ソニーグループは、2024年6月25日、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪 「国際館パミール」で、第107回定時株主総会を開催した。会場には451人の株主が参加した。

  • ソニーの株主総会から、エンタメ特化、テレビとスマホの将来、ホンダ協業の現状

    ソニーグループが株主総会を開催

新中計のテーマは「境界を超える」。その中身

議長を務めたソニーグループの十時裕樹社長 COO兼CFOは、業績や中期計画について説明。2023年度の売上高が過去最高を記録したこと、営業利益が3年連続で1兆円を突破したことを報告するとともに、同年度が第4次中期経営計画の最終年度となったことについても言及し。「ソニーの進化」に取り組んできた3年間だったとした。

  • ソニーグループの十時裕樹社長 COO兼CFO

十時社長 COO兼CFOは、「グループ構造の再編による事業間連携の促進と、事業ポートフォリオの進化に着手。成長領域であるエンタテインメント事業やイメージセンサー生産設備への積極的な投資を行ってきた」と振り返った。

また、2024年度からスタートした第5次中期経営計画のテーマに、「境界を超える~グループ全体のシナジー最大化」を掲げ、長期的な成長への取り組みを継続しつつ、変化が大きい事業環境への対応を図るために、収益基盤の強化と、投資効率や事業収益性の改善に取り組む姿勢を強調した。

  • グループ全体のシナジーを最大化

さらに、セグメント別の方針についても説明。ゲーム&ネットワークサービス分野では、PS5のハードウェアの普及拡大と、より豊かなゲーム体験の提供、自社スタジオ製作ソフトウェアのタイトル充実と、PC展開による事業拡大による2軸の取り組みで、グループの利益成長を牽引するしという。

音楽分野では、新興市場への取り組み強化や音楽カタログの収益機会の拡大などにより、引き続き市場を上回る成長を目指すほか、日本のアニメやアーティストのグローバル展開を加速する。

映画分野では、ゲーム&ネットワークサービスや音楽、映画のエンタテインメント3事業間の連携の核として、グループが持つコンテンツの価値最大化を進めるとともに、アニメファンやアニメクリエイターと深くつながり、アニメ配信サービスのCrunchyrollを成長ドライバーとして、収益性を伴った成長を目指す。

  • アニメ配信サービスのCrunchyrollは成長ドライバー

エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野においては、収益性が高く、技術による差異化が進んだカメラやヘッドフォンなどのイメージングやサウンド事業の着実な成長と、成長軸事業への展開の加速により、グループを支えるキャッシュ創出を続けていくと述べた。

イメージング&センシング・ソリューション分野では、モバイルセンサーを中心に高い事業成長率を維持しながら、とくに収益性の向上に注力し、投資効率の改善、開発・製造の再強化などに取り組むとしている。

一方、2024年5月に発表した長期ビジョンでは、感動に直結するコンテンツ、感動を生みだす製品やサービス、クリエイションを支えるCMOSイメージセンサーにおいて、軸足をクリエイション側にシフト。10年先にあるソニーのありたい姿を描いた「Creative Entertainment Vision」を打ち出したことをアピールした。

  • クリエイションシフトを打ち出した

さらに、境界を超えてIPを拡張する「IP360」により、ファンとのながりを強め、IPの価値を最大化する取り組みを追求するという。

ソニーらしい世界に誇れるような製品、新たに生み出せるか

株主からは、各事業に対する幅広い質問が行われた。

ゲーム事業については、プラットフォーム型事業から、ネットワークサービス型事業にシフトしていることを示しながら、「PS4からPS5にスムーズにスイッチしてもらうようにしている。月間アクティブユーザーを継続できるため、安定したビジネスができている。それに加えて新たな収益に期待しているのがファーストパーティソフトウェアであり、PS5のプラットフォームでの展開を進め、ライブサービスではPC展開も進めていくことも重要な戦略になる。ユーザー層を増やしていくことになる」と語った。

  • 安定したビジネスができているというプレイステーション

また、テレビやスマホについては、ソニーの槙公雄社長兼CEOが回答。「収益を重視した事業運営を行い、世界経済の減速などの変化に対して、迅速に、柔軟に対応できるように備えている」と語った。

イメージング&センシング事業については、ソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長兼CEOが回答。「スマホ向けビジネスが牽引している事業である。ここにきて、スマホ市場全体が底を打った感じがあり、ゆっくりと回復するだろう。スマホの付加価値化では、カメラに期待があり、ソニーセミコンダクタソリューションズでは、カメラの性能をあげるために、センサーの大判化を進めている。これまでの大判化は、メインの広角カメラが中心であったが、サブカメラをいわれる超広角や望遠カメラでも大判化を進めている。長期的に成長する市場であるとみている」と述べた。

ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」については、開発が順調に進んでいることを強調。2025年に先行受注し、北米を中心に2026年前半にデリバリーをする予定であること、日本では2026年後半にデリバリーする計画であることを示しながら、「最初の取り組みであるため、多くの数は想定していない。早期の収益化というよりも、長期戦で取り組む。技術の進化や、世の中の変化を捉えながら、進化したADASの採用や、車内をひとつのエンタテインメント空間の提案も進める。継続していくことが大事であると考えている」(十時社長 COO兼CFO)との姿勢を示した。

  • ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」

AIへの取り組みについては、ソニーの北野宏明副社長 CTOが回答。「ソニーグループは、クリエイターのための技術を開発し、クリエイターとともに未来を創る。AIの研究開発もその一環であり、エンタテインメント領域に特化していくことになる」とし、その一例として、AIレーサーであるGran Turismo Sophyを紹介。「人間のトップゲーマーを凌駕するAIを開発し、楽しく、リアルなゲーム体験をしてもらうことができる。ゲームの世界にAIが活用されている先進的な事例であり、このAIは、Gran Turismo 7にも正式に搭載している。また、エキサイティングなゲームを開発するための新たなツールになると考えている。クリエイターが創造性を発揮するためのAI開発が重要であり、今後は、ソニーグループの多岐に渡る事業や組織で、AIの研究開発を進めていきたい」と述べた。

一部報道にある米パラマウント・グローバルの買収については、「特定の会社のM&Aについてコメントするのは難しい」と前置きしながら、「クリエイティブにシフトしているソニーグループとしては、優れたIPを保有しているだけでなく、良い作品を生み出せる人や技術に注目している。規模が大きなM&Aをするよりは、目的にかなった良質な資産があれば追求していきたい」(十時社長 COO兼CFO)と語った。

株主からの「さすがソニーを思える製品が少なくなっている。世界に誇れるような製品を作って欲しい」との要望に対しては、十時社長 COO兼CFOが回答。「ソニーグループは、テクノロジーとエンタテインメントの会社として、感動を届けることに注力している。そうした製品を出したい。aiboは多くのお客様に使っていただいているが、低価格で購入するようにするのは難しく、高額になりがちである。将来はより多くの人に楽しんでもらえる環境づくりと商品開発を進めたい」と語った。

  • 25年前の初代のデザインで限定復刻した「25周年記念aibo」

会場入口では、株主総会の看板を前に、自ら持ってきたaiboと記念撮影をする株主の姿も見られていた。