パソコンベンダー各社による夏休みの親子パソコン組み立て教室は、もはや夏の風物詩のひとつになったといってもいい。

ベンダーごとにちょっとづつそのイベントの位置づけは異なるが、完成品で手に入れるしかないノートパソコンを、自分の手で組み上げることができる場の提供という点では共通だ。そして、組み上げたノートパソコンを持ち帰れる。

ここで得られるのは自分のパソコンを自分でフィニッシュするという経験だ。そして、結果として、市販のパソコンを買うよりもかなり安い価格で同スペックの製品を手にすることができる。たいていの場合、子どもよりも親の方が興奮して応募、そして参加し、子どもは冷静だったりもする……。

  • ル「親子パソコン組み立て教室」の様子。まさに手取り足取りでテーブルトレーナーの指導にしたがって組み立てに挑む

    デル「親子パソコン組み立て教室」の様子。まさに手取り足取りのテーブルトレーナーの指導にしたがって組み立てに挑む

2025年もいくつかのメーカーが組み立て教室を開催した。どこも盛況で、参加するには高い競争率をくぐり抜けて抽選に当選しなければならない。

ある日、この組み立て教室に参加するインターン学生を募集している企業を見つけた。デル・テクノロジーズだ。マイナビ2027のサイトで見つけたのだが、「世界トップシェア製品を有する総合ITソリューション企業 1~2Daysプログラム」の一環としてエントリーが受付けられていた。

場所は宮崎氏内にある同社のカスタマーサポートセンターだ。ここで親子パソコン組み立て教室に参加し、デルの社員とインターンプログラムの大学生が、テーブルトレーナーとして参加者のPC組み立てをサポートするとある。

宮崎に飛んでその現場を見てきた。

インターン大学生も仕事現場でPC組み立てにチャレンジ

  • 宮崎駅から徒歩約10分。繁華街のすぐそばにある元百貨店ビルの上層階にオフィスがある

デルが組立教室を実施するのは今年で13回目だ。今年は40組の親子が応募し、抽選の結果8組の親子が参加の栄冠を勝ちとった。

会場には、なぜか、10組の席が用意されていた。追加で大学生だけの2チームが組み立て教室に参加していたのだ。インターンプログラムの大学生が、テーブルトレーナーとして参加者のPC組み立てをサポートするはずだったが、ちょっとカリキュラムを変更したらしい。

毎回、一組や二組は完成後のパソコンが起動しないという憂き目を味わう親子が必ずいるそうだが、今年は、そのインターンチームを含めて全組が見事一発で組み上がったパソコンを起動させることができ、WindowsのOOBE(Out of Box Experience)をスタートさせた。世界トップレベルとも言われるカスタマー・センターのメンバーがトレーナーとして手取り足取り指導した結果であり、面目躍如の活躍だ。

「ホスピタリティ」で20年目を迎えるデル宮崎カスタマーセンター

インターンの学生が見たいと思い、そして、そのための場を提供するデルのカスタマーセンターとはいったいどんなところなのだろう。

宮崎カスタマーセンターは宮崎市内の中心に位置している。宮崎駅からは徒歩約5分ほどの距離にあるビルは元百貨店のビルだった。現在も商業施設が階下にあり、その上層階の2フロアがセンターとして、毎日300名ほどの社員が出社し、カスタマーからのコールを受ける。

センター長は林田匡史氏で、熊本県出身の同氏が2005年設立から20年目を迎えるこのセンターを任されている。ここは個人と法人向けのサポート部門と営業部門を擁し、正社員によるカスタマーサポート業務を担っている。

  • デル・テクノロジーズ 宮崎カスタマーセンターセンター長 林田匡史氏

デルが宮崎にサポートセンターを置いたのは、自治体の協力が得られることと、市街地の中心に大型のオフィスを確保できること、そして、同地域ではホスピタリティ溢れる人材をサポートできるといった理由からだ。

当初は宮崎市、宮崎県ともに積極的に県外の企業を誘致していたそうだ。あの東国原英夫氏が宮崎県知事として同県を率いていたころだ。

生成AI活用と人材投資、顧客満足度を上げる“おみやげ”文化も

デルのテクニカルサポートは、生成AIなども積極的に取り入れているが、サポート品質を向上するために大きく2つの特徴がある。

ひとつは正社員雇用にこだわり、人への投資を怠らないことだ。スキルアップ、キャリアアップ、ワークライフバランスなどを考慮し、数々の制度や評価が提供されている。ここではたらい回しのイメージがなく、エンジニアがすべてのテクニカルサポートを行う。契約社員や派遣社員では先方の組織にゆだねる部分が出てきて、同社が考える理想の方針を貫けないからというのが理由だ。

もうひとつは詳細な数値目標を掲げた成果主義を貫いている点だ。顧客満足度を重視し、それが90%以上になることを目標とする。ボランティアやCSR活動にも熱心で、親子パソコン教室もその一環だ。

  • 各席に貼られているコミットメント。信頼を失うのは一瞬、取り戻すのは一生

かつては電話での問い合わせがほとんどだったが、今は、問い合わせの手段が分散するようになっている。以前に比べればコール数が増えているわけでもなく、そのうちコールセンターとは呼ばなくなるかもしれないとも。

ここではサポート対象となるカスタマーにおみやげを渡すのが常だともいう。問題を解決するだけではなく、その先のことを提案し、未然にトラブルを回避する。これがこのセンターがカスタマーに提供するおみやげだ。そして、そのおみやげが、通常以上の顧客満足度を弾き出す。インターン学生には、ぜひ、そういった工夫に気付いてほしいものだ。