2025年3月20日に発売されたアクションアドベンチャー『アサシン クリード シャドウズ』は、Ubisoftが手掛ける「アサシンクリード」シリーズの最新作だ。今作では、安土桃山時代の日本を舞台に、忍者と侍のダブル主人公が活躍。記事では、本作のクリアレビューをお届けする。

クリアにかかった時間は約55時間。それでも未踏のサブクエストやロケーションが山ほど残っていて、現在も継続プレイ中。今回、UbiSoftから商品コードを提供いただいて中盤までプレイ後、途中からSteam版を購入してプレイしている。そのためスクリーンショットは発売前のビルドの画像も含む。

なお、レビューにはネタバレも含む。ボスの正体など核心は避けるが、匂わせはある。また、サブクエストの登場キャラや顛末も一部紹介する。事前情報なしでプレイしたい人はレビューを見ずにプレイするのがオススメだ。おもしろいですよ。

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    まだまだ見たいと思わせる、奈緒江と弥助の物語。プラットフォームは、PlayStation 5(PS5)、Xbox Series X|S、Ubisoft+、Amazon Luna、PC(Steam/Epic Gamesストア/Mac App Store/Ubisoft Store)

令和に唸る“テケテケサウンド”が盛り上げる復讐活劇

「アサシンクリード」シリーズは、世界各地で暗躍するテンプル騎士団とアサシン教団の対立が描かれる歴史追体験SF。なぜ歴史追体験SFなのかという詳細は省くが、本作でもゲームを起動すると、忍者の「奈緒江」と侍の「弥助」の記憶を特殊な装置を使って追体験するという物語の枠組みが提示される。

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    VRマシン「アニムス」により奈緒江と弥助の物語を追う

なお、私は過去に『アサシンクリード オリジンズ』を少し触った程度で、シリーズの知識はあまりない。それでも本作は楽しめたが、シリーズのお約束としてアサシン教団が主人公側、テンプル騎士団が敵という前提(例外もある)をおさえておくとよさそうだった。

そのうえで本作で特に心に残ったのはストーリーとキャラクターたち。いくつかの山場はいま思い出してもしみじみとするものがある。

オープニングでは奴隷のディオゴ(のちの弥助)が信長に仕える経緯と、奈緒江の悲劇が描かれる。焦点があたるのは奈緒江のほうで、物語はシンプルな復讐劇として幕を開ける。

織田信長によって伊賀の里が焼き払われる真っ只中。伊賀流忍者の大家・藤林家の娘である奈緒江は、父・藤林正保から大切な「箱」を守るよう言いつけられるが、突如現れた怪しい集団・百鬼衆に箱を奪われる。ほかにも波乱はあるが、まず心を掴まれるのは、この百鬼衆の登場だ。

鉄砲使いの女、金棒を持った巨躯、派手な着物を着た般若……。小池一夫原作の作品に出てきそうな面々がズラッと横一列に並ぶ。外連味の強い登場演出と、奈緒江に降りかかる悲劇。こいつら1人ずつに奈緒江が復讐するんだなと、ワクワクさせてくれる。

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    「私たちがボスです」という主張がビンビンに伝わってくる

続く展開も王道。奈緒江は箱も里も何もかも失うが、僧侶・宗玄と、小太りの少年・順次郎に介抱され命拾いする。はじめは心を閉ざす奈緒江だが、宗玄や順次郎との交流で立ち直り、復讐へと再起する様子がグッとくる。竹林を刀で斬りまくるリハビリシーンは梶芽衣子の『修羅雪姫』っぽい。やっぱり小池一夫風……?

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    順次郎(右)との交流を経て元気になり(やや調子に乗った)奈緒江

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    天才絵師・順次郎の絵。今すぐポートフォリオを作ってゲーム会社に就職すべき

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    出発だ!

