通信各社の2025年10~12月期の決算が発表されたが、業績面でいえばNTTドコモを有するNTTグループが業績の下方修正をするなど、非常に厳しい内容となっている。ただ業績好調な競合他社もそれぞれに課題を抱えており、順風万端とは言えないようだ。
競争力回復のため大幅投資が求められたNTTドコモ
2025年2月初頭、通信4社グループの決算が相次いで発表されたのだが、業績面でいえばNTTの独り負けというのが正直な所だ。実際、NTTは2025年度の通期業績予想の引き下げを発表しており、営業利益に関しては当初予想よりおよそ1100億円もの減益になるとしている。
その主因はNTTドコモの業績悪化で、営業利益でいえばNTTドコモだけで、当初予想よりおよそ830億円の減益となっている。そこまでNTTドコモの業績が悪化した要因は大きく2つあり、1つは携帯電話市場競争が激化している影響だ。
KDDIやソフトバンクは前四半期の決算で、新規顧客の獲得にコストをかけても、キャッシュバックなどを目当てに携帯電話会社を短期間で乗り換え続ける「ホッピング」目当ての人だけが利する状況を顧みて、新規顧客から既存顧客重視へと戦略を転換する姿勢を示していた。だがNTTドコモの代表取締役社長である前田義晃氏は、番号ポータビリティによる転出が昨年の1.2倍に上ることから「競争が落ち着いているという認識はない」と話す。
そうしたことから販売促進強化のための投資が当初予定より増えているようで、それが業績悪化へと影響しているようだ。確かにここ最近の動向を見ていても、同社がこれまであまりアピールしてこなかった小容量・低価格の料金プラン「ドコモ mini」のプロモーションを強めるなど、新規獲得につながりやすいサービスのアピールに力を入れている様子を見て取ることができる。
もう1つ、業績悪化の要因となっているのが通信品質対策だ。NTTドコモは大都市部で通信品質を著しく悪化させた2023年以降、さまざまな対処をしているものの、利用者からは未だ通信品質に対して厳しい声が多く寄せられている状況にあり信頼回復には至っていない。
それだけに同社は、大容量通信に強い5Gの基地局設置を大幅に拡大する方針を打ち出しており、2025年度下半期には、上半期の3倍ペースで5G基地局を設置していくとのこと。そのペースを2026年度も継続していく方針を打ち出しているのだが、それだけ基地局を急ピッチで増やせば設備投資にかかるコストも大幅に増えるだけに、業績悪化へとつながる要因となったことは間違いない。
好調に見えてそれぞれの課題を抱える競合3社
NTTドコモの苦戦でNTTグループの業績が悪化した一方、競合の業績は好調な様子で、ソフトバンクはNTTとは逆に業績好調で通期予想の上方修正を発表している。また、楽天モバイルの先行投資で赤字が続く楽天グループも、依然赤字ではあるものの楽天モバイルが1000万契約を突破し、利息や減価償却費などを考慮しないEBITDAベースでは通期での黒字化を実現するなど、長いトンネルを抜け光明が見えつつある。
とはいえ各社の発表内容を見ると、やはり厳しさもある様子だ。ソフトバンクはコンシューマ向け通信事業が好調ながら、スマートフォンの純増数はおよそ10万件の純減となっている。
これは先にも触れたように、同社が新規契約重視の方針を転換し、既存顧客により長く、多くのサービスを利用してもらうことで売上を伸ばす戦略へと転換しているため。ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏は、「純増にはこだわらないと営業幹部に話している。これは強い意志なので、変わらない」と、大幅な戦略転換に強い覚悟を見せていた。
ただソフトバンクは、携帯大手3社の中では最も新規顧客の獲得に重きを置いており、かつてはなりふり構わぬ新規顧客獲得の姿勢が賛否を呼んだこともあった。宮川氏は「来季は(純増数が)プラスマイナスゼロでもいいんじゃないか。一度膿を出し切ってしまおうと思う」と話していたが、大幅な戦略転換が今後の業績に影響を与える可能性も十分あるだろう。
また楽天グループに関して言うならば、楽天モバイルの契約数が急速に伸びたことで、NTTドコモと同様に通信品質の問題を指摘する声が増えている。それだけに同社も、2026年は都市部を中心とした通信品質の改善に力を入れる方針を示している。
そのために楽天モバイルは2026年度、2000億円強の設備投資を計画しているとのこと。だが楽天モバイルが依然赤字であることに変わりはなく、それに加えて2026年は9月末にKDDIとのローミング契約が切れ、インフラ戦略の大きな転換を迎えることにもなる。そうした状況で通信品質改善に多額のコストをかけることは、楽天モバイルの黒字化を遠のかせ楽天グループの業績をより厳しくする可能性があるだろう。
そしてもう1社、ここ最近通信品質で高い評価を受け、業績面でも好調だったKDDIなのだが、実は2025年10~12月期の決算を出すことができずにいる。その理由は2026年1月に、子会社であるビッグローブと、同社の子会社であるジー・プランによる広告事業で巨額の架空取引の疑いが生じたためだ。
それゆえ、当初は決算説明会として実施される予定だった2026年2月6日の説明会は、急遽業績説明会に変更。代表取締役社長の松田浩路氏も、架空取引の経緯とその影響に関する説明に終始している状況だった。事業の好調の裏でコンプライアンス面での隙が生じ、大規模な不正が生じてしまったことは、同社にとって大きな痛手となったことは間違いない。
現状、純粋な事業面でいえばNTTグループが最も厳しい状況であることに間違いはないが、各社ともにさまざまな課題を抱えており先を見通すのが難しい状況にあることもまた確かだ。それゆえ2026年の通信業界は非常に混とんとした状況が続くといえ、その勝ち負けにも大きな変化が出てくるかもしれない。





