広告代理サービスや広告関連のソリューションなどインターネットのマーケティング事業を展開するオプトは、3つのオウンドメディアを持っている。1つは、ソーシャルメディアの可能性を追求し「ソーシャルに強いオプト」というブランディングを目的とした「kakeru」。もう1つは、海外のアドテク情報をマーケッター向けに「知見を持つオプト」を発信することを目的とした「Global Ad tech」。この2つは広告関連ビジネスを手がけるオプトの業務に添った内容だ。

「Global Ad tech」

「kakeru」

これに対して、最も古くからある「opt cafe!」は社内外のインタビューなどを中心とした読み物メディアで、誕生は2013年11月。前身は紙媒体として年8回発行されていた社内報だという。

「opt cafe!」

オプトホールディング ビジネスサービス本部 コーポ-レートデザイン部 部長 広報・ES・総務・ダイバーシティ担当 兼 オプト社長室広報チーム チームマネージャーである高村奈津子さん

「紙媒体だと読んだ人の反応がわかりませんから、Webに移行しようということになりました。そして、せっかくWeb化するのであれば社内だけでなく、社外の人にも読んでもらおうと考えました。就活生や社員の家族、取引先などにも会社の制度や魅力を伝え、ファンを増やそうという目的で誕生したのが『opt cafe!』です」と語るのは、オプトホールディング ビジネスサービス本部 コーポ-レートデザイン部 部長 広報・ES・総務・ダイバーシティ担当 兼 オプト社長室広報チーム チームマネージャーである高村奈津子さんだ。

広報担当が執筆から写真撮影までを担当

前述の「kakeru」、「Global Ad tech」の制作自体は各チームが独立して行っている。一方、「opt cafe!」は、企画・制作のすべてを広報担当者が業務の一環として行っているという。現在、担当者は高村さんを含めた5人だ。

オプトの広報チーム

高村さんは「opt cafe!」の現在の発行責任者になる。2014年7月から担当になり、翌年4月までは一人で業務を担当。当時は社内からのフィードバックもあまり得られず、更新頻度も低かったため、運営強化のため現在の体制が作られたのだという。

「たまたまですが、全員が女性です。写真も文章もすべて私たちが作っていますが、素人ですから文章を書くのが苦手という人もいます。それでも『仕事なのでがんばってください』という感じで取り組んでいます」と高村さんは語る。

編集会議は週に1度のペースで行われ、Googleのスプレッドシートを利用してネタ出しとスケジュール管理を行っているという。日常的に、社員とコミュニケーションを取る中でネタを収集し、編集会議では、各人が持ち寄ったネタについてその記事が何を目的にしてどんな効果を出せそうかなどを話し合い、担当を決める。

「ネタ出しのノルマはなく、出し合ったネタの中で採用になったものはバランスを取りながら担当を決めています。大まかに分野ごとの担当はありますが、同じ人が連続してしまう場合には分担しますし、記事作成が偏れば他の業務を残りの人で分担するなどして調整しています」と高村さん。

社外の人へのインタビューも行うが、メインになるのは社内のインタビューや、経営層からのメッセージ発信だ。その人が何をしているのか、どういった人柄なのかを理解するため、普段から広報の人たちは社内のさまざまな部署と交流を深めているという。

「メンバーの経験や年齢がほどよくバラけているので、各自がネットワークを広げることでネタを見つけ、出演交渉をしやすくしています」(高村さん)

登場人物には妥協せず、更新頻度も下げない努力

オプトには「一人一人が社長」という社是がある。「opt cafe!」もこれをコンセプトにしており、同じ人ばかりでなく、より多くの人に登場してもらえることを考えているという。その工夫の1つが、前述のスタッフの人脈を広げることだ。

そしてもう1つの工夫は、社員に「出たい」と思ってもらえるようなメディアにすることだという。

「多くの人に読まれ、おもしろいと思ってもらえることが必要だと思います。また、読んでよかったと思えるかどうかも大切です。現在のPVは月2万ほどですが、1年前は8,000程度で、徐々に更新頻度を上げることでPVを伸ばしてきました。また、出演をグループ会社やパートナー会社にまで広げて世の中のキーワードに添った対談を増やしたり、記事を更新したタイミングでFacebookやTwitterでシェアしたり、社内メールで記事の裏話を記載したりもしています」と高村さんは説明した。

また、登場した人にとって後悔の残らない記事にすることも大切だという。

オプトホールディング ビジネスサービス本部 コーポ-レートデザイン部 兼 社長室 広報の田中絢子さん

「出てもらう時は押し売りをしないことを大事にしています。記事チェックも納得してもらえるまで繰り返します。記事の締切はありますが、それを守るためにOKが出ないものを掲載するようなことはしません。1日や2日であれば掲載日を延ばしてでも、チェックを繰り返すということもあります」と、オプトホールディング ビジネスサービス本部 コーポ-レートデザイン部 兼 社長室 広報の田中絢子さんは語る。

一方で、更新頻度を保つ秘訣として、取り上げるネタのハードルを上げ過ぎないことを意識しているのだという。体制強化した後も、他の広報業務が忙しくなると、ブログネタが枯渇したり、企画検討に充分な時間が取れないということがたびたびあったそうだが、企画の規模感や内容の濃さにこだわっての掲載延期はしないというルールは作られている。

「記事の内容については妥協しませんが、企画や取材の仕込みについては苦労することもあります。また、他の広報業務が忙しく、ブログの企画を考える時間が取れないということもあります。しかし、それで掲載日を延期してしまうと、次も同じように先延ばししたくなります。絶対に更新を止めない、ライトなネタでも良いので記事を止めずにアップすると決めています」と高村さん。専業スタッフがいない中、更新頻度を保つ秘訣がこの方針だという。

より多くの人に「オプトマインド」を伝えるメディアへ

ネタ出しから記事執筆、写真撮影まですべてを社内の広報スタッフが担当する「opt cafe!」は、手づくりのオウンドメディアだ。営業や経営企画出身のメンバーで構成されたチーム故に、不慣れで苦労することも多く、取り上げるネタの是非や、写真の仕上がりなど細かい点までは社内から意見をもらうこともあるというが、そうした反応も糧にしつつ成長していくメディアとなっている。

「社内だからこそ率直な反応がもらえるので、ありがたいと思っています。個人的には、社内のネタは社員である私たちが一番持っていますし、理解していると思っているので、このまま手作りで進めて行くのがいいのではないかと思っています」と田中さん。

高村さんも「社員が内製でやっているサイトですから、だからこその暖かみや人間感を書き漏らさないように心がけています。わかりやすく伝えることは大切ですが、最終的なメッセージだけを伝えるのではなく、そこに至るプロセスや背景、想いなども省略しすぎないようにしたいですね」と、手作りのメディアの特色を重視していることを語ってくれた。

今後の「opt cafe!」については、基本的に現在の路線を維持しつつ、よりPVを伸ばしていくために色々仕掛けていきたいというのが運営陣の意向のようだ。

「月間10万PVになったら、おもしろいことができそうですね。このブログに載るということを喜んでもらえるといいなと思っています。今後はさらに社外の人の出演を増やしたいですし、いろいろなコーナーも作りたいと思います。主軸が代理店事業ですから、中の人間がどういう姿勢で、どんな風にサービス提供しているかを理解していただく場として、どの記事からもオプトマインドが感じられるようにして行きたいですね」と高村さんは力強く語った。