7月12日から14日の3日間、対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6(スト6)』のリーグ戦である「第5期 TOPANGA Championship(トパチャン)」の本戦ファイナルが行われました。優勝したのは、新進気鋭のザンギエフ使い・こばやん選手です。

『スト6』による「TOPANGA Championship」は今回が初めてで、『ストリートファイター』シリーズの大会としては2023年5月の「World Championship」から1年2カ月ぶり、ナンバリングとしては2022年6月の「第4期 TOPANGA Championship」から2年1カ月ぶりです。

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    優勝したこばやん選手

まずは、オンラインで行われたオープン予選を勝ち抜いた3名に、招待枠24名を加えた27名で本戦リーグを実施。27選手がA、B、Cの3つのブロックに振り分けられ、各ブロックの上位2名と、3位3名による三つ巴戦に勝利した1名の計7名が本戦ファイナルに進出します。なお、オープン予選を勝ち抜いたのは、こばやん選手(1位抜け)、立川選手(2位抜け)、cosa選手(3位抜け)の3選手です。

Aブロックは、Day2までもけ選手が首位を独走していましたが、Day3で翔選手、ウメハラ選手に敗北し、一気に3位まで後退。3位三つ巴戦でも敗退し、本命とみられたなか、ファイナル進出を逃すことになりました。1~4位が5勝3敗という大混戦のなか、「豪鬼」などを使う翔選手と「ケン」を使うりゅうきち選手が勝ち上がります。

全般的に若手の躍進が目立つ今回のトパチャンでしたが、そのなかでベテランが気を吐いたのがBブロックです。多くのトッププレイヤーに選ばれているキャラクター「ED」を使う2人、ももち選手とふ~ど選手が勝ち上がりました。特に、ももち選手は独自開発のドリームコンボを引っさげ、「ED」使いのなかでも一歩抜き出た存在として、1位抜けを果たしました。

Cブロックは、若手の活躍を象徴する19歳のひかる選手と22歳のこばやん選手が勝ち上がります。ひかる選手は「A.K.I」、こばやん選手は「ザンギエフ」と競技シーンではレアなキャラクターでの出場で、注目が集まります。特にこばやん選手は、オープン予選からの勝ち上がり。これまで大きな活躍を見せていなかっただけに、一気に知名度と注目度が高まりました。

3位による三つ巴戦は、Aブロック3位のもけ選手、Bブロック3位のカワノ選手、Cブロック3位のひびき選手で実施。1勝1敗の乱戦のなか、得失点差で「豪鬼」を使うカワノ選手が最後の切符を手にしました。

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    本戦ファイナルに進出した7人の選手(左からりゅうき選手、ふ~ど選手、ももち選手、こばやん選手、翔選手、ひかる選手、カワノ選手)

本戦ファイナルは、7選手による総当たり戦で、1試合7本先取の長丁場です。6勝6敗になった時点でデュースとなり、2連勝した選手が勝ち抜けます。ただし対戦数に上限があり、先に10勝した選手が勝利。つまり最短で7セット、最大で19セットです。

7選手のなかで最も勝利数を上げた選手が優勝ですが、同じ勝利数の場合、直接対決で勝利した選手の順位が上になります。三つ巴となった場合は、勝利したセット数と負けたセット数を計算し、ポイントが高い選手の順位が上になります。

Day1は、こばやん選手が優勝候補と目されるももち選手と翔選手の両方に勝利する大金星をあげてスタート。ひかる選手も連勝で一歩リードします。Day2もこばやん選手の勢いが止まらず、ふ~ど選手とりゅうきち選手に勝利し、無敗で最終日を迎えます。ひかる選手は翔選手に敗北しますが好調を維持。翔選手とももち選手も連勝し、3勝1敗でこばやん選手を追いかけます。

迎えたDay3は、こばやん選手がカワノ選手とひかる選手との対戦を残した状態。ひかる選手はももち選手とこばやん選手との対戦です。ひかる選手がももち選手に勝利すると、こばやん選手との頂上対決となり勝利したほうが優勝です。

しかし、初戦のももち選手戦で敗北して痛恨の2敗目。ここで優勝の目がなくなってします。こばやん選手がカワノ選手に勝てば、最終戦を残して優勝が確定します。

ひかる選手に勝利したももち選手と、りゅうきち選手に勝利した翔選手は、最終戦で直接対決を残しており、どちらかが5勝1敗となるので、こばやん選手がカワノ選手、ひかる選手に連敗すると、ももち選手と翔選手の直接対決で勝利した選手の優勝です。そのため、こばやん選手の結果次第ですが、優勝の行方はまだわからない状態です。

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    Day3開始前の成績。自力優勝があるのはこばやん選手とひかる選手。翔選手とももち選手はこばやん選手とひかる選手の成績によって優勝の目が出てきます

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    Day3の3試合目に行われたひかる選手対ももち選手戦。ここでひかる選手が敗退し、ひかる選手の優勝はなくなりました。こばやん選手は残り2戦中1戦勝利すれば優勝という状態に