ここからオープンワールドが解禁され、奈緒江の復讐の旅が始まるが、随所で差し込まれる奈緒江の回想がまた沁みる。特に、藤林正保こと“お父”との思い出よ。お父の前で背伸びしたり、夕飯の支度を賭けてはしゃいだりする奈緒江の姿は、辛い目にあった現在の奈緒江を見てきた分、切ない。子どもらしい奈緒江と“忍”の奈緒江を演じ分ける声優の演技も光る。

回想では、奈緒江が初めて人を殺し、戦場に出るシーンも丁寧に描かれる。ここで流れるボーカル曲がおもしろい! 要所要所で流れる日本語ボーカル曲を担当しているのは、カナダを拠点に活動する多国籍バンド「TEKE::TEKE」。バンド名はかつて日本で一世を風靡した「テケテケサウンド」に由来するらしい。曲調も確かに、民謡をエレキギターで弾き倒した寺内タケシの面影がある。まさか令和のAAAタイトルで「テケテケサウンド」フォロワーが起用されるとはね……。

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    回想に必要な虚無のミニゲーム「九字切り」。奈緒江が「臨……兵……闘……者……」と精神を研ぎ澄ませる様子を見ながら、「臨臨臨臨兵兵兵兵闘闘…」と連打する

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    お父との思い出。奈緒江はまだまだ子どもだ

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    奈緒江の初陣。BGMが熱い!

ところで、弥助はいったいどこに……?

寄り道を楽しみながらおよそ10時間。超有名な歴史上の出来事を転換点に物語は大きく動き出し、弥助の姿もようやくチラ見えする。しかし、冒頭の展開を見て思う。この2人、共闘できるの?

実はオープニングで、弥助は信長の伊賀征伐に同行している。戦闘チュートリアルで大量の伊賀忍を斬り伏せているのだ。奈緒江にとって直接の復讐の相手は百鬼衆だが、弥助も当然、仇敵である。

しかも、こっちは奈緒江を操作して数時間。気持ちはもう伊賀の忍者である。今さら弥助と手を組めるものだろうか。生半可な理由では納得できない。この解決が曖昧に流されたら、残りのプレイはだいぶしんどいものになりそうだ……。と思っていたが、とんでもない。本作屈指の名場面が待っていた。

殺るか殺られるかが当たり前の時代を舞台に、仇討ちを思いとどまらせるのはかなり難しい。しかし、奈緒江は相手を赦す道理を、予想外の角度から説かれる。

正直なところ、序盤にムービーを詰め込みすぎとも感じていたが、振り返ると全て必要だったと納得できる。お前のこと、どうでもいいと思っていてごめんよ、◯◯◯(ネタバレ防止のため伏せます)……。おじさん、泣いちゃったよ。

トリッキーな展開があるわけではなく、構成と演出の力で気持ちを熱くさせてくれる。そういう名シーンが本作にはいくつもあり、忘れがたい体験となった。

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    とあるクエストで茶会に参加。作法を間違えて偉い人に睨まれる

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    弥助の登場シーンでは弥助のルーツを意識したと思われるスワヒリ語(?)のボーカル曲が流れ、奈緒江との対比が光る

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    めちゃくちゃ熱いシーンが多数!

奈緒江、弥助が投げる愛の剛速球。ロマンスイベントが熱い!

本作は膨大な数のサブクエストがあり、妖怪(?)の噂を確かめたり、各地の悪代官や浪人を成敗したり、とにかくやれることが多い。

しかし、ボリュームのあるゲームの宿命として、用意された全てがおもしろい、とは言いづらい。玉石混交ではある。ただ、まだ見ぬ“玉”を追い求めてプレイできる中毒性がある。そして、自分にとっての“玉”はロマンスイベントだった。

ロマンス、つまりNPCとの恋愛要素があることは事前情報で知っていたが、初めてロマンスイベントに遭遇したときは衝撃的だった。

相手は源之丞という、危険な魅力を漂わせる盗賊。侍の妻を寝取った挙句、仕返しに来た寝取られ侍を返り討ちにしてその死体に小便をかけるような、とんでもない輩である。二言目には下ネタが飛び出る下品な男だが、しかし奈緒江の反応はまんざらでもない。

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    源之丞のフェイスモデル・声優は俳優の新田真剣佑さん

源之丞が「さては……お前、別の類の刀が欲しいということか?」とふざければ、表示される奈緒江の返答は「♡どんな刀があるんじゃ?」。

そんな……。回想では、夕飯に干物とたくあんが出ればテンションぶち上がるような、ほんの子どもだったのに……奈緒江……奈緒江! 変な男に引っかかるな! お父が悲しむぞ! そうだ、お父との思い出に浸ろう? 九字切りで虚無になろう?

