのHDDストレージを置き換えるにはまだ容量単価が高いという状況です。サンディスクさんが展開する3Uで512TBといったストレージアレイが普及してくると、容量単価はHDDストレージに近づいてきます。そうすると、超高速が求められる層、プライマリストレージの層、バックアップやアーカイブの層まで含めて、オールフラッシュ・データセンターが現実的になってきます。超高集積度のNANDストレージは、それを加速させる1つのテクノロジーだと思います。

サンディスク 山本氏:オールフラッシュアレイのInfiniFlashは、11月中旬より日本のお客様へ提供を開始することが決まりました。重複排除や圧縮なしにギガバイトあたり1ドル未満で提供することで、フラッシュをより多くのお客様にご活用いただくことも考慮しています。 また、フラッシュには、シンボル的な意味合いもあると考えています。歴史を振り返ると、コンピュータの内部にはずっと機械が存在していました。フラッシュが普及するとはじめて機械部分が完全になくなります。記憶装置が半導体になることで、CPU、メモリ、ストレージまで含めて半導体になる。これはコンピュータ史上、非常に大きな出来事です。

スマートフォンやタブレットを含めてフラッシュを使ったデバイスが普及し、市場のニーズに対応するには高集積のものが必要になってきました。半導体の技術革新は著しく、3D NANDなどの注目すべき新技術も次々と登場しています。

ソフトウェアも非常に重要です。半導体技術やハードウェアの進化と、それを製品に組み入れるソフトウェア技術の進化により、新しい変化の波が押し寄せています。気になる製品という意味では、皆さんのことを意識しています。

──ティントリさんもオールフラッシュ製品の提供を開始しました。

ティントリ 羽鳥氏

ティントリジャパン マーケティング本部長 羽鳥正明氏

ティントリ 羽鳥氏:仮想マシンに最適化した初のオールフラッシュ製品という位置づけです。今後もメインは、ライト要求は必ずフラッシュに書き込むFlashFirstテクノロジーに基づいたハイブリッド製品を販売していきますが、以前では物理環境で稼働していた大容量なデータウェアハウスやビッグデータ解析のような用途が仮想環境でも徐々に増えてきたことや、従来ではFATなワークステーションでこなしていたCADなどの高負荷なデスクトップアプリケーションもVDI環境で実現することができるようになったこともあり、このたびオールフラッシュ製品をラインアップに追加しました。

──Pure Storageさんはどうですか。

ピュア・ストレージ 阿部氏:当社はオールフラッシュでプライマリストレージをターゲットにしています。これはあくまで個人の意見ですが、プライマリストレージでは、ミドルウェアやアプリケーションを意識せざるをえないところがあって、その意味では、オールフラッシュのコンバージドシステム(垂直統合型システム)、例えば「Exadata」のような製品とどう戦っていくかは気になっています。

また、SPARCのソフトウェアオンシリコン(SoC)の考え方に沿うと、SQL文をチップのインストラクションセットで解釈することができるようになります。あとはインタフェースを提供していろんな用途に特化したパフォーマンスの高い専用機として製品を展開すればいい。そういった専用ハードウェアを備えた垂直統合型システムに対し、我々のような単体のストレージベンダーの価値をきちんと伝えていくことの重要性を感じています。