2026年も新年度を迎え、携帯電話業界にもいくつか大きな変化が起きることとなる。3Gサービスの完全終了や「JAPANローミング」の開始、携帯電話不正利用防止法の改正など、新年度に起きる携帯電話業界のさまざまな変化を改めて確認してみよう。
「3G」終了で「5G SA」が加速か
2026年もいよいよ新年度が始まり、入学や就職などで新しい生活をスタートした人も多いかと思う。実際、4月1日には多くの企業で入社式が実施され、多くの人が新社会人としてのスタートを切ったようだ。
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2026年の新年度を迎える4月1日には大手企業の入社式が実施されており、NTTドコモは同日にMUFGスタジアム(国立競技場)でグループの合同入社式を実施。新入社員によるギネス世界記録のチャレンジをするなどして、社員同士の結束を強めていた
そして毎年、新年度に入り話題となるのが、企業が提供する製品やサービスの開始や終了、改変などである。それは携帯電話業界も同様で、やはり新年度に入り新しく始まるものや、前年度末までに終了し、姿を消したものもいくつかある。
とりわけ2026年は大きな変化が多いことから、代表的なものをいくつか取り上げてみたいと思うが、最も注目されたのはやはり国内から「3G」が姿を消したことだろう。
より新しい4G、5Gが主流の現在にあって、3Gは既に古く効率の悪い通信規格であることから、3Gによるサービスを提供してきた携帯各社は相次いでサービスを終了。2022年にKDDI、2024年にソフトバンクがサービス終了しており、残るNTTドコモも2026年3月末をもって、3Gによる通信サービス「FOMA」を終了したのである。
3Gの終了に関する動向は、既に多くのメディアで既に多く取り上げられているので割愛するが、今後重要なのはむしろ3Gが終了した後、モバイル通信が今後どう変化するかということ。その変化の1つとなるのは、衛星・スマートフォンの直接通信サービスの拡大だ。
この分野では既に、「au Starlink Direct」を提供するKDDIが優位性を持つが、NTTドコモも2026年4月27日から、同種のサービス「docomo Starlink Direct」を開始すると発表している。そして同社はdocomo Starlink Directのため、これまで3Gで使用していた2GHz帯の一部を活用すると見る向きが以前から多い。
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NTTドコモは2026年4月2日に、衛星・スマートフォンの直接通信サービス「docomo Starlink Direct」の提供開始を発表。ちなみに同日には、ソフトバンクも同種のサービス提供を発表している
無論、執筆時点でNTTドコモから、docomo Starlink Directに使用する周波数帯は明らかにされていないのだが、3Gの終了で空きが出たのに加え、au Starlink Directも2GHz帯の一部を使ってサービス提供しており法制面でのハードルが低いことから、その可能性は非常に高い。それだけにdocomo Starlink Directの提供は、3Gの終了がモバイル通信の高度化に貢献した事象の1つと見ることができそうだ。
そしてもう1つは、最新の通信規格「「5G」の高度化が一層進むことであり、実際携帯各社は、2025年頃より5Gの本領を発揮できる「5G SA」への移行を積極化しつつある。移行に出遅れているNTTドコモも、3Gの終了を機として5G SAへの本格移行を図るものと考えられ、より5Gのポテンシャルを発揮できるサービスの開拓につながることが期待される所だ。
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5Gの実力をフルに発揮できる「5G SA」への移行が進む2026年は、5G SAを活用したサービスも拡大すると見られており、既にNTTドコモ傘下のNTTドコモビジネスが、5G SAの機能を活用した法人向けサービス「5Gスライシング」の提供を打ち出している
終了するものがある一方で、2026年4月から新たに始まるサービスもあり、その代表格となるのが「JAPANローミング」だ。これは大規模な自然災害が発生したり、大規模通信障害が起きたりして特定の携帯電話会社のネットワークが使えなくなった時、他社のネットワークに接続して通信を維持する仕組みである。
