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ラクスルCRO&ノバセル代表取締役 田部正樹が語る、マーケティングの本質

NOV. 04, 2025 08:30
Text : 蔵元二郎
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日本のビジネスを牽引する著名なCxO(Chief x Officer)の皆さんが今、何を考え日々ビジネスに励んでいるのかを深掘りするべくスタートした本連載。聞き手は私、「Japan CxO Award」の主催を務め、CxO人材採用事業に日々携わるBNGパートナーズの代表取締役・蔵元二郎が務めます。

今回は、ラクスルグループCRO(Chief Revenue Officer)と、AIエージェンシー・ノバセルの代表取締役社長を兼務する、田部正樹さんにお越しいただきました。2014年、ラクスルにCMOとして入社し、テレビCMを中心に累計50億を超えるマーケティング投資を行い、5年で売り上げを20倍にした立役者。現在「マーケティングの民主化」を掲げ、マーケティング支援事業を推進する田部さんに、CxOとは何か、AI時代のマーケティングの変化などを聞きました。

マーケティングは収益を上げる「手段」

――本日はよろしくお願いいたします。まず、今年の8月1日付で、ラクスルのCMO(最高マーケティング責任者)からCRO(最高収益責任者)に役職名を変えましたが、これは田部さんの意思として、どういった経緯で変えられたのでしょうか?と

まず、「CMO」が何なのか、定義がかなり曖昧でした。グローバルでは、明確に売り上げや利益の成長責任を持ち、それを達成しなければクビになりますが、日本ではそうとは限らず、必ずしも利益にコミットしている人ばかりではない。でも、マーケティングは本来、売り上げと利益を最大化する手段。収益を上げることこそが、僕のやるべきことです。収益にコミットする姿勢を明確にするため、役職をCROに変更しました。

――そういった考えは、ずっとあったのでしょうか。

2社めのテイクアンドギヴ・ニーズでの経験が大きいと思います。最初に就職したマルイでは、マーケティングの仕事は「お金を使う」ことを前提に、決められた予算をどう消化し、売り上げを上げるか、というもの。もちろん誰かが稼いでいるからこそできることですが、どこか勝手に利益が出ていて、それを使っている感覚でした。それが、当時ベンチャーだったテイクアンドギヴ・ニーズでは、まず利益を削ってでもお金を使うべきか、それは本当に売り上げを伸ばせるのか、そこから考えて決める必要がありました。

稟議を上げるたびによく「自分のお金だったら、それをやるのか?」と言われ、「確かに、自分のお金だったらやらないな」と思うことも何度もありました。この会社と自分の感覚を一体化させるのは、まさに経営者の感覚。マーケターと経営者の一番の違いを早いタイミングで学ぶことができたのは幸いでした。さらに、マーケターは広告宣伝費、マーケティング費、売り上げしか見ていない状態に陥りがちですが、PLの他のあらゆる項目を見て改善し、会社の時価総額を上げるという経験ができたのも、今に繋がる転機でしたね。

――大企業にいると、規模の大きさでどうしても利益に鈍感になってしまうのはある程度致し方ないと思いますが、田部さんはなぜ、そこに気付けたのでしょうか?

強いて言うならば、僕は能力をアップデートしていきたいという向上心が非常に強くあったとは思いますが、能力の問題ではなく、ベンチャー企業に身を置いたという環境の要因が大きいです。環境でいえば、P&Gの例がわかりやすいでしょう。多くの企業は、「多少利益を削っても、売り上げが上がればOK」という考え方になりがちですが、P&Gではマーケターとして入社をしても、ブランドマネージャーという形でPLの責任を全部背負います。その環境に身を置くことで、売上ではなく“利益を上げるために何を変えるべきか”を考える習慣が自然と身につきました。

500件営業 - 自分で全部やって気付けたこと

――ラクスルのCMOを務め、テレビCMを中心にマーケティング投資を行い、その経験からノバセルを立ち上げたことは田部さんの代表的な実績の一つだと思います。ノバセルが成功した要因を挙げるなら、何でしょうか。

2つあります。まずひとつは、ラクスルグループは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げているのですが、この「仕組みを変える」がかなり深いテーマ。すでに世の中にある仕組みで、問題があるところを変えて、顧客価値に変換することが重要です。例えばノバセルでいうと、テレビCM。僕自身がラクスルでテレビCMに多額の予算を使ったときに「これだけ多くのお金を投資しても、効果を説明できる人がいない」という明確な課題がありました。そこから効果を数値化し、デジタル広告のように運用・改善できる方法を開発し、顧客の課題を解決できたことはまず大きな要因です。

――もうひとつは何でしょうか?

ラクスルグループからのリソースの調達がほぼゼロで、赤字が出にくかったことです。ラクスルは「新規事業を立ち上げるなら、まず自分でなんでもやる」という環境です。約500社に営業に行き、事業が成長したら採用し、さらには新人のパソコンのセットアップまで、全部やりました。

――本当に驚くほど全部ですね。

そうです。でも、会社を創業する人は、同じことをやりますよね。創業期の会社がやることを実際に行うことと、500社への営業を重ねるうちに、何にニーズがあって、何をサービスとして打ち出していくべきか、感覚が養われたこともあり、非常によかったです。さらに、グループCROをやりながらマーケティング支援会社をやっていると、あらゆる会社の支援を通じて、最先端の事例のインプットができる。マーケティングの自己研鑽にも繋がり、マーケティング支援会社として単体で利益も出て、さらにそれを踏まえてラクスルグループを最大化できる、一挙三得な仕組みになっています。

――田部さんは、極端な言い方をするならば、重役の椅子にどっしり座っていることもできるのに、要所要所で現場主義を徹底されています。頭ではやるべきだとわかっていても、なかなか難しいという人も見かけますが、田部さんがそのメンタリティーを保てるのは、どうしてなのでしょう?

また繰り返しになってしまいますが、やはり環境に尽きます。「新規事業を立ち上げるなら、なんでもやる」のみならず、マネージャー単位でも、採用は人事に頼らずに自分で行うのが基本です。もちろん、面接設定のオペレーションなどは人事が担当しますが、スカウトなのか、リファラルなのか、エージェントなのか、どんな待遇で迎えるのか……すべて考えます。「採用もできない人は事業も立ち上げられないし、チームを作れない」というのは、昔からあるカルチャーです。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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