今回のMacworldですが、いろいろな意味で「寂しいッス」、この一言に尽きますね。噂されていた新Mac miniは出ず、Snow Leopardについても特に目新しい情報はなく……海外のメディアでは辛口の論調が目立ちますが、それもやむなしといったところです。ともあれ、本年もご贔屓のほどよろしくお願い致します。

さて、今回は「iWork.com」について。オフィススイート「iWork '09」とともにAppleが提供を開始したオンライン文書共有サービスだが、なにができるか、他のオフィススイートとどこが違うかなど、実際に利用してみなければわからない点も多い。そこでiWork '09の30日間試用版を入手し、あれこれ試してみた次第だ。

iWork '09の新機能

iWorkは、プレゼンテーションツールの「Keynote」、表計算の「Numbers」、そしてワープロ「Pages」で構成される。今回のiWork '09には、現在のところパブリックβ版としての運用だが、そこに文書共有サービス「iWork.com」がアドオンされるという構図だ。iWork.comの説明へ進む前に、KeynoteとNumbers、そしてPagesの主要な新機能を紹介しておこう。

まずはKeynoteから。最大の話題は、新しく追加されたトランジション「マジックムーブ」だろう。こちらに掲載されたデモにあるように、画面上に散らかったトランプを整列するなどの表示効果を、パラパラマンガよろしく複数のスライドを用意するだけで作成できる。プレゼンテーションを遠隔操作するiPhoneアプリ「Keynote Remote」の提供も開始され、Apple Remoteを持ち歩く必要がなくなったばかりか、画面で確認しながらスライドを移動できるようになった点もうれしい。

Numbersでは、表計算の基本ともいえる数式機能が強化された。ワンクリックで数式を作成できるようになったことはともかく、シートで使用されているすべての数式を一覧表示できる「数式リスト表示」が実務派にはありがたいはず。グラフオプションも追加され、線 / 棒 / 面が混在したグラフも作成できるようになった。

Pagesはといえば、「アウトラインモード」の追加が最大のトピック。文章全体を俯瞰したいときに見出しのみ表示するもよし、長い文章を記述するときプロットを作成して後から肉付けするもよし。Pagesは他のワープロソフトに比べ動作が軽いこともあり、アイデアプロセッサ的に使ってもいいだろう。Numbersと連携したデータ差し込みも、利便性の高い新機能といえる。

動画 - Keynote '09の新機能「マジックムーブ」
Keynote '09の新機能「マジックムーブ」を使い、6個の球体を1箇所に移動させたムービー。わずか2枚のスライドをもとに作成している

Numbers '09ではクリックで数式を作成できるようになったほか (左)、シートに含まれるすべての数式を一覧する「数式表示モード」(右) が追加された

Pages '09は「アウトラインモード」に対応。全文表示 (左) と見出し部分のみ表示 (右) を切り替えつつ作業できる

どう使う? 話題の「iWork.com」

iWork '09と同時に発表された「iWork.com」は、文書の共有を目的としたAppleの新しいネットワークサービスだ。現段階ではパブリックβ版として無償利用できるが、正式版となった暁には有料化される見込み。「第306回 年末企画: OS Xの行く年来る年 ~ 2009年を大予想」で、今年Appleはサブスクリプションサービスを拡大するだろうと書いたが、第1弾が文書共有サービスとは正直予想外だった。

iWork.comで文書を共有する方法は、シンプルそのもの。目的の文書を開いた状態でツールバーの「iWork.com」ボタンをクリック(必要であればサインインを実行)すると、「iWork.com Public Betaで書類を閲覧するように依頼します:」というダイアログが現れる。ここに文書を共有する相手のメールアドレスを入力し(省略不可)、メッセージを入力したあと[共有]ボタンをクリックすれば、文書のアップロードがスタート。相手には共有先のURLが記されたメッセージが、発信元のアドレスにも控えのメッセージが送信され、そのURLにアクセスすると文書を閲覧 / ダウンロードできる、という流れだ。

iWork.comへサインイン (左)、その後文書を共有したい相手のメールアドレスを指定しアップロードを開始する

アップロードした文書は、Webブラウザで閲覧できる。編集機能はなく、内容の変更はローカルで行うべしというスタンスのようだが、コメントを残すことはできる。コラボレーションというほどではないが、連絡を取り合いつつ文書作成を進めることは可能だ。

メールに記されたURLにアクセスすると、Webブラウザで文書を閲覧できる (左)。共有文書を一覧することも可能だ (右)

このように、フォーマットを指定してダウンロードできる

iWork.comならではの機能としては、アップロードした文書以外の形式でダウンロード可能なことが挙げられる。Numbers (Numbers '08 / '09、PDF、Excel) 、Keynote (Keynote '08 / '09、PDF、PowerPoint)、Pages (Pages '08 / '09、PDF、Word) それぞれで適切にダウンロードオプションを設定しておけば、iWork '09以外のユーザとも文書を共有できる。

問題は、このサービスがいくらで提供されるか、ということ。確かに便利な場面もあるだろうが、メールに添付するなど手作業でこなせないこともない機能ではある。なお、1アカウントに割り当てられるストレージサイズは1GBで、1つの文書が平均5MBと仮定すると同時に共有できる文書は約200。容量20GBのiDiskサービスを含むMobileMeが年9,800円 (しかもメールなど他のサービスも多数) ということを考慮すると……単独のサービスとして提供するには少々厳しいかもしれない。MobileMeのオプションとして、年500~1,000円程度で提供することが現実的なのではないだろうか。