今年のCESにおける基調講演では本当に触りだけが公開されたRDNA 4ベースのRadeon RX 9000シリーズであるが、今年第1四半期に発表とされるRadeon RX 9070 XT及びRadeon RX 9070の詳細が公開されたので、その内容をご紹介したい。
そもそものRadeon RX 9000シリーズのターゲットはメインストリーム向け(Photo01)とされ、ただちょっと前までは1080p/1440pがターゲットになっていたのが、もう今では1440pのみならず4Kもターゲットに入ってきており、更にRay Tracing対応ゲームが増えている事にも対応する必要があるとする。
これに対応するため、RDNA4では
- 新しい動的レジスタ割り当て技術を実装
- