空気清浄機を選ぶ際、ランニングコストがどのくらいかを気にする人は多いだろう。例として、シャープが販売している適用床面積14畳の空気清浄機「KC-D50」は、強運転での消費電力が54W、中運転での消費電力が13W、静音運転での消費電力が50Hz地域で3.3W、60Hz地域で2.8Wとなっている。
強運転で連続動作させても1時間あたりの電気代は約1.19円で、中運転では約0.29円、静音運転ならば0.07~0.06円だ。強運転は、帰宅時など急速に空気をクリーンにしたいときに使用するモードなので、自動運転を行った際の電気代は、中運転の0.29円に近いものとなるだろう。24時間連続動作で1月使用した場合の電気代は200円強といったところだろう。
しかし、空気清浄機のランニングコストは、電気代だけではない。電気代と同程度、使用状況によってはそれ以上にコストが掛かるのが、フィルターの交換費用だ。
ランニングコストは電気代だけではない
空気清浄機でよく使用されているHEPAフィルターの規格は、0.3μmの粒子を99.97%捕集するというもので、ULPAフィルターの規格は、0.15μmの粒子を99.9995%以上捕集するというものだ。
フィルターの性能が同じなら、風力が大きいほうが集塵能力は高くなる。また、使用している部屋の広さ、フィルターの性能が同じなら、風量が大きいほうがより短時間で部屋の空気をクリーンにすることができる。
目の細かさに加えてもうひとつ、フィルターの性能で重要なのが、寿命だ。これが、空気清浄機のランニングコストに大きな影響を与える。
前回記したように、空気清浄機の集塵能力は、タバコの煙を使用して測定されている。家庭内ではさまざまな種類の粉塵が発生するが、日本電機工業会では、タバコ5本が発生させる粒子を家庭内で1日に発生する粉塵の量として規定している。
タバコを5本ずつ燃焼させて、除去率が当初の1/2になった時点で終了。そこまでの総本数/5がフィルターの耐久日数だ。フィルターの寿命が2年と記載されていたら、タバコ3,650本で、当初の除去率の半分になるということだ。
なお、この値は、通常の家庭内で発生する粉塵の量をタバコの煙で代替しているわけで、室内でタバコを吸う人がいた場合、示されている値よりも寿命はその分少なくなる。
たいていの空気清浄機のフィルターは、サイズを大きくするために、平らなシート状ではなく、じゃばらのように折りたたまれた状態になっている。大きければ大きいほど、より多くの粉塵を捕集することができる。
大型の、つまり適用床面積の広い空気清浄機ではフィルター寿命が10年といった製品が多いのに対して、小型のパーソナル向け空気清浄機では、フィルター寿命が2年といった製品が多いのはこのためだ。
大型のモデルがフィルターを1回交換する期間で、小型のモデルでは5回のフィルター交換が必要になる。ここで注意したいのが、交換用のフィルターの価格はフィルターの寿命には比例していないという点だ。
パナソニックの製品を例にすると、交換の目安が10年となっている「F-VXJ90」の集塵フィルターが7,000円で、脱臭フィルターが4,500円。約5年となっている「F-VXJ35」の集塵フィルターが4,000円で、脱臭フィルターが2,500円、約2年となっている「F-PDJ30」のフィルターセットが4,200円だ(いずれも税別)。
日立アプライアンスの場合も、交換の目安が約10年のEP-JV1000やEP-JV600用の集塵フィルターが5,000円で、脱臭フィルターが6,500円、約2年のEP-JZ30の一体型フィルターが5,000円だ。いずれも寿命の短いもののほうが、圧倒的にコスト高となっている。
結論 - 大は小を兼ねる
空気清浄機の場合、設置する場所と導入コストさえ何とかなるのであれば、運用コスト、運転音、空気清浄能力のいずれの面でも、適用床面積の広いモデルのほうが優れているといえる。
3回にわたって空気清浄機の選択ポイントについて述べてきた。ありきたりで恐縮ではあるが、空気清浄機においては「大は小を兼ねる」というのが筆者なりの結論だ。