• Personal Android

Windows 10/11には、スマートフォンと連動させるための「スマートフォン連携」アプリが用意されている。これを使うと、スマートフォンの画像を簡単にコピーでき、PC側で通話を行うことなどが可能になる。スマホを開かなくても、SMSメッセージや通知を見ることができるので、便利なこともある。たとえば、サイトにアクセスするときに、SMSで認証コードが送られてくるような場合などだ。

接続するスマートフォンをSamsung社のGalaxyシリーズにすると、さらにいくつかの機能が使えるようになる。その1つが、「アプリ」と呼ばれるもので、スマートフォン上で実行しているアプリの画面をWindowsのデスクトップに表示できる(写真01)。PCに慣れた身にとっては、マウスとキーボードで操作できるのが「有難い」点。

  • 写真01: Samsung社のスマートフォンとWindowsの「スマートフォン連携」を接続すると、「アプリ」メニュー(右ウィンドウの上部中央付近)が表示され、スマートフォンの画面(左のウィンドウ)をWindowsデスクトップに表示できるようになる

Windows 11で利用できるWindows Subsystem for Android(WSA)と似ているが、アプリはスマートフォン側で実行されている点が異なる。たとえば、スマートフォンのセンサーを利用するなど、ハードウェアに関わるアプリを利用できる。歩いた歩数をカウントするアプリ、たとえばGoogleのFitなら、歩いた歩数が表示されるが、WSAの場合、PCを持ち歩いたからといって歩数をカウントしてくれるわけではない。そのほかに電話着信履歴の表示やLINEなど単独のインスタンスしか実行を許さないアプリなどもPC側で操作できる。

もともとAndroidには、スクリーンショット用などに画面バッファをアクセスする機能がある。現在のバージョンではアクセスには管理者権限が必要でAndroidアプリからはアクセスができない。しかし、OEMによる組み込みアプリは、必要な権限を付与できるのでアクセスが可能だ。

スマートフォンから利用するIoTデバイスやモバイル接続が必要となるアプリなどを使うこともでき、いちいち小さい画面で操作しないで済む。ただし、まったく制限がないわけでもない。まず、生体認証、パスワード入力などセキュリティ操作は実機で操作する必要がある。また、アクセスポイント切り替えなどWi-Fiを操作する処理と「アプリ」は共存できない。

「アプリ」は、単にスマートフォンの画面をPC側に表示しているだけで、生体認証デバイスはスマートフォン側にあるため、操作できないのは当然なのだが、PIN入力などセキュリティ関連のダイアログなどを「アプリ」は表示しない、あるいは、できないようだ。たとえば、Microsoft Authenticatorアプリは、2要素認証の1つとして動作するが、このときの認証操作で、生体認証やPIN入力が必要になる。このとき、アプリの画面は黒くなってしまい操作ができなくなる。

「アプリ」はWi-Fi経由でLANに接続してPC側に画面を表示させている。一部のデジタルカメラでは、専用アプリでスマートフォンに画像転送ができるが、このときデジタルカメラをアクセスポイントにして、そこにスマートフォンを接続させることがある。そうなると、アプリの接続が切れてしまう。ただし、デジタルカメラアプリの起動やBluetooth経由の操作(リモートシャッターなど)、Wi-Fi設定を変更しない操作は可能である。

Samsungスマートフォンでは、このほかに「ファイル転送」、「クリップボード転送」、「テザリング制御」が行える。「ファイル転送」は「アプリ」の画面に対してWindows側のファイルをドラッグ&ドロップしてファイルを転送する。ホーム画面に落とせばダウンロードフォルダに、「マイファイル」アプリ(Galaxyシリーズに標準搭載のファイル操作アプリ)なら、開いているフォルダーにファイルが保存される。

「マイファイル」アプリでアイコンが表示されているファイルをドラッグしてPCに転送することもできる。ただし、ファイル操作アプリは、Samsungの「マイファイル」に限られ、Androidで標準的なGoogleのFilesアプリなどは対応していない。

「クリップボード転送」は、起動中の「アプリ」とWindowsの間でのコピー&ペーストを双方向で可能にするもの、これは意外に便利だった。なお、スマートフォン側に貼り付けを行う場合には、Galaxyキーボードが対応し、PC側のクリップボード内容がタッチキーボードの変換候補領域に表示され、これをタップして行う。

「テザリング制御」はWindows 11 Ver.22H2以上、Samsung One UI 4.1.1+以上の組合せが必要。筆者のスマホはOne UIのバージョンが4.1だったので試すことはできなかった。この機能は、PC側からスマートフォンのWi-Fiホットスポットのオンオフを可能にする。同じくAndroidでは、「Wi-Fiテザリング」(Wi-Fiホットスポット)のオンオフも管理者権限が必要で、OEMメーカーが組み込んだプログラムが必要になる。

ざっと見ると、SamsungのスマートフォンはWindowsと連携するための機能が、かなり作り込まれているようだ。このため、他社のスマートフォンへの対応はアプリインストールで行えるような簡単なものではなく、当面Samsungのスマホのみが対応することになりそうだ。

今回のタイトル“Personal Android”は、エドマンド・クーパーの「アンドロイド」(ハヤカワ。原題Deadly Image)に登場する用語。人間そっくりのロボットであるアンドロイドが、核戦争後の22世紀の社会を動かしている。人間を支配しようとするアンドロイド、人間性を獲得するアンドロイド、反旗を翻す人間のグループ、140年間の冷凍状態から目覚めた主人公と、最近のSFアニメなら1つは持っていそうな要素がぎっしりと詰まったこの作品、執筆は1958年、65年前である。