米グーグルが「Pixel 10a」、米アップルが「iPhone 17e」と、低価格モデルの新機種を相次いで発表しているが、その内容を見ると低価格化に苦心している様子も見えてくる。そこまでしてプラットフォーマーが低価格のハードウェアに力を入れるのはなぜだろうか。
「Pixel 10a」「iPhone 17e」が相次いで発表
年明けからスマートフォンの新製品ラッシュが続いている2026年だが、2月から3月にかけて主要メーカー2社の低価格モデルが相次いで発表されている。その1つが、グーグルが日本時間の2026年2月19日に発表した「Pixel 10a」だ。
Pixel 10aは、出っ張りのないカメラなど前機種「Pixel 9a」のコンセプトを踏襲した、低価格モデルの新機種。ディスプレイのガラスに米コーニングの「Corning Gorilla Glass 7i」を採用し耐久性を高めたほか、充電速度を向上させるなど、よりブラッシュアップを図っている。
ただ一方で、発表直後から多くの指摘がなされているのが、Pixel 9aと性能面で大きな違いがないこと。とりわけそのことを象徴しているのがチップセットだろう。
これまでPixelシリーズの低価格モデルは、現行のハイエンドモデルと同じチップセットを搭載することが多く、それがコストパフォーマンスの高さにつながり人気を集めてきた。だがPixel 10aは、チップセットに現行のハイエンドモデル「Pixel 10」シリーズで採用している「Tensor G5」ではなく、「Tensor G4」のカスタムビルド版を搭載するとしている。
このTensor G4はカスタムビルド版ということもあって、AI関連の性能が強化されているようで、Pixel 10aは「カメラコーチ」など、従来の低価格モデルでは対応していないAI関連機能にも対応している。ただベースの性能はTensor G4を搭載しているPixel 9aと大きく変わらないと見られるだけに、コストパフォーマンスの低下を懸念する声は少なくないようだ。
そしてもう1つが、米アップルが日本時間の3月2日に発表した「iPhone 17e」である。こちらもその名前通り、前年に発売された低価格モデル「iPhone 16e」の後継モデルとなり、カメラは1つで機能はシンプルに抑えられている一方、本体ガラスの強化や「MagSafe」への対応など、さまざまな部分での改善が図られている。
そしてiPhone 17eは、Pixel 10aとは異なり、上位モデルが搭載する最新チップセットの「A19」を採用しているほか、ストレージも最小構成で256GBからと、前機種の128GBからと比べれば倍に増量されている。それでいて日本での販売価格は9万9800円からと、iPhone 16eの発売当初と変わらない価格を実現していることには驚きがあった。
ただ厳密に言えば、iPhone 17eが採用するA19はGPUの性能がやや落とされているし、低価格モデルとはいえ日本では依然、10万円近い高額であることに変わりはない。ただそれでも、メモリやストレージが高騰している中にあって、コストパフォーマンスを高めてきた点を評価する声は多いようだ。
執筆時点でPixel 10aの日本発売は公表されているが、発売日や価格は公表されていないので、国内での価格比較や評価は控える。だが低価格モデルを継続投入してきたグーグルだけでなく、高価格帯・高付加価値に強いこだわりを見せてきたアップルまでもが、低価格モデルを2年連続で投入してきたことには、やはり驚きがある。
しかもアップルは、現行の上位モデル「iPhone 17」シリーズの販売が世界的に好調で、業績を大きく伸ばしている状況にある。それだけに、一層低価格モデルに力を入れるのには疑問も湧く所だ。
「MacBook Neo」から見える低価格モデルの重要性
その理由はある意味で、iPhone 17eと同時期に発表されたノートパソコン「MacBook Neo」にあるといえよう。アップルは日本時間の2026年3月4日にMacBook Neoを発表したのだが、前日の2026年3月3日に発表された「MacBook Air」「MacBook Pro」と比べると、その中身に決定的な違いがあった。
アップルはMacのプロセッサを、iPhoneやiPadと同じARMベースの「Appleシリコン」に移行して以降、MacにはiPhone向けの「A」シリーズより高い性能を持つ「M」シリーズのみを搭載し、高いパフォーマンスの実現に力を入れてきた。実際、新しいMacBook Airには「M5」、MacBook Proには「M5 Max」が搭載されている。
だがMacBook Neoは、プロセッサに「iPhone 16 Pro」で採用していた「A18 Pro」を搭載しているのだ。その分Mシリーズを搭載したMacBookシリーズよりパフォーマンスは落ちるが、価格は非常に安い。実際、新しいMacBook Neoの日本での販売価格は9万9800円と、MacBookとしてみれば非常に安いだけでなく、iPhone 17eと変わらない価格を実現していることに驚かされた人も多いだろう。
アップルがなぜiPhone 17eに加えMacBook Neoと、立て続けに安価なモデルを投入する必要があったのかといえば、ある程度の低価格を求める顧客も取り込まなければ今後の成長が見込めなくなるためではないかと筆者は見る。アップルはハードだけでなく、OSや「App Store」などのサービスも自社で提供してエコシステム全体で収益を上げるビジネスモデルを構築しているが、その入り口となるのはやはりハードであるiPhoneやMacだ。
だがアップルが得意とする高価格・高付加価値路線のハードで取り込める顧客には限界があるし、何より昨今世界的に進んでいるインフレの影響によって、従来購入できた価格帯のハードを購入できない人も確実に増えている。とりわけアップルの支持が強いとされる若い世代は、収入が少ない人が多くその傾向が顕著に出やすいことから、顧客の維持拡大のためにも低価格のハードが必要になっているのだろう。
そしてグーグルも、やはりOSやアプリストア、そして最近ではAIの「Gemini」などによるエコシステムを構築している。それだけに、エコシステムの利用の間口を広める上では低価格のスマートフォンが不可欠なことから、さまざまな工夫をしてでも低価格モデルを維持しているのではないかと考えられる。
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Pixel 10aは「Tensor G4」を採用し低価格を維持しながら、カスタムビルドを加えることで「Gemini」などAI関連機能は強化がなされており、Geminiの利用による売上拡大を見込んでいることが分かる(出所:グーグル)
ただメモリやストレージの高騰の影響は今後より本格化すると見られているし、日本ではさらに、円安による価格高騰という大きな課題も抱えている。販売拡大にはさらなる低価格を求める声に応える必要があるだろうが、満足度やブランドを維持するには低価格化に限界もあるだけに、両社の悩みが尽きないことも、また確かだといえる。


