日本のIT環境を見ると、ITへの投資は圧倒的に少なく、またほとんど伸びていない。その中で、テレワーク環境の普及やコスト削減のニーズも高まってきている。これらを実現する環境も変化しつつある。しかし、PPAPによるファイル共有の問題、ランサムウェアなどのリスクも高まってきている。政府もデジタル庁を立ち上げ、デジタル社会の実現を目指している。経産省もDXの普及に向けて、さまざまな支援を行っている。商工会議所も、中小企業へのデジタル化への支援を行っている。
政府が中小企業にデジタル化推進における課題について行ったアンケートでは、課題のトップ3に以下が上がった。
- アナログな文化
- 明確な目標・目的が定まらない
- ITリテラシーの不足
セキュリティに関する課題でも、社内体制や人材・資金不足などがあがった。まとめると、図1のようになる。
左側が抱える課題である。その課題への解決策として開発されたのが、紙データをデジタル化するAI-OCR AIパピルスとデータの保存・共有を行うAOS IndustryDXである。これまで、AOSデータでは、AOS IDXソリューションとして業界や顧客にあわせてコアのエンジンをベースに、各社のシステムや機能を組み合わせるように設計してきた。AOS IndustryDXは、製造業向けのAOS IDXとなる。
再度、資料を見ていただきたい。図2は、日本の主な産業を分類したものである。
日本は50%以上が製造業となっている。さらにその99.5%が中小企業である。図3は地方の中小企業のDXへの取り組みについての調査結果である。
半数はDX推進をすべきと考え、予算も計上しつつある。しかし、大きな課題として人材不足が横たわっている。この解決策として、AOSデータでは、これまで培ってきた
- サーチ技術
- システム・データ管理技術
- クラウドバックアップ技術
の3つの技術をまとめ、活かすことでAOS IDXソリューションを展開してきた。改めて、製造業におけるDX推進に向けてデータなどを見ると、図4のようになる。
左側が、部門ごとに保存されるデータである。そして、右側が人の頭の中にあるデータといえるだろう。これらを、共有・活用するのがDXソリューションとなる。では、それらはどこにあるか。
左側のデータは、それぞれの部門のシステムで保存されている。これらを、自宅や外出先から共有、さらには国内外との他社も参加することが可能になることで、生産性とセキュリティの両立、データの保存・共有やベストプラクティスの共有までもが可能になる。このデータの流れの実現を支援するのが、AOS IndustryDXとなる。
AOSでは、このデータの流れを実現するためには、デジタル化のOne Stopサービスと位置付けている。
この連載のタイトル通りであるが、DX実現には3つのステップがある。デジタル化、デジタライゼーション、そして最後にDXである。AOSでは、これらのすべてのステップで必要となる製品をサポートしている。そして、最近の傾向であるが、もっとも下のデジタル化のステップの重要性が増している。そこで、活躍するのがAIパピルスである。その機能を一言でいえば、高性能で低コストなOCRシステムである。
紙からデジタル化して、AIのデータとして活用できるように保存、さらに管理を容易にする機能を持つ。AOS IndustryDXとの関係は、図7のようになる。
AIパピルスでこれまでの紙データをデジタル化。そして、AOS IndustryDXがデータの保管や検索、さらには共有・活用を進めていく。まさに車の両輪のような関係といえるだろう。そして、中小企業でも比較的容易に導入できる点も特徴といえるだろう。
もう1つ注目したいのが、メタデータの付与である。これは、製造業に存在するデータは非常に多岐にわたる。そこで、データ管理のために、AOS IndustryDXではメタデータを付与する。メタデータがあることで、より検索や活用をしやすくするのである。将来の本格的な活用に向けた布石として、この機能が実装されている。
具体的には、こうしてメタデータが付与され、データが蓄積されていくことで、デジタルツインが実現される。
デジタルツインとは、データがデジタル空間とフィジカル空間を行き来できるようになることだ。AOS IndustryDXでデータを保存・共有できるようになると、データ活用が可能になる。こうして、AOS IndustryDXは将来において2つの空間の橋渡しの役目を担うことになる。
さらなる発展形として、SmartFactoryもある。デジタルツインとAOS IndustryDXが組み合わされることで、リアル空間でとられたデータがAOS IndustryDX経由でデジタルツインに行く。そして、デジタルツインで起きたことが、フィジカル空間に戻るというデータ循環が形成される。これがSmartFactoryを構築への流れになっていくだろう。
SmartFactoryを構築していくには、目に見えないベストプラクティスを活用する必要がある。その効果としてリードタイムの短縮やコストの削減が期待できる。将来において、その入口となるのがAOS IndustryDXのメタデータによる検索機能なのである。
最近、ランサムウェアの被害が多発している。セキュリティ対策ソフトでも対応が続くが、防ぎきることは難しい。AOS IndustryDXのクラウド保存を活用することで、ランサムウェア対策も期待できる。セキュリティ対策に悩む中小企業には、福音となるかも知れない。
メタデータを付与
では、どのようにメタデータを付与し、利用するかを見ていきたい。AOS IndustryDXの基本機能については、こちらの記事を参照してほしい。メイン画面は、図9となる。
他のAOS IDXソリューションと同じような画面である。ここから管理者メニューから[メタデータ管理]を開く(図10)。
それぞれのカテゴリー(部門やデータの種類)ごとにテンプレートを作成する。
さまざまな項目があるが、部門やデータの種類に応じて設定するとよいだろう。こうしてテンプレートが作成されたら、個々のデータに対し、メタデータを付与していく。ここでは、チームドライブにある設計部門→図面のデータに対し、メタデータを付与してみよう。
ファイルを右クリックし[メタデータ検索設定]を選ぶ。
まずは[カテゴリー選択]からカテゴリーを選ぶ。
次いで、メタデータの登録になる。
必要なメタデータを入力し、[登録]ボタンをクリックする。非常に簡単に、メタデータが登録される。
メタデータで検索
次に、キーワードでメタデータを検索してみよう。図9の上にある検索ボックスに入力することでも検索可能だ。もしくは、検索ダイアログが表示されるので、[メタデータ検索]をクリックする。カテゴリーなどを適切に選択すると、図16のようにテンプレートに合わせた検索ダイアログが表示される。あとは、検索項目を適切に入力する。
ここでは「パーツ分類」で「ブレーキ」を選択した。検索結果は、図17のようになる。
さらに、プレビューを表示したのが、図18となる。
このように、より的確に検索を行うことができる。メタデータを付与するのは、確かにひと手間かかる。しかし、メタデータを付与することで、クラウドに保存されたデータがより活用度が高まる。この機能を有効に活用したい。
最後に、ログ機能を紹介しよう。
参加ユーザーの行った操作をすべて記録する。インシデント発生時には、その原因などを探るための一助となるであろう。非常時には活用したい機能である。
さて、AOS IndustryDXは導入も非常に簡単で、当日からの利用も可能である。そして、DX化へのまず最初にすべきことは、社内にあるデータをいかにクラウドに保存し、共有できるかである。データが溜まっていくことで、これまでに得られなかった発見も可能となる。まずは、メタデータを付与し、クラウドへ保存すること。これこそが、AOS IndustryDXが提案するソリューションである。
他にも
- 知財検索機能
といった固有の機能もある。図20は、知財検索機能を使い「自動車 ブレーキ」で検索した結果である。
最後に、デジタル化することだけがDXの目標ではない。しかし、デジタルデータがなければDXも不可能となってしまう。特に、厳しい環境にある製造業の中小企業にとって、DX化への一助となることを期待したい。