日本マイクロソフトが、AIに関するメディアラウンドテーブルを開催、米マイクロソフトコーポレーションエグゼクティブ バイスプレジデント沼本健氏(コマーシャル チーフ マーケティングオフィサー)が来日し、その最新状況を解説した。
沼本氏は、かつてOffice製品のマーケティングなどを担当していたが、肩書きを見ればわかるように、現在はマーケティング部門のトップとして、同社ワールドワイドのクラウド、そしてAI戦略など、多岐にわたって同社のビジネスマーケティングに関わる立場だ。
これからのUIは人と生成AIの対話になる
沼本氏は、80年代のPC登場、90年代のWeb、そして2000年代のモバイルといったエポックメイキングな出来事をあげながら、今のAIは、それらに近いもの、つまり、ザ・ネクスト・プラットフォーム・シフトであると位置づける。そして、ナチュラルユーザーインターフェースが、データと人間が対話するインターフェースとして有効に活用されていくと断言する。
いわゆる大規模言語モデル(LLM)を使った生成AIが、デジタル化された場所、モノ、ヒト、コトなどを分析して推論し、人間との対話の中で問題の解決がなされていく。それがプラットフォームとしてのAIだ。
全製品に横断的にAIを導入していくのがMicrosoftのCopilot戦略だが、そこには3本の柱があると沼本氏はいう。
Wordの企画書から簡単にパワポを生成できる未来
- Copilotを使って生産性をアンロック、限界を超えること
- 顧客が顧客自身のAI活用術を構築すること
- 顧客のビジネスとデータに関するセーフガードを提供し、安全を担保すること
かなり抽象的だが、Microsoft Copilotの活用例として、WordやExcel、PowerPointといったアプリを自然言語を使って手持ちのデータにかけあわせることで、優れた生成物を手に入れるというシンプルな方法論だ。
Wordの企画書を簡単にパワポでプレゼンテーション生成できるなど、誰もがパワーユーザーになれる方向性をめざし、すぐに、コンテンツ作成からコラボレーションにも使われるようにもなる。
沼本氏自身も会議の要約をAIに頼るようになり、これこそはゲームチェンジャーだと確信したという。スケジュールの都合で、会議に遅れて参加するようなことになっても、何がなぜ決定されたのか、誰が何を言ったのかなどを、会議のスタート時から傍聴していたAIがすべてを要約して伝えてくれる。
沼本氏から、このあたりまでかみくだいた説明を受けて腑に落ちた。AIの活用というのは、優秀な部下をうまく使うことに近いのではないか。自分だけではできることは限られる。だからこそ優れた部下に依存する。最終判断だけを自分の責任でくだせばいい。
生成AIを使うかどうか、最後に決めるのはユーザー自身
もっとも、同氏は、AIの前にクラウドを検討してほしいと、DXの進まない日本の状況を皮肉る。というのも、日本はAIに関してきわめて前向きで、そこに驚いているからなのだそうだ。生成AIについても、日本だったらもっと保守的だろうという先入観をもっていたそうだが、実際にはものすごく前のめりな感触があり、それは、きっとクラウド導入のきっかけにもなるにちがいないと期待する。
そもそも、なぜCopilotなのか。Copilotは、Microsoftが現在掲げているAI戦略の象徴ともいえるブランドだ。それがPilotではなく、Copilotで頭に「Co」がつく。一般に「Co」は、「共に」を意味する接頭辞だが、Pilotに対してCopilotは副操縦士と訳される。つまり、機長ではないということだ。
Microsoftは、Copilotの産んだ成果を使ったことに対する訴訟リスクなどは保証するが、最終的にCopilotによる成果を使うかどうかを決めるのはあくまでも顧客自身だという。雇用した従業員同様に、部下の成果を判断し、自分の手柄にするのが上司の仕事だということだ。そこのところを勘違いしていると痛い目に遭う。AI利用には、そういう覚悟も求められる。