SMSでやりとりされる会話はプライベートな内容ゆえ、エンドツーエンド暗号化対応など、よりセキュリティが強固なアプリを使うに越したことはない。特に海外では政府による検閲の恐れもあることから、こうしたアプリのニーズは高い。著名どころとしてはTelegram(テレグラム)やSignal(シグナル)があるが、知名度が高くなりすぎたことでアプリごと規制される事態もたびたび発生している。

今回はiOSおよびAndroidで利用でき、電話番号やメールアドレスの登録を必須としない「知る人ぞ知る」プライベート重視のSMS3つのアプリを紹介する。

性質上、後ろめたい用途に使われると誤解されがちだが、災害などで既存インフラが一時的に利用不可に陥った場合の対策としても役立つだけに、メインで使っているSMSアプリとは別に、いつでも使えるよういまから慣れておいてはいかがだろうか。

SimpleX

SimpleXはユーザ登録不要、起動時に自動発行されるIDを使ってやりとりできるイギリス発のSMSアプリ(iOS版Android版)。

リンクもしくはQRコードを経由して任意の相手とつながる仕組みで、画像やファイルの送信、音声やビデオでの通話はもちろん、グループの作成にも対応するなど、使用感はLINEをはじめとした既存SMSと極めて近い。アプリは「SimpleX Chat」という名前で提供される。

IDは自分でつけることも可能で、属するグループごとに複数のプロフィールを使い分けることも可能。アプリが発行するIDを用いるため他のスマホからログインした場合は別ユーザとみなされるが、ほかのスマホで発行済のIDを移動させる機能も備える。また継続利用を前提に長期的なアドレスを作成することも可能だ。

セキュリティ関連では、期限を区切ってメッセージを自動削除したり、相手の連絡先に登録されないよう指定する機能が用意されるほか、Tor経由での接続もサポートする。利便性とトレードオフになるこれらセキュリティ機能の利用はユーザが任意に選択できるよう設計されているのが、他のアプリと比べた場合の一つの特徴といえそうだ。

  • メインのチャット画面。一般的なSMSアプリそのものだ(左)。いったん会話した相手とはチャットルームが保持される(中央)。一定時間の経過後にメッセージが消える設定が用意されている(右)

    メインのチャット画面。一般的なSMSアプリそのものだ(左)。いったん会話した相手とはチャットルームが保持される(中央)。一定時間の経過後にメッセージが消える設定が用意されている(右)

Session

Sessionは分散型ネットワークを採用したスイス発のSMSアプリ(iOS版Android版)。

登録が必要なのは任意のIDのみで、電話やメールアドレスは不要で利用できる。QRコードを使って任意の相手とつながる仕組みで、画像など任意ファイルの送信機能のほか、音声・ビデオ通話にも対応するなど、使い勝手自体は既存SMSと変わらず馴染みやすい。

最大100人のグループの作成にも対応するほか、コミュニティを検索、参加する機能も備える。他のスマホからログインした場合は別ユーザとみなされるが、66桁のアカウントIDを保存しておくことでほかのスマホでの復元も可能。アプリも日本語化されておりわかりやすい。

もともとは暗号化SMS「Signal」のフォークで、SMSとしての操作性はSignalや前述のSimpleXと酷似しているが、分散型ネットワークを経由しているため送受信にワンテンポ間があり、リアルタイムのやりとりでは分が悪い。またSimpleXのようにランダムなIDを発行する機能はないなど、基本的にユーザが指定したひとつのIDを使い続ける想定で設計されているようだ。

  • メインのチャット画面。こちらもやはり一般的なSMSアプリそのもの(左)。いったん会話した相手とはチャットルームが保持される。参照したグループもここに表示される(中央)。オプションは多彩。アプリは日本語化されているので分かりやすい(右)

    メインのチャット画面。こちらもやはり一般的なSMSアプリそのもの(左)。いったん会話した相手とはチャットルームが保持される。参照したグループもここに表示される(中央)。オプションは多彩。アプリは日本語化されているので分かりやすい(右)

bitchat

bitchatは旧Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシー氏が開発したエンドツーエンド暗号化対応のSMSアプリ(iOS版Android版)。

Bluetooth Low Energy(BLE)で通信を行う仕様で、インターネット接続がなくとも動作するのが最大の特徴。iOS版は「bitchat mesh」という名称で提供される。

デフォルトでは検出済みの近隣の端末が集う「#mesh」というチャットルームにつながり、その後は仲間内で独自のチャットルームを作ったり、検出したユーザに直接メッセージを送ることが可能。スクショを撮ったりお気に入りに追加したりといった相手側の動きを検出して報告する機能を備えており、相手の怪しい動きもすぐ察知できる。

通信可能なのは原則としてメッシュネットワークの範囲内だが、Torを経由してインターネット経由で外部ユーザとつながることも可能。インターネットが規制されている国での利用を想定したアプリだが、災害でネットインフラが停止している場合など、日本で活用できる場も少なからずありそうだ。

  • メッセージの送受信画面はコマンドラインを思わせるデザイン。画像の送受信にも対応する(左)。スクショの撮影やお気に入りへの追加といった相手側の動きも併せて表示される(中央)。近隣でアプリを起動しているユーザをBLE経由で直接検出し通信を行う仕組み(右)

    メッセージの送受信画面はコマンドラインを思わせるデザイン。画像の送受信にも対応する(左)。スクショの撮影やお気に入りへの追加といった相手側の動きも併せて表示される(中央)。近隣でアプリを起動しているユーザをBLE経由で直接検出し通信を行う仕組み(右)