Excelはデータを表形式にまとめて管理するアプリケーションである。その一方で、個々のデータを一つの画面に表示する、カード型データベースのような編集画面も用意されている。この機能を上手に活用すると、Excelをより快適な環境で使える場合もある。今回は、Excelのフォーム画面の活用方法を紹介してみよう。
Excelのフォーム画面とは?
まずは、Excelに用意されているフォーム画面について紹介しておこう。通常、Excelでデータを扱うときは、以下の図のようにデータを表形式にまとめて管理するのが一般的だ。
この表をフォーム画面で表示すると、以下の図のようにデータを1件ずつ画面に表示できるようになる。管理されているデータそのものは何ら変化しないが、個々のデータを1件ずつ閲覧、編集できるため、状況によっては作業をスムーズに進められる場合もある。ぜひ、使い方を覚えておくとよいだろう。
クイック アクセス ツールバーのカスタマイズ
それでは、フォーム画面の使い方を紹介していこう。フォーム画面はバージョンの古いExcelにも用意されていた歴史のある機能である。しかし、Excel 2007以降、「フォーム」メニューが非表示になっているため、その存在を知らない、もしくは忘れてしまっている方も多いと思われる。
もちろん、最新版のExcel 2016にもフォーム画面を使ったデータ編集機能が用意されている。ただし、この機能を利用するには、クイック アクセス ツールバーをカスタマイズしておく必要がある。
まずは「クイック アクセス ツールバーのユーザー設定」をクリックし、「その他のコマンド」を選択しよう。
すると、以下の図のような設定画面が表示される。ここでは、左側の分類に「すべてのコマンド」を選択し、「フォーム」の項目を選択する。続いて「追加」ボタンをクリックすると、クイック アクセス ツールバーに「フォーム」のアイコンを追加できる。
以上で、フォーム画面を使用するための準備は完了。それでは、フォーム画面を使ったデータ編集について紹介していこう。
フォーム画面を使ったデータ編集
フォーム画面を使ってデータ編集を行うときは、表内にあるセルを選択した状態で、クイック アクセス ツールバーにある「フォーム」アイコンをクリックする。
すると、1件目のデータがフォーム画面に表示される。このように個々のデータ(レコード)をカード型データベースのように表示できるのがフォーム画面の特長となる。2件目以降のデータは、スクロールバーを上下に移動させると表示できる。
もちろん、フォーム画面でデータを修正することも可能だ。この場合は、フォーム画面にある各々のテキストボックスでデータを修正すればよい。続いて「閉じる」ボタンをクリックすると、その修正が表(ワークシート)に反映される。
ちなみに、ここで示した例の「年齢」の項目には、生年月日から年齢を自動計算する関数DATEDIF()が入力されている(この関数の詳しい使い方は第9回の連載を参照)。このように数式や関数により自動計算されるセルのデータは、「編集不可のデータ」としてフォーム画面に表示される。セルに入力されている数式や関数を間違って消去してしまう危険性がないことも、フォームを利用するメリットの一つといえるだろう。
もちろん、新たにデータを追加することも可能だ。この場合は、「新規」ボタンをクリックして各データを入力していけばよい。
フォーム画面ならではの検索機能
これまでに解説してきたように、データを編集する際にフォーム画面を活用することも可能である。ただし、画面の見た目が変化しているだけで、その利点をあまり実感できない方も多いのではないだろうか。むしろ、通常の表(ワークシート)の方が素早くデータの入力、修正を行える、という方もいるだろう。
フォーム画面が便利に活用できるのは、入力が完了しているデータを閲覧するときだ。というのも、フォーム画面を使うと「項目を指定したデータ検索」を行えるようになるからだ。データを検索するときは「検索条件」ボタンをクリックし、必要なだけキーワードを入力してから「次を検索」ボタン(もしくは「前を検索」ボタン)をクリックする。
データの検索機能は通常の編集画面(ワークシート)にも用意されている。しかし、この機能は全てのセルが検索対象となることに注意しなければならない。たとえば、「山口」というキーワードで検索を行うと、氏名が「山口」のセルも、住所が「山口県」のセルも検索結果としてヒットしてしまう。よって、目的のデータを見つけ出すまでに無駄な時間を要してしまう場合がある。
一方、フォーム画面に用意されている検索機能は、「氏名」や「都道府県」などの項目別にキーワードを指定できる。このため、効率よくデータを検索することが可能となる。
なお、検索結果として複数のデータ(レコード)がヒットした場合は、「次を検索」や「前を検索」のボタン、もしくはスクロールバーで前後のデータに移動すればよい。
フォーム画面を使用するときは、フォーム画面上で行ったデータ修正がワークシートに反映されることに注意しなければならない。フォーム画面は「データの編集画面」と「検索条件の指定画面」がよく似ているため、検索用のキーワードを入力しようとして、間違って既存のデータを修正、削除してしまう恐れがある。このようなミスを防ぎたい場合は、あらかじめ「シートの保護」を実行しておくとよい。
シートを保護した状態でフォーム画面を呼び出すと、すべてのデータが「編集不可のデータ」として表示される。一方、検索画面には、これまでと同様にキーワード入力用のテキストボックスが表示される。
このように「フォーム画面」と「シートの保護」と併用すると、ミスを犯しにくい、快適なデータ閲覧環境を構築できる。何百件、何千件というデータの中かから「目的のデータ」を探し出す場合などに活用できるので、気になる方は試してみるとよいだろう。