改めて、DX(デジタルトランスフォーメーション)について、その基礎から解説していきたい。第1回では、IPAの「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」コンテンツから動画「DXってなんだ」を紹介した。
図 デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
DXについて、実はよくわかっていなかったという方は、ぜひ、視聴していただきたい(3分程度の動画なので、すぐに視聴できるだろう)。今回は、同じくIPAの動画を紹介したい(出典:「なぜ今デジタルトランスフォーメーション(DX)?」(独立行政法人情報処理推進機構)(2022年1月15日に利用))。以下である。
DXが今後、必要という点では、多くの方々が納得をしていると思う。その一方で、第1回でも触れたように、デジタル化とDXを勘違いしている人も少なくない。この動画ではカイゼン(製造業などで、生産現場における作業の見直し活動を意味する。現場からのボトムアップで問題解決を行うことが多い。大手自動車メーカーでの実践例が有名)とDXを比較することから始まる。
高度成長時代から、日本型の生産・成長モデルとして1つとして培われたものである。しかし、そこに限界が見え始めている。動画でも「これまで誰もやったことがなかったようなビジネスやサービスって日本からあまり出てきてないかも」という指摘がある。実際に、ITやデジタル技術を駆使したサービスではSNS(ソーシャルネットワークサービス)があげられるだろう。コミュニケーション活動を支えながら、社会的ネットワークを構成する。今や企業や公官庁でさえ、これらのコミュニケーションツールを使い、情報発信を行っている。
その一方で、注目すべきなのは事業としてのビジネスモデルである。多くが、広告収入を利益の柱としている。しかし、それ以外にもサービス利用料であったり、他サイトへの誘導・連動に力点をおくビジネスモデルもある。サービス自体も目新しいが、国境を超えてサービスが拡大し、収益方法もこれまでにないモデルである。そして、多くのサービスが多数のユーザーのデータを収集し、巨大なビッグデータを形成する。そこにまた、新たなビジネスモデルが生まれつつある。他にもEC、配車サービス、フードデリバリーといったカテゴリでも、これまでにないサービスとビジネスモデルが登場している。これらは、人々の社会的インフラとしての価値を持ちつつ、巨大な利益をももたらしている。
では、日本ではどうか? 残念ながらリーマンショックも交え、失われた20年と比喩されるように停滞が続いている。世界・業種をまたぐような新たなサービス、ビジネスモデルを創出することはできなかった。
その打開策として、DXの普及があげられているのである。繰り返しになるが、デジタル化やデジタライゼーションがゴールではない。新しいビジネスモデル、働き方変革が求められている。
しかし、DXの導入・達成には、苦労をしている企業も多いであろう。この動画では、その理由として、3つ上げている。
- デジタルが目的に
- トップがコミットしていない
- IT部門への丸投げ
これは、経済産業省が「経営」という観点から分析したものである。詳しくは、動画を視聴していただきたいが、なんとなく理解できるという方も多いと思う。さらに、筆者なりに分析を加えれば、IT部門の脆弱性があると思われる。
企業が経営的に厳しい状況に置かれると、どういった対策を行うか。一般的には、経費・人件費などの削減であろう。ところで、ITやシステム部門は、基本的に利益をあげる部署ではない。したがって、経営が厳しくなると、まっさきに経費削減の対象になることもある。
もともと企業内で、IT部門は人材的に厳しい環境が多かったと思われる。それがさらに削減対象となると、人やモノへの投資も厳しいものとなる。この負のスパイラルは失わわれた20年に日常化していたのではないだろうか。上述した新たなサービス、ビジネスモデルを完成させた企業が最初から、潤沢な資金に恵まれていたということもないだろう。資金力以上にアイディアも重要ではあったはずだ。
では、どうやってDXを進めていくか? DX SQUAREの動画の解説の最後に「今回の動画を自社内で展開していただき、DXを進める理由と、その進め方について、議論するきっかけになるとさいわいです。」とある。まさに、この動画をきっかけに、新しい方向性を議論してもいいだろう。