パナソニックは水まわりにおける除菌、防カビ、脱臭効果を目指してオゾン水を生成するオゾン水生成デバイスを開発。オゾン水を家庭で活用することを目指す。

オゾン水は、高い衛生対策が求められる浄水場や半導体工場などの大規模施設で使用され、薬品が不要であることから、食品関連分野での洗浄などにも利用されている。パナソニックでは、こうした実績があるオゾン水を家庭で利用するための技術開発を進めてきたという。

病原微生物の専門家である大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科の向本雅郁教授は、「オゾン水は強力な酸化作用を持つこと、反応後は酸素に戻るため残留性がない点が特徴である。また、オゾン水の中に含まれる1ppmオゾンと空気中の約500ppmとが同等であり、液体なので扱いやすく、対象物に効果的に作用する点も見逃せない特徴のひとつ」と話す。

  • 大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科の向本雅郁教授

また、向本雅郁教授は「オゾンは細胞壁や膜を構成する脂質やタンパク質の酸化されやすい部位と反応して損傷させ、さらに細胞内部に進入して易反応成分と反応が進む過程で殺菌されると考えられている。短時間で水と酸素になるため、安全性が高いという長所はあるが、効果が継続しないという短所がある」という。

パナソニックは帯電微粒子水「ナノイー」や、次亜塩素酸などの独自技術をもとに、空気に対する除菌・脱臭ソリューションを開発。製品に応用してきた経緯があるが、サニタリーやトイレ、バスルーム、キッチンなどでは、ぬめり、カビ、ニオイなど、除菌・脱臭が求められており、ここに、強力な酸化作用を持つオゾン水を活用することで、水まわりの除菌・脱臭・防カビに活用できると考えたという。

手のひらサイズのオゾンウォーターデバイス

パナソニックでは、電解方式と呼ぶ手法を活用することで小型化を実現。水道水から手軽にオゾン水を作ることができる「オゾンウォーター(OZONE WATER)デバイス」を開発し、家電などの小型商品にも搭載できるようにした。同デバイスは、2018年6月から出荷を開始している。

大規模施設などに用いられるガス溶解方式は、放電により空気からオゾンガスを生成。イジェクタで水に混合し溶解する仕組みだが、溶解ロスが多かったり、構成が複雑であったり、高電圧電源の安全対策が必要であったりといった課題があった。

それに対して、電解方式は水を電気分解して直接オゾン水を作る仕組みで、溶解効率が高く、構成が単純で低電圧回路で生成するため、小型化が可能という特徴を持つ。

オゾンウォーターデバイスは、陰極、イオン交換膜、陽極、給電板で構成。陽極には、オゾンを効率よく作り出すダイヤモンド電極を搭載しているという。電極に通電すると水から水素イオンが陰極側へ移動し、オゾンを生成するために3つの酸素原子が結合。オゾンがすぐに水に溶解しオゾン水となり、それによって菌を不活性化する。

またオゾンウォーターデバイスは、オゾンの溶解効率が高い独自の「斜めスリット構造」を採用。これにより、気泡はほとんど発生しないため、オゾンを効率よく水に溶かすことができるとされる。

ちなみに、デバイスは153mm×22mm×32mmという手のひらサイズを実現しており、水まわり商品に組み込みやすいという点も特徴だ。

大阪府立大学大学院での実験では、1~5分以内に、1000分の1以上に細菌や真菌が減少したという。向本教授は「菌が付着する材質の違いによる研究も行ったが、布などのしみこむものには時間がかかるものの数十秒で不活性化効果があった。ほとんどの細菌や真菌に対して不活性化効果を有しており、とくに塩素耐性菌に対しても効果が出ている。これは、このデバイスでも効果が証明された。家庭では、汚れがついたらできるだけ早く汚れのもとである菌を抑制することが重要であり、その点でオゾン水は、安全で手軽に使え、生活環境改善につなげることができる」とした。

パナソニック アプライアンス社技術本部ホームアプライアンス開発センターの本橋良所長は、「用途はまだ検討段階にあるが、このデバイスを、家庭内をはじめ、さまざまな水まわりのシーンで活用したい」とした。

全自動おそうじトイレ「アラウーノ L150シリーズ」

パナソニックでは、すでにオゾンウォーターデバイスを、水まわり商品に採用している。8月21日から受注を開始する全自動おそうじトイレ「アラウーノ L150シリーズ」がそれで、オゾンウォーターを搭載して汚れを抑えトイレ空間をさらに快適にできるという。

オゾンウォーターで生成したオゾン水をトイレを使った人が退出してから3分後に、洗浄ノズルや便器に、オゾンウォーターを約1分間散布し、便器内の汚れのもとになる菌などを抑制する。また、同製品にはパナソニック独自技術である「ナノイーX」も搭載しており、トイレの壁に染み込んだニオイまでを脱臭し、空間全体を清潔に保つことができるとする。

パナソニックは「安心、快適な生活環境をすべての人に提供したいと考えており、住空間だけでなく、自動車や電車などの移動空間、学校や病院、老人ホーム、飲食店、ホテル、オフィスなどの公共・業務空間にも活用を広げたい」としている。

パナソニックはプレミアム家電戦略をグローバルで推進しているが、快適空間の実現は、プレミアム要素として重要なものになる。そして、「憧れの家電」を目指す同社のモノづくりにおいても、快適性の追求は欠かせないものとなる。その観点からみても、今回のオゾンウォーターデバイスは、水まわりをはじめとする家電商品の付加価値のひとつになりそうだ。