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    安土桃山時代にも存在した“ヤリ部屋”概念

いや、奈緒江も確かに年頃の娘ではある。でも源之丞はどうかと思う。盗賊だから収入も安定していないだろうし、すぐ暴力に訴えるのも心配だ。お父もびっくりするよ、こんな男を連れてきたら。

代わりに、ほら、いぶきはどうだろう。いぶきは、戦乱の世で刀を振るうが、本当は詩歌や美にふけっていたい、教養のある男。こういう男のほうが、私はいいと思うなぁ……。

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    いぶきは声に色気のある、風流な優男である

しかし、いぶきに恋するのは弥助なのである。お前と趣味が被るとは……。

弥助のアプローチもまた、想像以上に情熱的で驚かされる。なんといぶきが好きな花の種を集めるために、大阪・兵庫あたりから三重まで馬を走らせるのだ。ロマンチスト過ぎる!

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    弥助は奈緒江と違って語尾に♡がつくヒ◯カ仕様(なぜ?)

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    隠れ里→伊賀はふと思いついて集めにいく距離じゃないよ、弥助

一方で、別のロマンスでは、弥助は傷心の子持ち未亡人を“猫の島”へのデートに誘う。猫をダシに誘うのは可愛くない、可愛くないよ弥助。いぶきが見たら、どう思う? そもそも複数股って大丈夫……?

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    猫で好きピを釣る弥助。「うちの隠れ里に猫いるけど、来る?」みたいな誘い方だったら許さなかった

このように、奈緒江と弥助には男女複数のロマンス相手が用意されている。ストーリー自体はあっさりしているが、相手によっては“濃い”描写もある。思わぬところでロマンスが発生するので、私にとって各地をめぐるモチベーションになった。

それにしても、♡のアイコンがついた選択肢が出るたび、普段は真面目な奈緒江も弥助も直球で笑ってしまう。考えてみれば、みんな明日死ぬかもしれない時代を生きているのだ。某残酷時代劇漫画でも「死の間際に種を残そうとするのは本能である」と言っていた。

ちなみにこのゲーム、メインストーリーでもサブクエストでも選択肢がまったく発生しない「一本道モード」が用意されている。「奈緒江はそんなこと言わないっ!」という過激派は「一本道モード」を選ぶのも手だろう。

ただ、私のおすすめは断然、選択肢アリのモード。たまに変な空気になるが、選択肢でポロっとはみ出る奈緒江や弥助の茶目っ気を見るのが楽しいよ。

繰り返しも多いがいつまでも続けられる日ノ本の旅

システムに触れよう。仕様は豊富だが直感的にプレイできるので、シリーズ初心者もすぐに楽しめるはず。難易度をエキスパートに設定した感想だ。

本作は敵の拠点に忍び入り、または雄叫びをあげながら攻め入り、要人を暗殺したり重要アイテムを手に入れたりするのがメインの遊びとなる。奈緒江はステルス&暗殺が得意で、弥助は正面きってのバトルが得意。敵の拠点外では自由に2人を切り替えられるが、拠点内では切り替えられないので、基本的にはどちらかを選んで拠点を攻略する(いったん外に出て交代することは可能)。

こういうシステムの場合、奈緒江と弥助で攻略の難易度差が極端だとおもしろくないが、プレイした範囲ではどちらも個性にあった強さとともに苦労があり、バランスがいいと感じた。

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    切り替えのUIは装備・スキルともにスムーズだ

シリーズの伝統的なウリであるステルスアクションはさすがにおもしろい。照明を壊して相手の視界を奪い、口笛や鈴で敵をおびき寄せ……うまく敵を処理できると自分の上達が感じられ、やりがいがある。

また、季節によってロケーションの性質が変わるコンセプトもおもしろかった。夏に背が高くなった草陰は忍びやすく、冬にはつららを落として敵の気を引くといった機転も効かせられる。

しかし……敵の拠点、とりわけ城の攻略が“重い”。「城ってちゃんと攻めにくくなってるんだな……」と感心させられるものの、重要な宝箱を回収するまでに1時間かかった、なんてこともザラである。

