国内では2026年1月30日の午前11時から発売がスタートするAMDの最新CPU「Ryzen 7 9850X3D」。大ヒットCPU「Ryzen 7 9800X3D」からブーストクロックを400MHz向上させた強化版だ。Ryzen 9 9950X3D、Ryzen 7 9800X3D、Core Ultra 9 285Kを交えて、その実力を検証していこう。
Ryzen 7 9800X3Dからブーストクロックを向上
Ryzen 7 9850X3Dは、AMDのZen 5アーキテクチャを採用し、3D V-Cacheを搭載する「X3D」シリーズの最新モデルだ。グローバルでの発売は2026年1月29日でメーカー希望小売価格は499ドル。国内では2026年1月30日の午前11時からの発売、価格は94,800円だ。
改めて「X3D」シリーズについて解説しておこう。大容量3次キャッシュの「3D V-Cache」を搭載したモデルで主にゲームのフレームレート向上に効果が高く、それゆえ2024年11月発売のRyzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)は“ゲーミング最強CPU”として長期の人気となった。そこからコア数を増やし、クリエイティブワークにも強くなった16コア32スレッドのRyzen 9 9950X3Dと12コア24スレッドのRyzen 9 9900X3Dが登場。ラインナップは充実していった。
そこに加わったのが今回テストする「Ryzen 7 9850X3D」だ。8コア16スレッドで3次キャッシュは96MBと基本スペックはRyzen 7 9800X3Dはほとんど同じ。異なるのはブーストクロックで5.2GHzから5.6GHzと400MHz向上している。この“400MHz”がアプリやゲームにおけるパフォーマンスにどこまで影響するのかがポイントだ。
| CPU | Ryzen 9 9850X3D | Ryzen 9 9950X3D | Ryzen 9 9900X3D | Ryzen 7 9800X3D |
|---|---|---|---|---|
| 価格 | 499ドル | 699ドル | 599ドル | 479ドル |
| コア数 | 8 | 16 | 12 | 8 |
| スレッド数 | 16 | 32 | 24 | 16 |
| 定格クロック | 4.7GHz | 4.3GHz | 4.4GHz | 4.7GHz |
| 最大ブーストクロック | 5.6GHz | 5.7GHz | 5.5GHz | 5.2GHz |
| 3次キャッシュ | 96MB | 128MB | 128MB | 96MB |
| 対応メモリ | DDR5-5600 | DDR5-5600 | DDR5-5600 | DDR5-5600 |
| PCI-Express | Gen5 28レーン | Gen5 28レーン | Gen5 28レーン | Gen5 28レーン |
| TDP | 120W | 170W | 120W | 120W |
| 内蔵GPU | Radeon Graphics | Radeon Graphics | Radeon Graphics | Radeon Graphics |
| CPUクーラー | なし | なし | なし | なし |
なお、このクロック向上の実現は2世代3D V-Cacheの構造が大きく影響している。Ryzen 7000シリーズのX3DはCPUダイの上に3D V-Cacheをかぶせるように搭載していたため、熱がこもりやすく、3D V-Cache非搭載のモデルよりも動作クロックが低かった。Ryzen 9000シリーズの第2世代3D V-Cacheでは、CPUダイの下に搭載することで冷却効率が高まり、クロックを高めやすくなったからだ。
なお、AMDではゲームにおけるパフォーマンスについて、IntelのCore Ultra 9 285Kに対してRyzen 7 9800X3Dは平均24%、Ryzen 7 9850X3Dは平均27%性能が高いとしている。実際のテストでも同じ結果になるか注目したい。
低画質でのフレームレート底上げに確かな効果アリ!
ここからは、ベンチマークを実行していこう。CPUの設定や検証環境は以下の通りだ。
| Ryzen 7 9850X3D(8C/16T) | TDP120W/PPT162W/TDC120A/EDC180A/Tj95℃ |
|---|---|
| Ryzen 9 9950X3D(16C/32T) | TDP170W/PPT200W/TDC160A/EDC225A/Tj95℃ |
| Ryzen 7 9800X3D(8C/16T) | TDP120W/PPT162W/TDC120A/EDC180A/Tj95℃ |
| Core Ultra 9 285K(24C/24T) | PL1=250W/PL2=250W/ICCMAX=347A/Tj105℃ |
| 【検証環境】 | |
|---|---|
| [AMD] | |
| CPU | Ryzen 7 9850X3D、Ryzen 9 9950X3D、Ryzen 9 9800X3D |
| マザーボード | GIGABYTE X870E AORUS MASTER X3D ICE(AMD X870E) |
| [Intel] | |
| CPU | Core Ultra 9 285K |
| マザーボード | MSI MAG Z890 TOMAHAWK WIFI(Intel Z890) |
| [共通] | |
| メモリ | G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NR(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
| システムSSD | Samsung 9100 PRO MZ-VAP1T0B-IT(PCI Express 5.0 x4、1TB) |
| ビデオカード | ASUS TUF-RX9070XT-O16G-GAMING(AMD Radeon RX 9070 XT) |
| CPUクーラー | Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス) |
| 電源 | Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold) |
