8月5日から7日までの3日間、高校生向けeスポーツ大会「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2023(STAGE:0 2023)」の全国大会が開催されました。

5回目を数える今大会ですが、初回の2019年開催以来の有観客オフライン形式です。初回は東京ディズニーリゾート内にある舞浜アンフィシアターでしたが、今回は東京タワー フットタウン内の「RED° TOKYO TOWER」が会場に選ばれました。

  • 「STAGE:0 2023」全国大会は、「RED° TOKYO TOWER」にて有観客オフラインでの開催となりました

  • 家族や友人が直接応援できるのも有観客の良さです

  • 選手やチームの応援うちわを作って応援していた講師陣

  • 選手が試合する場所とは別のスタジオで、大会アンバサダーの田中卓志さんやスペシャルゲストが試合を観ていました

「STAGE:0 2023」の競技タイトルは、『クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)』『Fortnite(フォートナイト)』『League of Legends(LoL)』『VALORANT』『オーバーウォッチ 2(OW2)』の5つ。『OW2』は今年度より加わった新タイトルで、『VALORANT』は昨年に引き続き2回目の登場です。ただし、昨年の『VALORANT』はエキシビションに近い形だったので、本格始動するのは今回からと言えるでしょう。

大会では、まず北海道、東北、関東(2ブロック)、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄、オンライン高校の9つのブロックで、6月、7月に地方予選を開催。全国大会出場の権利を争います。『OW2』と『フォートナイト』のみ全ブロック共通の代表決定戦となり、『OW2』は8チームが、『フォートナイト』は45チームが出場。それ以外のタイトルは、各ブロックで優勝した9チームによるトーナメントが行われます。『フォートナイト』以外のタイトルは、ベスト4から有観客の会場で試合します。

最後の最後で波乱が起きた『フォートナイト』部門

初日は、チームメンバー以外すべて敵となるバトルロイヤル系シューティング『フォートナイト』。2人1組のチーム戦で45チームが参加します。徐々にマップが狭くなるなか、最後の1チームとなるまで戦いが続けられます。

数あるバトルロイヤル系シューティングの中でも、『フォートナイト』独自の特徴と言えるのが建築。資材を集め、足場や壁を建築して、相手からの攻撃を防いだり、高台から狙い撃ちをしたり、バトルに有利になるための場所を作ります。

生き残りの順位によるポイントと、相手を撃破したポイントの両方がラウンドごとに加算され、全6ラウンドの合計ポイントが最も多いチームが優勝となります。「STAGE:0 2023」の全国大会は、オフライン開催でしたが、『フォートナイト』部門だけは、それぞれのプレイヤーが自宅から参加するオンライン大会。『フォートナイト』部門は1200チームの応募があり、全国大会進出はかなり狭き門だったでしょう。ただ、同一高校から何チームでも出場できるので、大会を経験できるうれしさや楽しさがあります。

また、eスポーツは高校生でありながらプロゲーマーとして活躍する選手も多く、「STAGE:0 2023」にも参加しています。予選DAY2で1位抜けした「チームZ」(N高)は、トッププロとして活躍しているプレイヤーがいますし、ほかにもプロシーンで活動する選手が散見されました。高校生大会ながら、かなり実力の高い選手が集まっているのです。そんな中で、プロの実力を示せるのか、高校生が一矢報いるのかにも注目が集まります。

  • 予選DAY1を勝ち抜いた23チーム。同一高校から何チームも出場できるのはeスポーツならではの良さ。3年間補欠で終わることはありません

  • 1位抜けした「チームZ」は、プロゲーマーとして活躍し、アジアチャンピオンにもなった経験があります

  • 大会のレギュレーション。順位ポイントもエリミネートポイント(撃破ポイント)も高く設定されており、1マップの成績で大きく順位が変動します

ラウンド1は、「チームZ」がマークされたか、終盤に入ったところで撃破され、「来樹のお通りだ道をあけろ」(江別)が最後の1チームとなるビクトリーロイヤル(ビクロイ)を獲得します。

ラウンド2でも、高順位を獲得した「来樹のお通りだ道をあけろ」がポイントを加算していきます。ラウンド3は、「まもとわ」(N高)がビクロイを獲得しますが、ラウンド4は、「来樹のお通りだ道をあけろ」が2度目のビクロイを獲得。そして、ラウンド5にアジアチャンピオンの「チームZ」がビクロイを獲得します。