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    多少見つかっても問題ない。自分は忍んでいるという気持ちが大事

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    冬は堀も凍る。季節が攻略にもちょっと影響する

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    ファストトラベルポイントから見える城の広さに慄く

「え、今から城攻略……?」と面倒に感じ始めたとき、頭をかすめるのは、システムの穴だ。敵は地上にいるプレイヤーはしつこく追ってくるが、高所の判定は甘々。匍匐状態で屋根にいれば、多くの局面をやり過ごせる。

つまり、音や物陰を駆使したスマートな忍びプレイをせずとも、ダバダバと敵の目の前を走りながら一手に注目を集め、高所からステルスキルを繰り返す、という大雑把なプレイでも攻略できてしまうのだ。さっきまで忍んでいた労力は……。

とはいえ判定が甘いおかげで、騒ぐ敵を無視しながら天守のファストトラベルポイントを解放できる一面もある。うーん……。

結局、丁寧なステルスプレイは自分なりの映えプレイを再現するためのものと割り切って取り組むことにした。めちゃくちゃ上手いプレイヤーであれば、話は違ってくるんだろう。

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    鐘を鳴らされると攻略難易度が上がる「お尋ね者」状態になり手強い敵が出現

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    弥助も高所に登れるが、どうやって飛び降りる……?

戦闘システムも同様で、各要素はとっつきやすく楽しいが、突き詰めるともう一押し欲しいといった感触だった。

奈緒江も弥助も、アクションの見た目はかっこいい。特に弥助は普段の優等生的な振る舞いに反して、“殺し”に関する容赦のなさがすごくて笑ってしまう。好きな男のために花の種を集めに行く道中、野党の頭を踏み潰したときは自分のプレイながら「情緒どうなってんの?」と思った。

装備品にはハクスラ要素もあり、各装備品にはレア度やレベル、「彫刻」と称する固有のパッシブ効果が設定されている。彫刻や鍛造で、装備を自分好みにカスタマイズできるのは楽しい。

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    鎖鎌振り回しながら、陣笠叩く、ミ・ナ・ゴ・ロ・シのサイン

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    フィニッシュムーブは最もフィジカルでプリミティブなやり方

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    性能は現装備のまま、見た目のみの着せ替えも可能。これはうれしい

ただ、戦闘面を突き詰めて攻略したいと思える敵はあまりいなかった。敵の攻撃パターンは多くないので、ジャスト回避やパリィといったシステムがあっても単調さは否めない。

一応、例外もある。剣聖・上泉信綱の弟子たちと戦うクエストだ。これは弥助専用のクエストで、たとえば弓の達人には弓で立ち向かうなどの縛りがあり、ちょっとしたギミックボスのような敵もいておもしろい。こういう敵はメインクエストにも欲しかった……。

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    イベントによっては強制的に集団戦になることも

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    特殊なボス戦は楽しい

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    武芸大会は目潰しナシ、金的ナシ、火縄銃アリ

オープンワールドの移動は快適。クエストの目的地を自力で見つける密偵システムもユニークだ。広大なフィールドには、九字切り、流鏑馬、古墳探索、寺社仏閣めぐりなど、細かな遊びが随所にあり、移動が退屈にならない工夫が施されている。ただし、これらミニゲームの楽しさはモノによって差がある。

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    クエスト目的地は「播磨にいる」「戦場の南にいる」など、粒度の異なる複数のヒントで示される。ちなみに「探索ガイド」モードを選べば、密偵クイズは不要

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    形を覚えるミニゲームでは有名人も登場。この人『バガボ◯ド』で見たことある!

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    地蔵参りコンプを要求される。もっと早く言ってよ!

