ビジネスがさまざまな方向に拡がる中で、顧客情報の管理と活用はB2C、B2B問わず重要な課題となっています。いま、貴社における顧客データの整備・活用状況はいかがでしょうか?

顧客接点強化のためのデータ整備とは

以下は顧客データの整備・活用状況チェックリストです。

  • 複数事業・チャネル・地域横断で、顧客に関連するデータを収集できている
  • 不整合なく統合された最新の顧客データを一元的に管理・共有できている
  • その顧客データを軸に、全社/グループ横断的に分析ができている
  • 分析だけではなく、顧客接点業務やサービスに顧客データを活用できている

どれも、部分的・局所的には実現できているものの、全社/グループ横断となるとまだまだ...という企業が多いのではないかと思います。

例えばB2Bビジネスにおいて、自社グループが特定の得意先グループに対して、全体でどれだけの取引実績、債権残高、見込み案件があるかを把握することは決して簡単ではありません。B2Cビジネスにおいても、ある顧客のチャネルごとの購買履歴、コールセンターの問い合わせ、サポートサービス利用状況、世帯構成など、顧客に紐づくデータを包括的に把握することは困難です。

こうした顧客情報はどのように管理すべきなのでしょうか? 本来、CRMシステムが顧客情報を管理するための器ですが、事業・チャネル・地域が多様化し、また営業だけでなくマーケティングやサポートサービスなど、顧客接点を持つ業務が多岐にわたる中、ひとつのCRMシステムであらゆる顧客関連情報を管理・蓄積することは現実的には不可能になってきています。

各アプリケーションと管理されている顧客データがサイロ化されている前提で、アプリケーションレベルではなくデータレベルでの統合管理が求められるのです。

最終ゴールは包括的な顧客360°ビュー

ERP、CRM、ECやコールセンターなど、それぞれのシステムに格納されている顧客データは断片化しており、各々持っているデータ項目や値は異なります。これらを統合した上で、最終的には包括的な顧客360°ビューを構築し、顧客接点をもつ業務に供給することで、営業力強化やサービスレベルと顧客体験価値の向上、ひいては収益向上の実現がゴールとなります。

図1:包括的な顧客360°ビューの概念図

5つの顧客データ拡充ステップ

その顧客情報の拡充の方向性を、B2Cの個人顧客を例にステップごとに見ていきましょう。

ステップ1:データの統一化(Unified)
さまざまなアプリケーションから顧客データを収集、名寄せすることが顧客管理の第一歩です。同じ顧客なのに顧客コードが統一されておらず泣き別れになってしまっているものを同定し紐付ける、もしくは重複排除する作業です。

ステップ2:データの精査(Verified)
顧客の連絡先など、基本データの精査です。異なるソースシステムから顧客データを収集、名寄せして紐付けた際に、同じ項目でも値が異なる、すなわちデータの不整合が生じることはよくあります。住所データは典型的な例で、あるシステムでは最新の住所に更新されているものの、別のシステムでは旧住所のまま、という状態です。どの値が最新で正しいのかを識別する、いわゆるゴールデンレコードを生成する必要があります。

ステップ3:属性データの紐づけ(Enriched)
年齢、性別、学歴、職業、年収や趣味嗜好など、その顧客の素性をあらわす属性項目の付加です。これらも各ソースに断片化したデータを収集、標準化してエンリッチします。

ステップ4:データの戦略的関連付け(Strategic)
その顧客を取り巻く、さまざまなモノ・コト・ヒトとの関連付けです。マスターデータ同士のリレーションとも言い換えられます。例えば、買った商品(商品との関連)や利用したサービス(サービスとの関連)、世帯構成(顧客同士の関連)などです。

ステップ5:デジタルデータの紐づけ(Digital)
Webでの行動ログやデバイスログ、SNSのポストやリレーションなど、マスターデータの先にあるトランザクション/インタラクションデータとの関連付けです。

図2:顧客データ拡充の5つのステップ

下の図は、インフォマティカが提供するMDM(マスターデータ管理)のステップ5まで拡充した包括的な顧客360°ビュー画面のサンプルです。この画面の中で黄色の枠に相当するのがマスターデータであり、上述したステップ1~3の顧客情報が集約されたゴールデンレコードとなっています。

そして、そのほかの赤い枠の部分がステップ4~5に相当する顧客を取り巻く関連データです。顧客マスターを統合管理することで、ERPの購買履歴やCRMのロイヤルティ情報、SNSの直近のポストなど、各アプリケーションで保持しているトランザクションデータやインタラクションデータを仮想的に収集し、このようなひとつの画面で包括的なビューとして提供することが可能になるのです。

アプリケーションごとにサイロ化した顧客データを統合し、分析はもちろん、業務の現場でも強力な武器となる360°ビューとして供給し、ビジネス価値の創出に取り組んでみてはいかがでしょうか。

図3:顧客360°ビューイメージ

著者プロフィール

久國 淳

2013年4月1日より、インフォマティカ・ジャパン セールスコンサルティング部 ソリューションアーキテクト エバンジェリストを務める。データプラットフォームに関するソリューション提案活動のほか、データマネジメントを中心とした講演やセミナーを通して啓蒙活動に従事。現職以前は、SAPジャパンにて総合商社、小売、サービス業向けのERP営業や、BI/EPM製品やSAP HANAのソリューションスペシャリストを経験。