株式会社KADOKAWAと文化庁が主催し、人気イラストレーターのMika Pikazo氏がクリエイティブディレクターを務める展示「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」。

2月13日から3月29日までの期間、ところざわサクラタウンの角川武蔵野ミュージアムで開催される企画展です。今回メディアとインフルエンサー向けの内覧会が実施されたので、マイナビニュースも参加してきました。

  • 「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」。クリエイティブディレクターにMika Pikazo起用、短歌を味わうイラスト展示

    「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」。クリエイティブディレクターにMika Pikazo起用、短歌を味わうイラスト展示

取材協力:KADOKAWA、ピクシブ

文化庁「日本博2.0」委託事業。インバウンド向け政策

本展示のテーマは感情。今回クリエイティブ・ディレクターを務めたMika Pikazo氏がキービジュアルを描き下ろしており、「短歌」と「イラスト」という異なる表現領域を“感情”という軸から捉え直そうと試みるものになっているとのこと。イラストの展示というよりは広いスペースを生かしたインスタレーションとして展開され、壁掛けの絵を眺めるだけにとどまらないさまざまな鑑賞スタイルから、感情について再考することができるようになっています。

展示の内容には一部pixivもかかわっていて、展示に先行して2025年9月から開催されていた『「感情展」×pixiv イラストから詠む短歌コンテスト』の内容が反映されている点もポイント。イラストから短歌を詠んだり、またその逆で短歌からイラストを描くことで相互に表現を行うというもので、これまでにないコラボレーションになったといいます。

ちなみに「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」自体は、文化庁が展開する「日本博 2.0」の令和7年度委託型事業。いわゆるインバウンド向け政策の1つで、文化庁の事業採択実績資料によるとKADOKAWAにはこの施策全体で6千万円が拠出されているようです。イラストレーターの一般的な個展を思えば桁違いの予算をバックに開催されているため、数多くの作家が一堂に会する大規模な展示となっているというわけ。インバウンド向けを掲げているからか、内覧には外国のメディア(インフルエンサー?)も呼ばれているようでした。

たくさん文字を読めて嬉しいイラストレーションの展示

内覧ではクリエイティブディレクターを務めたMika Pikazo氏ご本人による解説を交えつつ、展示を実際に見て回ることができました。はるか昔から感情の発生についての機微を表現してきたフォーマットである短歌と、著名イラストレーターの作品を組み合わせることで、時代を超えて受け継がれる感情の普遍性を探っていくといいます。

やはりMika Pikazo氏のイラストは存在感が強烈。3階に入ってすぐ目の当たりにすることになる超大判のキービジュアルには圧倒されました。すぐ横には多色刷り・光沢加工の特別仕様版複製原画も展示されており、目と鼻の先まで近寄って眺めることもできます。

  • 今展示のために書き下ろされたキービジュアル

    今展示のために書き下ろされたキービジュアル

  • 特色印刷がすごい。筆者はそもそもPC関連の人員なので、先日HPが角川に導入したと聞いたばかりのデジタル印刷ソリューションのことを思い返していました

    特色印刷がすごい。筆者はそもそもPC関連の人員なので、先日HPが角川に導入したと聞いたばかりのデジタル印刷ソリューションのことを思い返していました

怒り、怖れのような二面性を印象的なライティングで表現したエリアや、鏡のようなインスタレーションで来場者と作品の境界を曖昧にしようとする構成を採用。イラスト作品からあえて言葉を乖離させることで、言葉にしにくい作者の感情を浮き彫りにする試みなどさまざまな工夫が凝らされており、大きい会場を優雅に使った展示ということもあって一般的な個展とはかなり別格の体験です。

  • 上空に漢字が舞います

    上空に漢字が舞います

  • 内側から鑑賞するスタイル。作者名やキャプションをあえて除去します

    内側から鑑賞するスタイル。作者名やキャプションをあえて除去します

  • 絵だけをまじまじと眺められます

    絵だけをまじまじと眺められます

  • 鏡のような空間をイメージ

    鏡のような空間をイメージ

筆者は活字の虫なので、イラストもですが展示などを見に行くとキャプションを必死に読みがち。そういう意味では今回の「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」だとイラストに加えて短歌のインスタレーションが充実していたため、とても満足できるものになりました。どんどん読み進めてもいいし、難解なテーマについてぼんやり考えるもよし。鑑賞し終わったころには頭をいい感じの疲労感で満たすことができました。

  • イラストに目が向きがちですが、ぜひ短歌も楽しんでほしいです。高カロリーな読み物にたくさん触れられる貴重な機会になりました

    イラストに目が向きがちですが、ぜひ短歌も楽しんでほしいです。高カロリーな読み物にたくさん触れられる貴重な機会になりました

内容に直接関係ない感想としては、展示のハコ、いわゆる会場の広さが印象に残りました。角川武蔵野ミュージアムの3階フロアほぼ全域を占有しているため、空間の使い方が他ではあまり見られないほど贅沢。百貨店のフロアの片隅で行われるような展示のことを思うと、各区画の仕切りは大胆すぎるほど広く、Mika Pikazo氏が手がけたイラストの迫力はかなりものものです。

逆に、会場の広さに比べればMika Pikazo氏以外のイラストの出力サイズが小さかったというか、扱いに差があるように感じざるを得なかったのが個人的には不満。空間を大胆に用いたインスタレーションもよいですが、広い壁を順当に生かした大きな絵をもっと眺められてもよかったはず。大きな絵があったとしても短歌の展示とのバランス感も問題なく両立できそうですし、絵だけに注目するとメリハリには少し欠けていたかなと思います。

インバウンド向け事業でもあるためか、英語のキャプションが充実していたのは好印象。短歌の翻訳はアイルランド出身で詩・翻訳の領域の文学者でもあるピーター・J・マクミラン氏が手がけており、かなり貴重なものになっています。

  • もちろん鑑賞者によるインタラクティブ要素も。恐れと愛を横軸に取り、明確さを縦軸に取ります

    もちろん鑑賞者によるインタラクティブ要素も。恐れと愛を横軸に取り、明確さを縦軸に取ります

  • 一般客の参加でこのブースもひとつの展示として完成していくことでしょう

    一般客の参加でこのブースもひとつの展示として完成していくことでしょう

インスタレーションの最後でピクシブとの協業要素を発見。昨年9月から実施されていたコンテスト受賞作が掲出されています。お題のイラストはMika Pikazo氏含む4名が手がけて短歌の募集を受け付け、審査には著書『推し短歌入門』などで著名な榊原紘氏も参加しました。

  • ピクシブと連携して実施したコンテストでは応募総数は合計で3,000点を越える大規模なコンテストになりました

    ピクシブと連携して実施したコンテストでは応募総数は合計で3,000点を越える大規模なコンテストになりました

  • せっかくなので受賞作は複製原画を制作してもよかったのでは。豪華な展示を眺めた後だと味気なかったです

    せっかくなので受賞作は複製原画を制作してもよかったのでは。豪華な展示を眺めた後だと味気なかったです

「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」開催概要

  • 展覧会名:「感情展ー短歌で詠み、イラストで描くー」
  • 開催日時:2026年2月13日(金)〜3月29日(日)
  • 開館時間:10:00-18:00(最終入館時間 17:30)
  • 休館日:毎週火曜日
  • 会場:角川武蔵野ミュージアム3階展示室(〒359-0023 埼玉県所沢市東所沢和田3丁目31-3)
  • 当日券:1,800円