アレイ・ネットワークスの提供する「Array APVシリーズ」は、クラウドや通信事業者、データセンターなど、スケーラビリティが求められるネットワークの要件に対応したセキュリティ機能と性能を誇るアプリケーション・デリバリ・コントローラ(ADC)だ。さらに、今年末にもリリースされる新OSでは新たにSOAP APIをサポートし、より柔軟でコストパフォーマンスに優れたクラウド基盤が運用できるようになる。

アプリケーションの高速化を実現するArray APV

高可用性を誇る「Array APVシリーズ」のラインナップ

アレイ・ネットワークスのArray APVシリーズは、パフォーマンスを損なうことなくセキュリティを担保することができる点が最も大きな特徴である。それを実現するテクノロジーの一つが、Array Networksのコア技術である「SpeedCore」だ。

SpeedCoreは、シングルCPUの時代には「SpeedStack」と呼ばれていた独自のアーキテクチャである。通常、ネットワーク経由で受信したパケットはネットワークインターフェイス(NIC)からOS、OSからアプリケーションへと渡され、必要な処理を施された上で、今度は反対にアプリケーションからOS、OSからNICへと渡される。そして再びネットワークへと送信されていく。SpeedStackでは、こうしたパケットに対する一連の処理をすべて一カ所のプロセシングエンジンから実行することができる。そのため、パケットデータのハンドリングに要する時間(各モジュール間の移動やバス上でのボトルネック、モジュール上での処理同期などによって引き起こされる遅延)も大幅に削減でき、処理スピードを上げることが可能になる。SpeedCoreはこのSpeedStackの働きをマルチCPUの環境でも同じように実現する技術だ。

また、地理的に離れた複数拠点間のロードバランスを実現するグローバルサーバ負荷分散(GSLB)機能は、一つの拠点に障害が起こった場合でも他の拠点でカバーするディザスタリカバリ(DR)対策としても有効だ。また、複数のWANリンクに接続されている構成では、各トラフィックをそれぞれにとって最適な経路に振り分けるリンク負荷分散(LLB)機能によって、アクセスレスポンスの向上も期待できる。こういった機能も、システムの効率性や可用性の向上に繋がる。

このように1台にさまざまな機能と高い性能を備えるArray APVシリーズは、エントリーモデルの「Array APV1600」から、最上位の「Array APV10650」まで、処理能力の異なる8モデルを展開している。さらに、Array APVシリーズに搭載された豊富な機能を仮想アプライアンスとして提供する仮想ADCの「vAPV」もラインナップし、最新OSではVMware、Hyper-V、KVM、XenServerの4種類のハイパーバイザーをサポートする。

Array APVシリーズのラインナップ

さらに、「Array APV2600」相当のAPVインスタンスを8台搭載したマルチテナントADC「Array AVX10650」も今年末にリリースする予定だと、アレイ・ネットワークス代表取締役の岡本恭一氏は語る。

「イメージとしては8台のAPVを1台のハードウェアに載せたような機械です。仮想化のデメリットは、ハードウェアのリソースがすべてサーバに依存してしまう点にあります。SSLの処理には、まだまだ現在のCPUの性能では能力が足りません。そこでArray AVX10650は、SSLの処理に専用のハードウェアを使うことで処理スピードの高速化を実現します」

Array AVX10650

新OSでOpenStackをサポート、より柔軟な運用が可能に

アレイ・ネットワークス 代表取締役 岡本恭一氏

アレイ・ネットワークスでは、Array APVシリーズに搭載されているOSを機能強化し、今年末にもリリースする計画だという。新OS「8.5.1」で特に注目すべきは、OpenStack HavanaのSOAP APIへの対応だ。これにより、マルチテナント型のクラウド基盤をより柔軟に構築・運用することが可能になる。例えばArray APVシリーズをデータセンターに複数台導入しているクラウド事業者は、ネットワークをサービスとして提供する際に、OpenStackの管理インターフェースからADCを制御することが可能になる。

「以前から、XML-RPCのプロトコルを使った外部からの制御には対応していましたが、SOAP APIを使うことでロードバランサそのもののダイナミックな追加や削除を行うことが可能になります。SOAP APIへの対応は既存のユーザさまからの要望が多く、そういったニーズの高まりに応える形でエンハンスを行いました」(岡本氏)

Array APVシリーズのOSのアップグレード費用は保守料金に含まれているという。アレイ・ネットワークスでは、新OSの提供によってSaaSあるいはIaaS分野でのArray APVシリーズの導入、利用をさらに推進していきたい考えだ。

「Array APVシリーズはSaaS/IaaS事業者のニーズに合致した特性を持ったソリューションです。SaaSでは数万~百万規模のユーザへのサポートが必要になることもあり、社内で利用される業務システム以上にスケーラビリティとシステムの柔軟性が求められます。弊社のADCは、コスト効果にも優れたスケーラブルなセキュリティ機能を提供します」(岡本氏)

また、IaaS環境におけるLBaaS(Load Balancing as a Service)としても、Array APVシリーズはコストを抑えながら豊富なセキュリティ機能とパフォーマンスを提供するという。

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次回の連載第3回目では、導入事例を中心にArray APVシリーズの効果的な活用方法について紹介する。