| OS | Windows 11 Pro(25H2) |
まずは、CGレンダリングでシンプルにCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、「Cinebench R23」とPCの基本的な性能を測定する「PCMark 10」を見ていこう。
Cinebenchのマルチコアは、コア数が効くため16コアの9950X3Dや24コアの285Kが強くなる。同じ8コアの9800X3Dと比べると、400MHzのブーストクロック向上が効いており、マルチコア、シングルコアとも9850X3Dのほうが高いスコアとなった。確かな効果が確認できる。PCMark 10は負荷のそれほど高くないテストなので大きな差はついていない。
続いて、もっとも重要な実ゲームを試そう。まずは軽めのゲームから「オーバーウォッチ2」と「マーベル・ライバルズ」を実行する。オーバーウォッチ2は、botマッチを実行した際のフレームレートをCapFrameXで計測、マーベル・ライバルズはゲーム内のベンチマーク機能を利用した。GPU負荷が低くCPUの性能差が出やすい低画質設定と、GPU負荷が高くCPUの差が比較的出にくい最高画質設定の2種類でテストしている。解像度はフルHDに統一した。
注目は低画質だ。どちらのゲームも9850X3Dがトップに立った。同じ8コアの9800X3Dよりも最高画質設定も含め、フレームレートが高くなっており、ブーストクロックの高さが効いていると見てよいだろう。
続いて重量級ゲームとしてハンティングアクションの「モンスターハンターワイルズ」とオープンワールドRPG「サイバーパンク2077」を試そう。モンスターハンターワイルズはベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用した。なお、モンスターハンターワイルズは2026年1月28日実施のパフォーマンス改善が含まれるアップデート(Ver.1.040.03.01)適用前のデータになるため、参考程度に見てほしい。
モンスターハンターワイルズはCPUのコア数が効きやすいゲームであるため、16コアの9950X3Dがトップに立った。ただ、9800X3Dよりも最高画質、低画質よりもフレームレートが伸びており、ブーストクロックの高さが活きている。サイバーパンク2077は最高画質設定のレイトレーシング:オーバードライブは非常に描画負荷が高く、GPUがボトルネックになってCPUによる差がほとんどなかった。その一方で低画質設定では9850X3Dがトップ。動作クロックの高さが効いている。
クリエイティブ系のテストも試そう。まずは実際にAdobeのPhotoshopとLightroom Classicでさまざまな画像処理を行う「Procyon Photo Editing Benchmark」から。
主にCPUで処理される「Batch Processing」は、コア数の多い9950X3Dや285Kが強さを見せたが、CPUとGPUの両方を使うImage Retouchingは9850X3Dがトップに。画像処理でも優秀な結果を見せた。
続いて、エンコードアプリの「HandBrake」を使って、約3分の4K動画ファイルをH.264とH.265のフルHDにエンコードするのにかかった時間を計測した。
CPUをフルに使い処理なので、コア数の多い9950X3Dと285Kが高速にエンコードを行えている。同じ8コアの9800X3Dと比べると9850X3Dはわずかに短い時間で処理を終えており、ここでもクロックの高さが活きたと言ってよいだろう。
最後に温度や消費電力、動作クロックをチェックしておこう。まずは、システム全体の消費電力から。アイドル時は起動10分後、そのほかはベンチマーク実行時の最大値だ。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。
Cinebench 2024はCPUだけに負荷がかかる処理なので、コア数の多い9950X3Dと285Kの消費電力が高くなる。9850X3Dと9800X3Dはほとんど変わらない結果だった。サイバーパンク2077はGPU負荷がメインになるため、Cinebenchほど大きな差は出ていない。
続いて、Cinebench 2024のマルチコアを10分間動作させたときのCPU温度、動作クロック、消費電力の推移を確認しよう。「HWiNFO Pro」を使用し、CPU温度はRyzen系が「CPU (Tctl/Tdie)」の値、Core Ultra 9 285Kが「CPU Package」、動作クロックはRyzen系が「Average Effective Clock」、Core Ultra 9 285Kが「P-core 0 Clock」、CPU単体の消費電力は「CPU Package Power」の値だ。室温は22℃。
温度は9850X3Dが平均71.9℃、9950X3Dが平均69.8℃、9800X3Dが平均71.9℃、285Kが平均68℃だ。どのCPUの温度も低く、36cmクラスの水冷クーラーなら心配なく運用できるだろう。動作クロックについては、9850X3Dが5.26GHz前後、9950X3Dが5GHz前後、9800X3Dが5.12GHz前後、285Kが5.27GHz前後での推移となった。9850X3Dが9800X3Dよりも高クロックで動作しているのをしっかりと確認できた。
消費電力については、9850X3Dと9800X3Dは電力リミットのPPTは162Wだが、前者は141W前後、後者は132W前後で推移、9950X3DはPPTが200Wでほぼその上限で推移、285Kのリミットは250Wだが、205W前後での推移となった。
8コア最強のゲーミングCPUなのは間違いない
9800X3Dからブーストクロックを400MHzアップさせたことで、さらにゲーミング性能を伸ばした。ゲーミング最強CPUの座は9850X3Dに移ったと言ってよいだろう。フレームレートを可能な限り伸ばし、540Hzや610Hzと言った超高リフレッシュレートのゲーミングモニターを存分に活かせるPC環境を求めている人にとっては有力な選択肢だ。ただ、価格は94,800円。9800X3Dが7万3,000円前後まで価格が下がってきていることを考えると、どちらを選ぶか非常に悩ましいところ。まずは、悩むほどよいCPUが登場したことを素直に喜ぶとしよう。



















