中国オッポの日本法人であるオウガ・ジャパンは2024年11月29日に、スマートフォンやタブレットの新機種を発表。なかでも、3年ぶりにハイエンドモデル「OPPO Find X8」を投入したことが注目されましたが、実質的に携帯大手からの販売がないなど、3年前とは事情が違う様子です。ハイエンドモデル受難で携帯大手の扱いが減少している今、あえて再びハイエンドモデルを投入するのはなぜでしょうか?
約3年ぶりにオッポがハイエンドスマホを投入
2018年に日本市場に参入した中国のオッポは、ミドルクラスの「Reno A」シリーズで人気を獲得し、日本市場に向け継続的に新機種を投入しています。ですが、ここ数年来投入されているのはReno Aシリーズとローエンドの「A」シリーズに限られていました。
かつて同社は、ハイエンドモデル「Find X」シリーズも日本市場に積極投入しており、2020年発売の「OPPO Find X2 Pro」と2021年発売の「OPPO Find X3 Pro」は携帯大手の一角を占めるKDDIの「au」ブランドからも販売されていました。ですが2022年以降、同社は日本市場へのハイエンドモデル投入を見送っていました。
しかしながら、2023年9月28日の新製品発表会で、日本法人のオウガ・ジャパン専務取締役である河野謙三氏は、再びハイエンドモデルを投入する計画があることに言及。それゆえ、オッポのハイエンドモデル復活には期待が集まっていました。
そして迎えた2024年11月29日、オウガ・ジャパンは新製品発表会を実施し、オッポのスマートフォン・タブレット3製品の日本市場投入を発表したのですが、そこで河野氏は「OPPO Find X8」の投入を発表。およそ3年ぶりに、日本市場へのハイエンドモデル投入がなされることが明らかになりました。
OPPO Find X8について簡単に振り返っておきますと、スウェーデンのカメラメーカーであるハッセルブラッドと共同開発した高性能の3眼カメラを搭載しているのが大きな特徴。とりわけ、望遠カメラはW型プリズムを採用することで、本体の薄さと光学3倍相当の望遠撮影を両立しています。
チップセットには、台湾メディアテック製のハイエンド向けとなる「Dimensity 9400」を採用し、昨今注目を集めるAIを活用した機能も強化。5630mAhの大容量バッテリーを搭載し、IP68およびIP69の防水・防塵性能を備えるなど、ハイエンドモデルらしい強化がなされています。それでいて価格は139,800円と、ハイエンドモデルとしては比較的価格が抑えられました。
「ローカライズせず早期投入」はメーカーの生き残り策
ただ一方で、OPPO Find X8の販路を確認すると、MVNOの「IIJmio」と家電量販店やECサイト、そしてKDDIの「au +1 collection」がオンラインで取り扱うようです。ですが、au +1 collectionが扱うのは基本的にスマートフォンのアクセサリーや周辺機器などで、そこで販売されるスマートフォンはいわゆる“SIMフリー”と変わらない扱いとなります。
それゆえOPPO Find X8は、OPPO Find X2 ProやOPPO Find X3 Proの時とは違って、実質的に携帯大手が扱わないSIMフリーモデルのみの販売となるわけです。それはすなわち、携帯大手のショップなどの販売網を活用できないことから、必然的に販売数が大幅に減ることも意味しています。
そもそも、オッポが3年にわたってFind Xシリーズの新機種を投入しなかったのは、携帯大手に採用されなくなったためと見られています。実際、Find Xシリーズが投入されなくなった2022年以降は、急速に進んだ円安と政府のスマートフォン値引き規制強化によって、スマートフォンの価格が大幅に高騰し、ハイエンドモデルが売れなくなった時期と重なります。携帯大手の側がハイエンドモデルの調達を減らした結果、Find Xシリーズの採用がなされなくなったと考えられます。
そして現在も、ハイエンドモデルを取り巻く環境が厳しいことに変わりはなく、携帯大手も販売を増やしにくい状況にあるのですが、それにもかかわらずなぜ、オッポはあえて販売数が少ないオープン市場でFind Xシリーズの投入に踏み切ったのでしょうか。河野氏は「我々はむしろ、現時点では逆だと思っている」と答えています。
携帯大手から販売するとなると、例えばFeliCaの搭載や、日本でしか使われていない周波数帯に対応するなど、さまざまなローカライズが必要になり時間がかかることから、メーカー側が端末を投入したいと思ったタイミングで投入できないといいます。それゆえ、オッポの方向性をいち早く打ち出す製品を、メーカー側の判断で適切な時期に投入するべく、あえてしがらみのないSIMフリーモデルとして販売したとのこと。実際、OPPO Find X8はグローバル展開を発表した1週間後という素早いタイミングで日本投入が打ち出されています。
実は、あえてオープン市場向けに特化し、最新モデルをいち早く投入するという動きは、2024年に入って急加速しています。実際、中国シャオミのハイエンドモデル「Xiaomi 14 Ultra」や英Nothing Technologyの「CMF Phone 1」などは、オープン市場向けとして海外での発表から早期に国内投入がなされた一方、日本向けのカスタマイズがほぼされていない状態で販売されています。とりわけ、CMF Phone 1はFeliCaどころか、NTTドコモやKDDIのプラチナバンドである800MHz帯にさえ対応していません。
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背面のカバーを取り替えて着せ替えできるなど、デザインに注力したNothing Technologyの「CMF Phone 1」。早期投入に注力したためか、国内向けのカスタマイズはなされておらず、NTTドコモやKDDIのプラチナバンドである800MHz帯にすら非対応となっている
なぜそのような動きが拡大しているのかといえば、国内のスマートフォン市場環境が非常に厳しく、携帯大手からの販売拡大がこれ以上見込みにくくなっている現状、市場で生き残るには自社独自の販路開拓が重要になりつつある、とメーカー側が判断しているためでしょう。とりわけ、ハイエンドモデルは高額ゆえ販売数が見込みにくい一方、そのメーカーが好きで熱心なファンからのニーズが非常に大きいので、ファンの忠誠心を高め確実な購買につなげるためにも、早期に投入することが重要になっているといえます。
こうした動きは、従来携帯大手から販売される端末ラインアップに不満を抱いていた、スマートフォンやガジェットが好きな人たちからは大いに歓迎されるものです。ただ一方で、その流れがあまりに強まってしまうと、FeliCaや5Gのバンドn79の非搭載など、メーカー側が国内向けのローカライズを軽視する動きにもつながりかねないことが危惧されるところでもあります。