「チームZ」は、ラウンド4までビクロイこそありませんでしたが、撃破ポイント、順位ポイントともに高ポイントを稼いで2位につけていたので、一気に優勝の目が出てきました。

とはいえ、「来樹のお通りだ道をあけろ」はラウンド5開始時点で、2位に31ポイント差、3位に102ポイント差をつけた状態で独走。ラウンド6で「相当なこと」が起きない限り、「優勝は盤石」かと思われました。

しかし、ラウンド6で、その「相当なこと」が起こります。「来樹のお通りだ道をあけろ」が序盤早々に倒されてしまい、順位ポイント、撃破ポイントがともに0ポイントという最悪の事態に。3位の「wkeyやめてください」(ルネサンス)がビクロイを獲得しました。撃破ポイントによっては逆転もあり得えます。

結果は、「wkeyやめてください」が5ポイント及ばず、「来樹のお通りだ道をあけろ」がなんとか逃げ切る形で優勝。最後の最後まで結果が分からない試合となり、大いに盛り上がりました。

  • 余裕のあったように思われましたが、終わってみれば2位と5ポイント差、3位と15ポイント差と僅差での決着となりました

『OW2』では圧倒的な強さの初代王者が誕生

2日目は『クラッシュ・ロワイヤル』と『OW2』の2タイトルです。

『クラッシュ・ロワイヤル』は、今大会唯一のスマホアプリで、タワーディフェンスとカードゲームが融合したストラテジーゲーム。3人1チームで対戦し、星取戦の団体戦によって勝敗を決めます。

「ゴブリソ三銃士」(日大習志野)、「チームぼえー」(近大付属)、「おだまき」(刈谷工科)、「チーム素敵」(早稲田)の4校がベスト4に進出。「おだまき」は、昨年はベスト8止まりで、「STAGE0 2023」では雪辱を果たしたいところですが、「チーム素敵」に阻まれます。

「チーム素敵」は、昨年の優勝校であるN高を初戦で破って準決勝進出を決めており、実力の高さがうかがえます。「おだまき」を破り、決勝進出を決めました。

決勝の相手は「ゴブリソ三銃士」。「チームぼえー」を倒して決勝まで上がってきました。決勝戦で「ゴブリソ三銃士」は、「チーム素敵」の素敵なうんますさん選手が2番手で登場することを予測。チームでも最もランクの低いゴブリソバレル選手をあて、先鋒と大将で星を稼ぐ作戦に出ます。その作戦が見事にハマり、「ゴブリソ三銃士」が2勝1敗で優勝しました。

  • ほかのタイトルよりも全日制高校が全国大会に出場しがちな『クラッシュ・ロワイヤル』。今年も通信制高校はN高のみでした

  • 優勝した「ゴブリソ三銃士」

『OW2』は、「STAGE:0 2023」より採用されたタイトルです。5対5のチーム戦で行われ、相手を倒しつつ、各マップで用意された目的を遂行します。

一見、タクティカルシューティングのようですが、一度倒されても時間経過により復帰できるので、MOVAのシステムを使ったシューティングゲームと言えるでしょう。

例えば、エスコートというマップであれば、攻撃チームはペイロードと呼ばれる車をゴールへ進めると勝利、防御チームはそれを阻止すれば勝利。倒されると、復帰までの時間によって、攻撃側はペイロードを進ませることができなくなり、守備側はペイロードの進行を阻止しにくくなるデメリットが発生するわけです。

使用するキャラクターはヒーローと呼ばれており、味方の盾となるタンク、相手を攻撃するダメージ、回復や味方の強化をするサポートに分かれています。さらに、それぞれの系統に複数のヒーローがいるため、組み合わせによってさまざまな戦略がとれるようになっています。

今回は、初回ということもあり、ブロック予選ではなく、全国共通の代表決定戦から勝ち上がった8チームが全国大会に進出しました。オフライン会場で戦うのは「バハムート(神)」(S高)、「ベトナムのアイドルあんず」(N高)、「souvenir」(沼津城北)、「Tankdiff」(N高)の4校です。

