今年の秋、スマートフォンの選び方や買い方、料金が大きく変わります。その柱となるキーワードが「分離プラン」。何が分離するのか、これまでとは何が変わってくるのかよく分からない…と感じている人も多いのではないでしょうか?
国が分離プランへの移行を推進している
これまで、スマートフォンはたとえ最新モデルでも「実質負担2万~3万円」といった低価格で購入できました。スマートフォンの購入時に2年間の契約を約束することで、毎月の利用料金から一定の割引が受けられるようになり、実質的にスマートフォンの価格が安くなる仕組みが設けられていたからです。NTTドコモでは「月々サポート」、KDDIでは「毎月割」、ソフトバンクでは「月月割」などの名称で提供されてきました。
しかし、この秋から携帯電話の契約に紐付いた端末の購入補助が禁止されることになります。これが、ニュースサイトやテレビで話題になっている「分離プラン」です。
分離プランは、「携帯電話の通信料金や利用料金」と「スマートフォンの端末代金」を分離した料金プランのこと。菅義偉官房長官による「携帯電話の料金はあと4割ほど値下げできる余地がある」(2018年8月)といった発言に端を発し、“通信料金と端末代金の完全分離”を義務付けた電気通信事業法の改正案が2019年秋より施行される見込みとなりました。
分離プランの旗振り役を務める総務省は、大手通信事業者が長期間の契約で消費者を囲い込むことを禁止し、モバイル市場における事業者間の競争を促進させることを狙っています。また、消費者にとって分かりやすい料金サービスを徹底させることで携帯料金を引き下げ、家計に占める携帯電話料金の負担を減らし、消費をほかに回してもらうことも見込んでいます。菅官房長官の発言の背景には、公共の電波を利用した携帯電話のサービスが海外と比較して割高であることへの不満もあるといわれています。
10万円超のスマホも割引ナシで購入することに…
従来のプランでは、スマートフォンの本体価格を値引きするためのお金が、月々の利用料金に上乗せされていました。分離プランではその上乗せがなくなるため、月々の利用料金は基本的に安くなる方向に向かうでしょう。これは喜ばしい点といえます。
しかし、毎月の利用料金の割引がなくなることで、スマートフォン本体は基本的に定価で購入することになります。3万円の低価格モデルも10万円超のハイエンドモデルも、割引は一切なくなるわけです。これまで、2年ごとにスマホを乗り換えてきた人も、おいそれと買い替えられなくなってしまうかもしれません。
キャリア側も「このままでは高性能スマホが売れなくなる」と危機感を強めており、端末代金の長期間の割賦払いを新設したり(携帯電話の利用料とは切り離しているため、囲い込みにはあたらないと判断)、使っている端末を下取りすることで割引する、といった分離プランを模索しています。各キャリアの動きは、しばらく見逃せません。