半導体株安の3ヵ月でオルカンを2ケタ上回った9本の素顔
1位 グローバル全生物ゲノム株式ファンド(年2回決算型)
米アーク・インベストメント・マネジメントの調査を活用し、ゲノム技術関連企業に投資するファンドです。組入上位は10Xジェノミクス、ツイスト・バイオサイエンス、テンパスAI、イルミナ、ナテラなど(※)で、ゲノム編集・診断関連が全体の8割弱で、中小型株が中心のポートフォリオです。1年標準偏差(ファンドの値動きの大きさを示す指標。一般に数値が大きいほど値動きも大きく、リスクが高いことを示す)は40.17%とオルカンの2.6倍で、3ヵ月・1年リターンは9本中トップですが値動きの荒さも際立ちます。約6年の運用でファンドの運用開始から基準時点までの値上がり・値下がりを累積した収益率である、設定来リターン(累積)は11.28%にとどまっています。
2位 eMAXIS Neo コミュニケーションDX
企業向けコラボレーションソフト関連企業に投資するインデックスファンドです。組入上位はドロップボックス、ボックス、シスコシステムズ、サービスナウ、マンデー・ドットコム(イスラエル)など(※)で、ソフトウェア・サービスが70.8%です。標準偏差33.56%はオルカンの2.2倍に対し、運用効率を示すシャープレシオ(リスクに対してどれだけ効率よくリターンを得られたかを示す指標。一般に数値が高いほど運用効率がよい)1.36はオルカン(2.11)を下回っています。3年リターンでもオルカンに劣後しています。
3位 eMAXIS Neo 遺伝子工学
遺伝子組み換え・ゲノム編集関連企業に投資するインデックスファンドです。組入上位はゼンコア、ツイスト・バイオサイエンス、ユニキュア、マラバイ・ライフサイエンシズ、バイオ・テクネなど(※)で、医薬品・バイオテクノ・ライフが93.6%です。標準偏差32.37%はオルカンの2.1倍ですが、シャープレシオ2.65はオルカンを上回り、リターンの高さがリスクを補っています。ただし、約8年の運用で設定来リターン(累積)は28.63%にとどまっています。
4位 サイバーセキュリティ株式オープン<3ヵ月決算型>(為替ヘッジなし)
サイバーセキュリティ関連企業に投資するファンドです。組入上位はパロアルトネットワークス、クラウドストライク・ホールディングス、クラウドフレア、フォーティネット、ブラックベリーなど(※)で、ソフトウェア・サービスが77.8%です。このファンドは2025年2月設定ですが、同じマザーファンドに投資する サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし)は2017年7月の設定で、運用戦略自体は9年超の実績があります。標準偏差33.77%はオルカンの2倍以上に相当するため、値動きが大きいグループに位置づけられます。
5位 iTrustバイオ
ピクテ・アセット・マネジメントが運用指図を行う、業績が相対的に安定した大手バイオ医薬品企業を中心に投資するファンドです。組入上位はギリアド・サイエンシズ、バーテックス・ファーマシューティカルズ、アムジェン、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、イルミナなど(※)です。標準偏差18.85%はオルカンに近い水準で、シャープレシオ3.43は9本中2位です。
6位 フューチャー・バイオテック
三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用するファンドで、実際の運用は海外の大手運用会社2社に委託する仕組みです。バイオテクノロジー株はベルギー系の大手運用会社カンドリアムが、医療機器関連株は世界最大級の資産運用会社の一つであるフィデリティが、それぞれ運用を担当する海外籍のファンドを通じて投資しています。組入上位はバーテックス・ファーマシューティカルズ、アムジェン、ギリアド・サイエンシズ、レボリューション・メディシンズ、バイオジェンなど(※)で、医薬品・バイオテックが95.2%です。標準偏差20.60%、シャープレシオ2.47と、オルカンに対しリスク・リターンのバランスに優れています。3年リターンではオルカンに及びませんが、バイオテック+医療機器というリスクを分散したポートフォリオによって中長期で安定した実績を上げているファンドといえます。
7位 ブラックロック・ゴールド・ファンド
世界の金鉱株に投資するファンドです。金鉱株は金価格の上昇局面で採掘コストが相対的に低下し利益が拡大しやすいため、金価格そのものよりも値動きが大きくなる傾向があります。組入上位はバリック・マイニング、アグニコ・イーグル・マインズ、ニューモント、アングロゴールド・アシャンティ、ウィートン・プレシャス・メタルズなど(※)で、カナダが65.8%を占め、次に豪州が12.3%となっています。標準偏差49.87%は9本中最大でオルカンの3.3倍に達し、世界株式とは異なる値動きをする分散投資先という位置づけです。長期の運用実績が特徴で、2003年の設定来23年半の累積リターンは+673.39%となっています。
なお、同じ金鉱株ファンドでは、2026年9月8日に届出が行われた「SBIフランクリン・テンプルトン金鉱株式ファンド(愛称:ゴールド・フロンティア)」が、9月24日~10月7日を当初申込期間として、10月8日に新たに設定される予定です。運用実績がまだないため今回の比較対象には含めていませんが、金鉱株ファンドの新たな選択肢の一つとしてラインナップされる見込みです。