JAPANローミングには、発生した障害の程度によって2つの方式が提供される。1つは「フルローミング方式」で、あらかじめネットワークを自動で選択するよう設定しておくと、自動的に他社回線にローミングして音声通話やデータ通信が利用できるものだ。
そしてもう1つは「緊急通報のみ方式」で、こちらはコアネットワークなどに障害が起き、自動でローミングができない時に用いられるもの。文字通り緊急通報のみ利用できるもので、利用する際には手動で他社回線に切り替える必要がある。
そもそもJAPANローミングは、KDDIが2022年に、約3日間にわたる大規模通信障害を引き起こし、同社の回線契約者がモバイル通信を利用できない状況が長く続いたことを機として、政府主導により実現に向けた取り組みが進められていたものだ。実現に当たってはさまざまな障壁があっただけに、実現に4年もの時間がかかったが、この実現により、災害や通信障害などで契約しているネットワークが使えなくなった時も、いくつか制約があるとはいえ通話や通信を維持できる安心感は大きいだろう。
オンライン契約時の本人確認も大きく変更
もう1つ、4月1日に大きく変わるのが「携帯電話不正利用防止法」の改正だ。これは携帯電話の不正利用を防ぐため、契約時の本人確認などに関するルールを定めた法律なのだが、今回大きく変わるのは非対面、主としてオンラインで回線契約する時のルールである。
携帯各社やMVNOで音声通話付きの回線契約をする際は、オンラインであっても本人確認が必要で、そのためにマイナンバーカードや運転免許証などの写真を撮影して送った人も多いと思う。だが今回の法改正により、本人確認書類の写真と顔写真など、従来認められていた写真を送るだけで本人確認する方法が廃止されたのである。
そして今後は、本人の顔写真などに加え、マイナンバーカードなどのICチップを読み取って本人確認することが原則必須となる。なぜこのような変更が加えられたのかというと、写真による本人確認は確実性が低く、不正の余地が大きいためだ。
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総務省「不適正利用対策に関するワーキンググループ」第6回会合資料より。非対面での本人確認をより厳格化するべく、携帯電話不正利用防止法の改正により写真のみでの本人確認は廃止、オンラインではICチップの読み取りが実質的に必須となったのである
最近では本人確認書類の偽造に関する技術も向上しており、以前にも偽造したマイナンバーカードで携帯電話回線を契約し、犯罪などに用いられ問題となるケースがあった。だがICチップは偽造が非常に難しく、写真より確実に本人確認ができるのに加え、マイナンバーカードの普及率も2026年2月末時点で81.7%に上るなど、普及が進んできたことから、より確実な本人確認の手段としてICチップによる確認を原則化するに至ったようだ。
ただ携帯電話不正利用防止法は、今後さらなる改正がなされる可能性が出てきており、それは「データSIM」とも呼ばれるデータ通信専用の回線契約の本人確認義務化である。これまで本人確認が必要とされたのは音声通話が可能なサービスのみで、データ通信専用のサービスは対象外だった。
だが最近ではSNSやメッセンジャーアプリなどを用いた詐欺行為が増え、それらに本人確認不要で契約できるデータSIMが用いられるケースが増えている。そうしたことから本人確認の義務化を求める声が増え、法制化に向けた動きが進められている訳だ。
実際各種報道では、データSIMの本人確認を義務化するよう、携帯電話不正利用防止法を改正する案が国会に提出されたようで、近いうちに再び携帯電話不正利用防止法が改正され、データSIMを契約する際にも本人確認が求められるようになる可能性が高い。ただ本人確認の厳格化で、データSIMのサービス自由度が下がる可能性があることには注意が必要だろう。
ここまで触れてきたように、2026年の新年度には携帯電話に関する多くのことが変化することとなる。ユーザー目線でいえば地味ではあるが、大きな影響を受ける人も多い変化となるだけに、新年度に合わせて常識をアップデートしていく必要があることを覚えておいて欲しい。



