近年、自動運転車の開発が急速に進んでいます。自動運転車とは、人間がハンドルを握って運転しなくても道路を走行できる車両のことであり、「ロボットカー」などとも呼ばれています。
自動運転車が最初に製造されたのは1980年代です。それ以来、ゼネラルモーターズ、ボッシュ、日産、アウディ、ボルボ、グーグル、オックスフォード大学などの大手企業や研究機関が自動運転車のプロトタイプの開発を始めています。最近の車種には、車線を維持し、速度を自動的に調節して適切な車間距離を保つことができるクルーズコントロールと呼ばれる装置が搭載されるようになりました。
長い歴史を持つ自動運転車ですが、まだその技術は一般的ではありません。しかし数年後には、路上で完全な自動運転車を見かけるようになることでしょう。今回は、そんな自動運転車で活用されているAI技術について解説します。
自動運転AIのメリット
自動運転車に搭載されたソフトウェアは、運転者にさまざまなメリットをもたらします。
A地点からB地点に早くかつ安全に移動できるだけでなく、自動運転車の最適化アルゴリズムによって、可能な限り燃費効率を向上させることができます。2050年までに自動運転車は乗用車で44%、トラックで18%の燃料消費量を削減できるでしょう。
さらに、自動運転車は運転者の不注意や飲酒運転による事故を減らすことができます。道路の渋滞の25%は事故が原因なので、自動運転車は渋滞の緩和にも役立つでしょう。
また間接的なメリットとしては、健康の改善に役立つことが挙げられます。交通渋滞によって血圧の上昇、不安、うつ病、心血管の状態の悪化、睡眠の質の低下が引き起こされることが医学的研究で証明されています。
自動運転AIの学習データ
さて、自動運転車が安全に運転できるようになるには、さまざまな機械学習プロセスで精度を向上させる必要があります。複数のステップを含むAIシステムのおかげで、自動運転車はリアルタイムで画像・動画データを処理し、道路上の他の車両と安全な関係を保って走行できるのです。
私たち人間は運転中、他の車両や歩行者、木、道路標識などの物体を容易に認識できます。しかし、自動運転車を制御するアルゴリズムは、アノテーション(メタデータ)を付与した大量の画像・動画の学習データで学習させなければなりません。その学習データの一例を紹介します。
物体分類
物体分類は、機械学習モデルに画像のコンテンツを理解させるための最初のステップです。物体分類の一例としては、一連の画像を見て「車両を含む」ものと「車両を含まない」ものに分類するタスクがあります。自動運転車用の物体分類アルゴリズムを改良するためには、グラウンドトゥルースとして機能する大規模なアノテーション付き学習データセットが必要になります。
位置特定
位置特定とは、画像内にある物体の位置を特定するプロセスのことを指し、一般的に、バウンディングボックスを使用して行われます。バウンディングボックスのアノテーションでは、人間のアノテーターが画像内の特定の物体(車両、歩行者、自転車など)の周りを長方形のボックスで囲むタスクを行います。バウンディングボックスは通常、中心座標(x座標、y座標)、ボックスの高さ(bh)、ボックスの幅(bw)で表現されます。