注目は「Tankdiff」。予選無敗を誇る優勝候補です。個々の実力の高さに加え、連携力が高く、有利な状況では一気に押し込み、不利な状況でも耐えきる力を持っています。準決勝の「souvenir」をほぼ完封で倒すと、「バハムート(神)」も1度も負けずに倒しきりました。

「バハムート(神)」は普段練習相手として対戦を繰り返していたこともあってか、ギリギリの勝利となりましたが、「Tankdiff」は初代優勝校に相応しい強さを見せつけました。

  • 「STAGE:0 2023」から新規採用となった『OW2』。今年、唯一N高が優勝したタイトルです

  • 優勝した「Tankdiff」

N高校『LoL』5連覇ならず。全日制高校も台頭

3日目は『LoL』と『VALORANT』の2タイトルです。

『LoL』は5対5のチーム戦で、フィールド内のお互いの陣地を守りつつ、相手の拠点を破壊するのが目的のゲーム。試合開始時は最弱状態ですが、フィールド内のモンスターや相手プレイヤーを倒すことで経験値や資金を稼ぎ、レベルアップと装備の購入で自身を強化していくRPG要素が入っています。

チャンピオンと呼ばれるプレイヤーキャラは162体。個々の強さのほかに、チームの編成や作戦、相手との相性、さらにはゲーム開始時に使用禁止キャラを指定する「BAN」があるため、多様なチャンピオンを使いこなすスキルが求められます。

「STAGE:0」の『LoL』部門と言えば、N高校の「N1」が、過去4大会ですべてで優勝するという圧倒的な強さを誇っています。しかし、「STAGE:0 2023」で「N1」は、全国大会への進出は果たしたものの、初戦敗退。王者不在となったトーナメントに残ったのは、「田中の家」(CLARK NEXT)、「XxかれはちるどれんxX」(ルネサンス大阪)、「県岐商eスポーツ部」(岐阜商業)、「だいやもんどはくだけない」(CLARK NEXT)の4チームです。

CLARK NEXTからは2チームが残っており、「田中の家」は「N1」を、「だいやもんどはくだけない」は「岡山共生eスポーツ部A」という強豪チームを撃破しての準決勝進出。しかし、CLARK NEXTはどちらのチームも準決勝で敗退します。

優勝したのは「XxかれはちるどれんxX」。Karaage選手の強さが飛び抜けていましたが、ワンマンチームではなく、チーム力の高さが光っており、準決勝の「田中の家」戦では30分未満で、決勝の「県岐商eスポーツ部」戦では20分ちょっとで試合を終了させています。

大会の地方予選ではたまに見るタイムですが、さすがに全国大会の決勝で見られるようなタイムではなく、もちろん「県岐商eスポーツ部」は決勝にあがるだけの実力をもっているので、いかに「XxかれはちるどれんxX」がダントツのチーム力を持っていたかがわかります。

また、話題となったのが、ベスト4に女子プレイヤーが2人も残っており、直接対決があったこと。「県岐商eスポーツ部」のyuyuxu選手と、「だいやもんどはくだけない」のわにゃにゃ選手です。

老若男女、障害の有無を問わず同じ舞台で戦えるのがeスポーツですが、それでも女子プレイヤーは数が少ないのが現状。今回の2人の活躍が、女子プレイヤーの参加をより促すのではないかと期待しています。

  • N高の強さが目立った『LoL』でしたが、今年はベスト8止まり。全日制高校が全国大会出場チームの半分以上を占めているのも新たな潮流といえます

  • 優勝した「XxかれはちるどれんxX」

  • 「だいやもんどはくだけない」のわにゃにゃ選手

  • 「県岐商eスポーツ部」のyuyuxu選手

最後は『VALORANT』。5対5のチーム戦で行われ、拠点を防衛する側と攻撃する側に分かれて銃撃戦を行うタクティカルFPS。攻守ともに相手を全滅させるか、攻撃側は爆弾を仕掛け爆発させれば勝利。守備側は爆弾の爆発を阻止し、制限時間いっぱいまで守り切れば勝利となります。

13ラウンド先取したチームの勝利で、ラウンド数が13を超えると攻守が入れ替わります。12ラウンドずつ取り合った場合は延長戦であるオーバータイムに突入し、勝利数が2ラウンドの差がついた時点で決着。銃撃戦によるエイム力だけでなく、拠点攻略、防衛の戦略、特殊能力であるアビリティの使いどころ、前ラウンドによって稼いだ資金を次のラウンドでの武装にどれだけつぎ込むかなど、さまざまな要素が、勝敗に大きく左右するゲームです。

