佐々木 堀さんのブログの次の一節が大変興味深かったのですが、結論がもう一つよくわからなかったので、詳しく伺いたいのですが。

これは自分でもよく遭遇しているのですが、「この問題について調査する」というタスクを作ったとしてもそれが、5分で解決することもあれば1週間以上かかる大問題に発展することもあって、アクションだったはずのものがプロジェクトになったりということは日常的です。Llifehacking..jpより

これはGTD(Getting Things Done)の話題ですね。GTDは頭の中にあることをすべて書き出してしまうことによって「今」「ここで」対応すべきものを整理しやすくする仕事術なのですが、この記事ではSEの人がバグを修正する時のように、「いつ終わるか見通しが立たない」タスクをどうすればGTDでやりやすくできるのか?という話題に触れていたんですよね。

佐々木 このSEの人が言っているのは、「本当のところどのくらい時間がかかるのか」「タスクがどのくらい大変なのか」「見立ての幅があまりに大きなタスクは怖くて手がつけられなくなるのだけど、GTDでその処理をどうサポートしてくれるのか教えてほしい」、ということだったのだと思います。

まず押さえたいのは、「タスクにかかる時間は、GTDだろうとどんな仕事術だろうとあらかじめ100%把握することはできない」という点です。実はそれに加えて、GTDは本質的に「いま何をやるか」というアテンションを管理する仕事術ではあっても、「どのくらいでできるか」を管理する時間管理術ではないという点です。意外かもしれませんが。

佐々木 意外でした(笑)。それでは、予測時間の幅が読み切れない、やや恐ろしげなタスクに取り組む場合、GTD的にはどうしたらいいのでしょう?

GTDが注目するのはアクションという単位で、これは「今このプロジェクトを前に進めるために実行できるアクションは何か」といった行動を指します。このアクションは、5分にも1週間にも変貌しうるのですが、とにもかくにもプロジェクトを前に進めるために必要なものです。したがって、週次レビューの対象になっているかぎり、実行しているので悪いことは何もない、とDavidは言いたいのだと思います。

佐々木 でもそうすると、いろいろとやっているうちに、プロジェクトの締め切りに間に合わなくなってしまう、ということになりませんか?

1つのバグに足をとられていたら、そうなりますね(笑)。だから週次レビューが必要になるわけです。GTDでは5分で終わるつもりだったバグ修正が、「実は1週間の大仕事だった!」という時に、魔法の力で作業時間を5分にはできませんが、もっとたくさんのタスクとのバランスの中で「これはプロジェクトを最も進行させる」「これは後に回してもよい」という自分のアテンションをどこに集中させるかという価値判断を可能にしてくれるのです。もちろん、あまりに仕事が多い場合にどれだけカットバックすべきかというイメージもつけやすくなるでしょう。

「今」「ここで」自分のアテンションを割り振るべきタスクが常にわかれば、最大の効率化を実現できるはず。これがGTDの考え方

佐々木 週次レビューがそれほど大事なのですか?

週次レビューが「頭をもう1度空にする」という作業だけだと思っている方も多いですが、もう1つの大きな役割はプロジェクトレベルで実行可能なアクション、手元のレベルで実行可能なアクションというように、全体のバランスを見直す作業です。GTDはこのように常にアテンションをバランスさせて管理する仕事術なんです。この辺り、常に時間を管理するタスクシュートとはいい対比ですね。

佐々木 そうですね。私は今、タスクシュートではなくToodledoを使っているのですが、タスクシュート方式では時間を大きなリソースと見立て、タスクのバランスをにらみつつ時間を割り振っていく方法だと思っています。例えば、1週間くらいはかけるプロジェクトであれば、そのプロジェクトのタスク全体で「占めていい時間」は最大でも8時間くらい。そのような割り振りルールさえ守っていれば、順番を前後させつつも締め切りに間に合わせるようにすることが可能です。

時間かアテンション(集中力・体力)の切れ目が仕事との別れ(笑)ではつまらないですから、両方に余裕を持たせるために、こうした仕事術をうまく利用したいですね。

手近の小さなタスクと遠くにある重要なタスクのバランスをとるのもGTDの週次レビューの大事な目的

編集後記(堀 正岳)

毎日やってくる多数のメールや仕事に対応しつつも、中長期的に見たプロジェクトが締め切りに間に合わないほどに遅れてしまうのを避けるには、日々のレビューが欠かせません。

しかし、漠然と「頭の中にあることをすべて書き出す」と考えていても、重要なタスクとそうでないタスクを寄り分けてバランスをとるのは難しい作業です。そこで、GTDのレビューを行う場合に実行できるDavid Allenさん公認のハックとして、「今、何が気になっている?(What has my attention?)」と自分に問いかけ続けるという方法があります。

「今、何が気になっているのだろう?」と自分に問いかけた場合、「仕事のプロジェクトが進行しているか気になる」「人に頼んでいた作業が仕上がっているか気になる」といった手近なことから始まりますが、何度もこの質問を繰り返しているうちに「自分のキャリアの方向性が正しいか気になる」「老後の計画が気になる」といった、異なるステージの質問も、このハックから引き出すことができます。

あとは、「気になること」を解決に向かわせるアクションを探し出して時間を割り当てること、これがGTDの極意なのです。

佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト

「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。

ブログ「ライフハックス心理学」を主催

堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者

1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」(日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2(技術評論社、共著)がある。ブログ「Lifehacking.jp」を主催