**事例2** 言語係数の使用方法を誤ったケース

経験のない開発言語を使用するため規模感がわからない場合、規模見積りにおいて言語係数を使用することがあります。ここでの問題は2つあります。1つはFP数からSLOCに変換した後の工数見積りの範囲で、この問題については前回説明しました。

もう1つの問題は、言語係数を過信して見積りの根幹部分に使用してしまったことです。言語係数はある意味カタログ値であり、高水準言語の利点を生かせた場合の数値です。実績データから見ると、FP数とSLOCとの換算は言語種別だけでなく、処理ロジックの複雑さ、どの程度異常系を用意するのかによっても変動します。言語種別だけが変動要素ではありません。実績データから導かれた言語係数を利用すれば、見積りミスは回避できるでしょう。

昨今は開発環境が進化し、ますます要求仕様と実装の規模感のギャップが生じてきていると思います。高水準言語だけでなく、パッケージを利用する時も同様です。製造工程はカスタマイズ部分のSLOCをベースとして工数を見積もってもいいのですが、設計や試験の工数はユーザーに提供する機能数から見積もるべきです。工数見積りを見据えて適切な規模尺度を選択し、どの規模に、どの工数が比例するのかを考慮した上で見積りを実施してください。

言語の変換係数を使う場合は、工数見積りを見据えて規模を見積もる!

余談

この事例2のプロジェクトの規模の実績値ですが、FP数の予実差はなかったものの、SLOCは見積りの2倍となってしまいました。高水準言語を利用することでSLOCはCOBOLで実装した場合の半分になると見積もったのですが、現実は言語の利点を生かしきれませんでした。技術も使い方次第だということです。

執筆者プロフィール

藤貫美佐(Misa Fujinuki)
株式会社NTTデータ SIコンピテンシー本部 SEPG 設計積算推進担当 課長。IFPUG Certified Function Point Specialist。日本ファンクションポイントユーザー会の事務局長を務める。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.2(2008年1月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。