集中投資より危険な“円集中”
もちろん、リスク管理の観点から言えば、単一銘柄への集中投資は推奨されるものではない。「卵を一つのカゴに盛るな」という格言通り、分散こそが資産を守る鉄則だ。
ソフトバンクグループが巨額の損失を出し、危機的状況に陥る可能性もゼロではない。企業の存続にかかわる不確実性を負ってまで、特定の一社にこだわる必要があるのだろうか。しかしここで窪田氏は、その「常識」の裏側にある、多くの日本人が見落としがちな「円という資産」の危うさを指摘する。
「私は真面目に、日経平均は将来10万円に行くと考えています。それは日本経済が強くなるからではなく、円の価値が希釈化していくからです。将来的に円が1ドル200円に向かうと言われている中、現金のままで持っていることこそが最大のリスクになります」(窪田氏)
たしかに、ソフトバンクグループという「箱」が経営破綻するリスクはあるかもしれない。しかし、同社の投資・事業領域と深く結びついたPayPayやLINEヤフー、ARMといったサービスや技術が、この世から完全に消えてしまうとは考えにくい。社会インフラ化したそれらの価値は残り続けるはずだ。
「そう考えると、会社が消えてしまうリスクよりも、円建ての資産だけを持ち続けてインフレで実質価値が目減りするほうがよっぽど怖い。だから私にとって、ソフトバンクグループへの投資、ひいては株式への投資はインフレヘッジでもあるのです」(窪田氏)
子どもには、配当より“夢”を残したい
円の価値が揺らぐいま、窪田氏は自身の運用だけでなく、子どもの資産づくりにも同じ危機感と発想を持ち込んでいる。
子どもの資産形成の方法としては、低コストのインデックスファンドをコツコツ積み立てるスタイルが広く浸透している。「オルカン(全世界株式)」や「S&P500」も、定番の選択肢として語られることが多い。
だが、窪田氏が子どものために選んだのは、あえてのソフトバンクグループだった。その理由はシンプルで、短期の勝ち負けではなく、20年後を見据えた投資だからだという。
「実は、私の息子の出産祝いやお年玉、お小遣いなどは、すべてソフトバンクグループの株に変えています。100株単位では買えないので、1株ずつ買い集めて、今では100万円を超える規模になりました。2026年、2027年にどうなるかはわかりません。でも、子どもが大人になる20年後を想像したとき、孫さんが世界中にばら撒いた“AIの種”が花開いている可能性は高い。配当狙いの堅実な銘柄もよいですが、子どもに残すなら『夢』があるほうがよいなと。20年後、世界がどう変わっているか。その答え合わせをソフトバンクグループという株を通じて子どもと一緒に楽しみたいと思っています」(窪田氏)
市場の常識や「こうあるべき」という教科書的な分散投資論に縛られず、圧倒的な「個」の力と時代の潮流に資金を乗せる。見方によっては、それもまた一つの“洗練されたリスク管理”なのかもしれない。
円の価値が揺らぐいま、私たちが本当に恐れるべきなのは値動きそのものではない。何もしないまま、資産の実質価値がじわじわ削られていくことではないだろうか。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や投資を推奨するものではありません。

