現在のアンドロイドの最新版は「KitKat」で、最新バージョンは今月配布が開始された4.4.3です。すでに次の「L」となるLollipopが開発中で、Google I/O(6月25日から)あたりで発表されるというウワサです。

Nexusシリーズなどに配布が開始されたAndroid 4.4.3

その直前に配布された4.4.3は、KTU84MとKTU84Lの2つ。KTU84Mは、Nexus 5用です。バージョン表記の文字列では「android-4.4.3_r1.1」となっています。

これに対してKTU84Lは、2013年版Nexus 7 Wi-Fi版(コードネームはflo)と2012年版Nexus 7(grouper、tilapia)、Nexus 4(mako)、Nexus 10(manta)用となっています。こちらのバージョン表記文字は「android-4.4.3_r1」となっており、Nexus 5用とは若干違っています。このバージョンを信じるなら、KTU84LとKTU84Mの間には、アンドロイドとしてなんらかの違い(プラットフォームの違いとは別に)があると考えられます。

また、なぜかNexus 7(2013)の4G版であるdeb用の配布は開始されていません。無線部分などに改良があるのか、あるいはさらに改良点があるのかは不明ですが、配布が行われないということはなく、作業が遅れているだけとみるべきでしょう。

以前、ビルド番号の記事で解説したようにビルド番号の3文字目のアルファベットと次の2桁の数字で、ビルドした日付を表現しています。Uは、「2014年1月1日」に相当し、84は、その84日後、つまり2014年3月26日を意味します。しかし、今は6月、かなり時期が離れています。この1つ前のビルドは、KOT49E/Hで、ビルドの日付は2013年11月19日で、配布のその月のうちに開始されています。

そう考えると今回のKTU84L、KTU84Mは、ビルドの日付とリリース開始の間が開きすぎています。しかも、前回の4.4.2 rev.1(KOT49)から半年近く経過しています。ビルドからリリースの間に何らかの大きな変更があれば、ビルド番号自体が変わっているはずです。ビルド番号自体は、ルールに従って自由に付けられるものなので、コードが大きく変更されれば、ビルド番号は変更されるはずです。ところがビルド番号が変わらないというのは、大きな変更はなかったということなのでしょう。

これはコードには手を付けずに何かを待っていたのではないかと想像されます。何かが社内で決定されるのを待っていたのか、社外のイベントなのかは不明ですが、コードの状態をそのままにしてリリースを控えていた状態が続いたと考えられます。なにか大きな変更を入れるべきかどうかを議論していたのかもしれないし、何らかのテストの結果を待っていたのかもしれません。

こうしたリリースは、事前に一部のベータテスターやメーカーなどに配布されることがあります。そもそもKTU84の情報は今年3月ぐらいには、インターネットに出ていました。このときのウワサでは、4.4.3では、ナビゲーションボタンなど比較的大きな変更が入るとされていました。ですが、結局、今回、見た目の変更があまりなく、バグFixが中心になったのは、こうした検討期間の上、新規の機能に関しては、Lollipopなどの次バージョン以降に先送りになったのだと考えられます。コード的には変わってないが、初期設定値が変わり、新機能は無効化されているのかもしれません。こうしたパラメーターの違いだけなので、ビルド番号が変更されていないのでしょう。

Android 4.4.3の目に見える改良点はわずかで、多くの部分は、いわゆるバグFixだと思われます。それにも関わらずバージョンアップが行われたのは、4.5など、この次に出るメジャーバージョンアップの前に、KitKatとして必要な修正を入れておきたかったからだと思われます。

Nexusシリーズは、こうして常に最新のバージョンが登場しますが、キャリア経由で販売されるアンドロイド機の中には、バージョンアップが周回遅れになるものも少なくありません。

Googleが発表しているアンドロイドのバージョンの構成比によれば、世界中の大半のアンドロイド機はJelly Bean(4.1.x~4.2.x)で、58.4パーセントを占めています。これに対してKitKatはまだ13.6パーセントでしかありません。

ですが、最近登場したモデル、たとえば、ドコモの夏モデルなどは、ほとんどがKitKat(Android 4.4)となっていますから、本格的な普及というのはこれからだともいえます。

ただ、Google的には、Nexusシリーズは、次のバージョンLollipopができたら、バージョンアップさせることになるため、KitKatの4.4.3は、ほぼ最終に近いバージョンなのだと考えられます。

電話アプリと住所録アプリが変わった

このKitKatの4.4.3、目に見えて違いのある点としては、電話アプリと連絡帳があります。基本的に色使いがカラフルになり、写真やアイコンが表示されない場合のイメージがカラーになりました。

機能的には違いはないようですが、4.4.2がモノクロ的な印象なのに比べると、明るい感じになっています。4.4.2では、住所録データに付けた画像が目立つように、アプリ自体の色を制限した感じですが、画像のついた登録項目が少ないと、全体がグレーな感じになってしまいます。4.4.3では、画像を付けていないときのイメージがカラーになり、アプリ自体は白を基調にしたものになったため、住所録に変化がなくてもカラフルな感じになります。

また、着信履歴などのユーザーインターフェースがちょっと変更になっています。4.4.2では、電話アイコンをタップしたときだけ発信/リダイアルとなり、それ以外の部分をタップしたときには着信時間などの詳細情報が出ていました。しかし、4.4.3ではこれが逆になって、右端の時計アイコンのタップで詳細情報が出て、それ以外の部分では、発信やリダイアルになります。こうした履歴では、着信時間などを調べることよりも、発信することのほうが多く、時計アイコン以外を押せばいいので、押す場所をあまり気にしなくてよくなりました。たしかに、4.4.2では、発信しようとして、詳細情報を出してしまうことがありました。この点は、細かいですがわずかに使い勝手が上がっています。

電話アプリを起動するとお気に入りとして登録した項目が表示されるが、4.4.3では、項目も色分けされて表示される

ダイヤルパッドのデザインも変わり、白地に青と明るい感じになった

履歴もデザインが変わり、4.4.2では電話アイコンのタップで発信、それ以外で詳細情報(着信時間など)の表示だったが、4.4.3では、時計アイコンのタップで詳細情報となり、それ以外の部分では発信となった

「連絡先」も4.4.3では標準の画像がカラーとなったため、見た目がカラフルになっている

本稿は、2014年6月16日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。