8位 グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド
破壊的イノベーション関連企業に投資するファンドです。組入上位はテスラ、テンパスAI、10Xジェノミクス、ショッピファイ、ロビンフッド・マーケッツなど(※)で、ヘルスケア37.6%を中心に幅広く分散しています。標準偏差29.17%はオルカンの1.9倍に対し、シャープレシオ1.37は9本中で低い部類です。ただし、5年強の運用で設定来リターン(累積)は26.63%にとどまっています。
9位 米国株式・研究開発リバランスファンド(愛称:THE R&D)
S&P500の9つの産業グループに絞り込み、企業価値に対するR&D支出の割合が大きい銘柄ほど高いウエイトを与える「U.S. Innovation Index」(野村證券算出)連動を目指すファンドです。四半期ごとのリバランス(資産や銘柄の構成比率を見直し、投資配分を調整すること)では、企業価値に対するR&D支出額の割合をもとに投資比率を見直すため、企業価値の大きいAI・半導体銘柄への配分が相対的に抑えられる傾向があります。
組入上位はワークデイ、HP、テキストロン、スカイワークス・ソリューションズ、モデルナなど(※)で、半導体・半導体製造装置は6.8%にとどまります。2026年6月末時点で組入比率1位(5.5%)だったインテルは、7月の四半期リバランスを経て、7月末には上位20位から姿を消しました。1年リターン(58.08%)は、投資ユニバース(ファンドや指数が投資対象の候補とする銘柄の範囲)であるS&P500指数に連動するインデックスファンド(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、1年リターン30.44%)を27ポイント以上も上回っています。
一方、1年標準偏差は14.91%と、オルカン(15.34%)をも下回っており、リスクを抑えた運用としても知られるオルカンより値動きが穏やかという点が際立ちます。その結果、シャープレシオは3.85と9本中トップとなっています。
なお、連動対象の指数は、運用会社の資料によれば長期でS&P500指数を上回る実績が確認されています。ただし、これはファンド設定前を含む連動を目指す指数の過去の実績であり、将来も同様の成果が得られることを示すものではありません。また、ファンド自体の運用実績ではない点にもご留意ください。
※組入銘柄の情報は2026年7月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
リスクの観点から、9本のファンドを解説
以上の9本を、値動きの振れ幅(標準偏差)とリターン効率(シャープレシオ)の観点で整理すると、大きな特徴が見えてきます。
成長テーマ型(高リスク)が大半
グローバル全生物ゲノム株式ファンド、eMAXIS Neo コミュニケーションDX、eMAXIS Neo 遺伝子工学、サイバーセキュリティ株式オープン、ブラックロック・ゴールド・ファンド、グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの6本は、標準偏差がオルカンの1.9~3.3倍に達しています。直近3ヵ月・1年のリターンは高水準ですが、これは半導体株安という調整局面で、それまで出遅れていたゲノムやソフトウェア、金などのテーマに資金が向かった結果という側面が強く、シャープレシオがオルカンを下回るファンドも含まれます。
残る3本(iTrustバイオ、フューチャー・バイオテック、THE R&D)は対照的に、オルカン並みかそれ以下の値動きでオルカンを上回っており、次のセクションで詳しく見ていきます。
なお、9本のうち4本(グローバル全生物ゲノム株式ファンド、eMAXIS Neo 遺伝子工学、iTrustバイオ、フューチャー・バイオテック)はいずれもヘルスケア関連株を投資対象に含みますが、中小型のベンチャー企業中心か、大手医薬品企業中心かによってリスク水準は異なります。
リスクを抑えつつオルカンを上回った3本の共通点
iTrustバイオ、フューチャー・バイオテック、米国株式・研究開発リバランスファンド(愛称:THE R&D)の3本は、1年標準偏差がオルカンと同水準かそれ以下に収まりつつ、シャープレシオはオルカンを上回っています。
iTrustバイオとフューチャー・バイオテックは業績が相対的に安定した大手バイオ医薬品・医療機器企業を中心とした運用、THE R&Dは値がさ株への集中を避ける指数設計という、それぞれ異なるアプローチによってリスクを抑えている点が共通しています。
ただし3年リターン(年率)で見ると、iTrustバイオ(21.57%)・フューチャー・バイオテック(20.87%)はオルカン(24.29%)に届いておらず、THE R&Dは設定から3年未満のため比較データがありません。直近の値動きの安定感だけでなく、中長期の実績もあわせて確認することが引き続き重要です。 半導体株安という局面でオルカンを上回ったファンドの多くは、値動きの大きさもあわせ持つ成長テーマ型でした。短期的なリターンの高さだけでなく、その裏にある値動きの振れ幅も確認したうえで、ご自身の許容できるリスク水準に見合った選択をすることが重要ではないでしょうか。
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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