こばやん選手対カワノ選手の一戦は、一進一退の攻防が続き、6勝6敗のデュースにもつれ込む展開となりました。しかし、そこからこばやん選手が連勝。見事、優勝を手にしました。しかも、こばやん選手は、オープン予選からの勝ち上がり。一気にスターダムに駆け上りました。

使用キャラクターの「ザンギエフ」は、最新のアップデートで大幅に強化され、「強キャラ」の呼び声が高いのですが、それでも特性上、絶対的な苦手キャラがいるため、大会で目立った活躍がありませんでした。

特に、「ダルシム」を大の苦手としており、本戦リーグのCブロックでは、日本屈指の「ダルシム」使いの鶏めし選手がいるなか、その不利をはねのけ、勝利を収めています。確実なコマンド入力による難易度の高いコンボ、投げ重ねを読んでのジャンプキャンセルスクリューパイルドライバー、的確な判断力による対応の早さなど、キャラ性能以上にこばやん選手のスキルの高さを見せつけた大会となりました。

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    こばやん選手が勝てば優勝となるカワノ選手戦

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    優勝を決めた瞬間。感極まってその場に泣き崩れるこばやん選手

見事、優勝したこばやん選手にインタビューです。

――おめでとうございます。優勝したいまの感想をお聞かせください。

こばやん選手:正直、本戦ファイナルは負けまくって終わるのかなって思っていたんですけど、勝てて本当にホッとしています。トパチャンは数ある大会のなかでも結構、特殊で、試合は長期戦、予選からの参加で期間も長く、対策する時間も長かったので、自分のモチベーションを維持し続けるのが本当に大変でした。それでもやはりいい試合を作っていきたい一心で、がんばってきてよかったと感じています。

――国内の大きな大会だと「ザンギエフ」が優勝することは記憶にないくらい久しぶりだと思います。

こばやん選手:正直、『スト6』がリリースされたばかりのシーズン1のころ、「ザンギエフ」はほかのキャラクターに比べて、力不足な印象でした。それでも使い続けて、練習した結果が出てきたんだと思います。運良く、調整で能力が向上したので、タイミングもよかったと思います。

――「ザンギエフ」は苦手なキャラクター相手だととことん不利になりますが、一般的に相性が悪いと言われている組み合わせを物ともしないように感じる結果を残せていました。

こばやん選手:「不利な組み合わせ」はどうしても出てくるので、そういった場合でもまずは気持ちで負けないようしていました。そのうえで対戦相手の癖だったり、刺さりそうなポイントを試合中に冷静に分析したり、そのあたりが勝ちにつながったのかもしれません。あとは苦手な相手って、それだけで燃えるところもあるんですよ。不利だからこそ勝ってやろうって。それがいい方向に行ったのかなと思いますね。

――『スト6』をはじめとする対戦格闘ゲームは、ベテランが強さを発揮してきましたが、今大会を含め、若手も台頭してきています。こばやん選手も若手に部類されると思いますが、そこはどうお考えですか。

こばやん選手:そのことはあまり気にしていません。たまたま自分が運良く力を付けていた時期に「ザンギエフ」が上方調整され、結果が残せたんだと思っています。ただ、プレイ人口が増えてきているのは感じます。

――先ほどの話ではシーズン1から「ザンギエフ」を使い続けているとのことでしたが、『スト6』になって、キャラを「ザンギエフ」に決めた理由を教えて下さい。

こばやん選手:正直、『ストリートファイターV』の「ザンギエフ」はカッコいいと思えなかったんですけど、『スト6』の「ザンギエフ」は素直にカッコよくて使いたいと思いました。

最初はあまり強くなかったんですけど、そもそも自分の『スト6』が未熟な状態でしたので、もっとうまくなれるとは感じていました。弱い時代にやり続けていたことで、現シーズンで上方調整されたときに、結果を出せたんだと思います。『スト6』がリリースされて1年経ちましたけど、いい1年だったと思います。

――最後にファンへのメッセージと今後の目標をお願いします。

こばやん選手:大会に勝ちたい気持ちももちろんあるんですけど、自分らしい勝ち方をファンの方に見てもらいたいですね。それで結果を出して、応援してくれている人たちに還元していきたいと思っています。

――ありがとうございました。

今回のトパチャンは、招待枠24名全員がチーム対抗プロリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024」の出場選手であるSFリーガー。その枠に入れないSFリーガーもいました。

実力者がその実力を遺憾なく発揮している現状況では、SFリーガー以外のプロ選手はもちろん、プロライセンスを持っていない選手が勝ち抜くことは難しいと言えます。そんななか、プロライセンスを持っておらず、22歳の若さの兼業プレイヤーがトパチャンを制したのは、まさに快挙でしょう。

今年の2月に開催された世界大会「CAPCOM CUP X」の優勝者であるUMA選手も兼業プレイヤーであり、最強ティアとは言い難いキャラ「ジュリ」を使っていました。これは『スト6』がまだ熟れていないこともあるでしょうが、まだ見ぬ実力者がたくさんいることも示しています。

今後も新しい選手が登場することと、中堅・ベテラン勢の巻き返しがあると信じて、『スト6』の競技シーンには期待しかありません。

(撮影/志田彩香)