激動というか微動というか、コロナ禍に見舞われた2020年をひと言で語るのはまだ難しい。活動が抑制された点では微動だが、そのこと自体が激動だった。これからどんな世の中になっていくのか、どうするのがいいのかはまだまだ謎に包まれている。こういう時期だからこそ、いろんなことを考えなければならない。
IDCの2021年予測は「デジタルガバメント」の進展
そんな中で、調査会社のIDCはコロナ感染拡大に大きく影響を受けた国内のIT市場を分析し、国内企業の業績悪化に伴うIT支出の減少というネガティブな面と同時に、デジタルトランスフォーメーションを加速させるというポジティブな面があることを指摘する。そして、同社は数年後に訪れるニューノーマルの次にくる「ネクストノーマル」の時代を予測する。その上で2021年に起こるであろうイベント10項目を発表した。
同社が挙げた10項目のうちのひとつは
「デジタルガバメント:国内のデジタルガバメントの進展によって、官民連携のデータ流通が加速しFuture of Industry Ecosystemsが形成される」
というものだ。だが、本当に国内のデジタルガバメントは進展するのだろうか。
デジタル庁(仮称)で人材公募がスタート
2021年9月を目指すデジタル庁創設に先駆けて、政府の民間人材公募が開始される。週3・非常勤職員としての採用で、情報発信基盤構築、ガバメントクラウド、ベースレジストリ、民間人材リクルーティング、ネットワーク一元化、新システム企画構想といったカテゴリでの公募が公表された。2021年1月4日から3週間をかけて公募、4月に正式採用となるそうだ。内定者に対しては、デジタル改革担当平井卓也大臣と直接の交流の場を設定する予定だともいう。
たとえばガバメントクラウドのカテゴリでは、政府情報システムのクラウド化に向けたデジタルインフラの構築業務として4名程度が採用予定となっている。必須条件や歓迎条件が掲げられているが、これらの募集要項を読むと、公募する側のリテラシーが実にしっかりしていることが伝わってくる。逆の言い方をすれば、こんな条件に合致する人材はなかなかいないだろうとも思う。
ちなみに任期は令和3年12月31日までの間とされ、組織再編等によって任期中に契約変更の可能性があるという。ここだけを深読みすると9カ月のために、優秀な人材が集まるかどうかも不安になる。
給与等については、「職務経験や職務内容等を勘案し、常勤職員との権衝を考慮して決定。※賞与・昇給はありません」とされている。いわゆる非正規雇用とどう違うのだろうかという疑問も残る。本当に優秀な人材には常勤職員の10倍の給与を払ってでも、しっかりとした仕事をしてもらえるように国家のカネを使って欲しい。
なんとなくプロフェッショナルのアウトソーシングで、用が済んだらおしまいという印象がないでもない。それをわかっていてなのか、テレワークや兼業も認められる方向で調整中だそうだ。
コロナによって変わった世界、2021年も続く
コロナ禍は、今の日本という国家のデジタル度がいかにお粗末なものなのかをあぶりだしたともいえる。AIに読ませた方がまだわかりやすいのではないかとも思われるような総理会見などを目の当たりにすると、本当に、この国はデジタルガバメントとしてトランスフォーメーションできるのかどうか不安にもなる。
コロナによって変わった世界は、もう元に戻らないというムードは強い。その理由の最たるものは、管理する側にとってその方が都合がいいことが明確になった点だ。そういう意味ではデジタルガバメントは、国民ファーストであるかのように見えて、実際には政府のためのものであるのかもしれない。そんな側面もあるということを念頭におきながら、推移を注意深く見守る必要がある。
というわけで2020年も残りわずかとなった。このコラムの今年のご愛読に感謝するとともに、2021年がよい年でありますように。毎年末のありきたりな決まり文句だが、今年は特に切実にそう思う。