歴史・文化を知ることができる事典(コデックス)も収集要素として用意されている。ゲーム内でじっくりテキストを読む系のコンテンツは「あとで読む」と思いながら読まないのが常だが、こちらもかなりのボリュームがある。

また、拠点づくりも重要な要素。攻略を有利に進める効果の付与やちょっとした建築要素が楽しめるが、個人的な目玉は仲間同士の会話だ。

拠点には、前述の源之丞やいぶきのほか、奈緒江を姉様呼びで慕う毒殺魔のガキや伝説の剣聖など個性豊かなキャラたちが集まる。自由に話しかけられないのは寂しいが、たまにミニイベントが発生して、知り合いの知り合い同士が会話する、その微妙な空気感を傍で見るのがおもしろい。

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    怖いモブ。解説がほしい

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    屋内では自動で裸足になる。律儀だね

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    奈緒江の一党は奈緒江、弥助にとっての疑似家族。みんな仲良くやっている様子が拠点で確認できる

日本にアサシン(忍)はいた! 痛快なIFのワンパンチ

最後に再びストーリーに触れたい。終盤の感想を含むので特にネタバレ注意だ。

全体を通して楽しめた本作だが、百鬼衆にかかわる物語は不満も残る。

いかんせん奈緒江、弥助が百鬼衆と直接対峙する場面が少ない。百鬼衆の中には魅力的な背景事情を抱えたキャラクターもいるが、複雑なドラマを十分に掘り下げる前に退場してしまう。

また、奈緒江と弥助側のドラマとしても弱い。百鬼衆の正体に近づくため、関係者の協力を仰ぐ場面で「民のため」「義のため」という方便を持ち出すのだが……。弥助が仕えていた信長は、一面では民を含む敵方に苛烈な仕打ちを行ってきた支配者でもある。だから弥助がキレイごとを言っても当然、相手によっては恨み言を言われる。そりゃそうだ。

「奈緒江・弥助の目的」と「民や義に尽くすこと」と「百鬼衆を討つべきかどうか」。これらはつながっているようで、実際は独立した問題。だから「百鬼衆、討つべし!」という奈緒江たちの気持ちに今ひとつ乗っかれないのが残念だった。

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    敵にスモウレスラーがいても良かったよな

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    カットシーンは装備が反映されるパターンもある

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    街道ではクエストには表示されない、民を助けるミニイベントもある

対して、奈緒江と弥助のルーツに絡むクエストは抜群におもしろい。やっぱり「日ノ本がどうなるか」という大きなスケールの話よりも、「奈緒江と弥助の運命はどう決着するのか」というストーリーのほうが気持ちが乗る。

道中、2人が眼前の役割を放棄して、あり得た将来を夢想する一幕がある。しかし奈緒江も弥助も過去は変えられず、浮世と向き合うしかない。決して前向きな気持ちばかりではない2人の心情が垣間見える。

しかし、前に進んだことで弥助は過去を断ち切り、奈緒江には希望が残される。百鬼衆で感じた不満も霧散する、爽やかな後味のストーリーが最後には展開される。

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    つかの間の休憩

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    家庭を持ちたかった奈緒江

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    現実は……

特に熱く気持ちを盛り上げてくれたのは弥助のストーリー。なぜ弥助は日本に流れ着き、なぜ奈緒江と行動を取ると決めたのか、その理由が明かされるシーンでは涙がこみあげてきた。“ディオゴ”ではなく“弥助”の名にこだわるのもいい。

序盤に感じた小池一夫テイストから連想して、弥助の物語はどこかクエンティン・タランティーノの歴史モノを彷彿とさせる。実際にはあり得なかったが、どこか別の世界ではあり得たかもしれない痛快な“IFの物語”。アサシンクリード世界だからこそ起きた奇跡によって命をつなぎ、忍者をはじめ多くの日本人の仲間を得た弥助は、仇敵に一発くらわす。いやぁ、ゲームって本当にいいもんですね!

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    Yasuke!

まだまだ続く、奈緒江と弥助の旅

大ボリュームの本作に対して、クリア後のプレイ含めてたった60時間程度しかプレイしていないのにレビューするのも気が引けるが、おもしろいことは間違いない。愚痴のようなことも書いてしまったが、ハマっていることの裏返しである(『レ◯ルE』でいうところの「ゲームにはまる徴候」というやつ)。

ステルス、バトルは繊細さとゆるさの両立が心地よく、探索はいつまでも続けられる中毒性がある本作。ストーリーは区切りがついたが、DLCが発売されるまで、奈緒江と弥助に着せるおべべ探しと、まだ見ぬロマンス相手探しは終わらない。

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