ベスト4まで進出したのは、「chloroplast」(クラーク記念国際)、「Queimar」(ルネサンス池袋)、「イナザワイレブン」(ルネサンス大阪)、「menrk」(N高)の4校。ルネサンス系が2校勝ち残っています。

準決勝第1試合の「Queimar」対「chloroplast」で、選ばれたマップはヘイブン。終盤まで一進一退のシーソーゲームが続き、フルラウンドの結果、「Queimar」が勝利しました。

もう1つの準決勝である「menrk」対「イナザワイレブン」もヘイブンが選択されます。「イナザワイレブン」は『VALORANT』の世界大会で唯一使用されなかったエージェントである「ヨル」をピックし、会場を沸かせました。試合は、序盤から「menrk」が勝ちを重ね、9対4で折り返します。攻守入れ替わってからもその勢いは止まらず、13対6で「menrk」が勝利しました。

決勝は、マップのBANPICによりロータスが選ばれました。ロータスは攻撃側が有利と言われており、先に攻撃側となった「menrk」が勝利を重ねていきます。

攻守チェンジとなる13ラウンド時点では8対5と「menrk」がリード。しかし、攻撃側となった「Queimar」が逆襲に転じます。一気に9対9のイーブンに追いつくと、そこから3連勝し、マッチポイントを迎えます。

このまま「Queimar」が勝ち切るかと思いきや、「menrk」も簡単にはやられません。3ラウンド連取すると、12対12になりオーバータイムに突入します。ですが、追い上げもここまで。最後は2連勝で「Queimar」が勝利しました。

  • ルンサンス3チーム、クラーク記念国際2チームが全国大会に進出した『VALORANT』

  • 最後に選ばれたマップは、難しいとされる「ロータス」でした

  • 優勝した「Queimar」

高校でeスポーツをすることが当たり前の時代の到来か

久々の有観客オフライン開催となった「STAGE:0」。選手の家族や友人、講師や教師などが応援に駆けつけており、大きな声援の中でのプレイは、選手も応援側もどちらも素晴らしい機会になったことでしょう。

今回、会場となった「RED° TOKYO TOWER」は、3~5階で展開している施設です。「STAGE:0」は5階を使って開催しており、3、4階は通常営業でしたが、入場者はすべてのフロアを利用できるので、3、4階利用の来場者が「STAGE:0」を観に来ることも。eスポーツや「STAGE:0」を知らない人へのいいアピールになっていました。

試合終了後は、実況・解説陣がスタンドバーを訪れ、選手や観客と交流していました。これもオフラインならではの光景であり、選手にとっては良い思い出となったことでしょう。

  • 選手にサインをするRAD選手

  • 選手と談笑をするeyesさんとRevolさん

今大会を通じて感じたのは、N高1強時代の終焉です。昨年までは4部門中3部門はN高が優勝するような状況でしたが、今年は『OW2』の1タイトルのみ。ルネサンスやクラーク記念国際など、N高以外の通信制高校の躍進が見られました。

今後は、これらの高校が群雄割拠する時代に突入しそうな気配です。設備や指導者などの環境から通信制高校が有利になりがちなeスポーツ部ですが、今大会では全日制の高校の活躍も目に付きました。

『クラロワ』部門で優勝した日大習志野を筆頭に、ベスト8の7校が全日制高校。さらに設備や指導者の面で厳しいとされる公立高校からも全国大会へ進出しています。『フォートナイト』部門で優勝した江別、『クラロワ』部門の刈谷工科、北広島、仁賀保、『OW2』部門の兵庫工業、沼津城北、高崎工業、『LoL』の八女工業、岐阜商業の9校です。

これも「STAGE:0」が今年で5回目を数え、高校生が目指す場として定着したことにより、一部の高校のみが参加できるという状態から、誰でも参加しやすい状態に変わってきたという証でもあるでしょう。特に学校内の環境面、家庭の理解度は初めて大会を開いた時に比べ、大きく改善されたのではないでしょうか。

多くの高校が「STAGE:0」に参加する環境が整いつつあり、今後は高校でeスポーツをやること、ゲームをプレイすることがより当たり前になっていく時代に突入したと感じた大会でした。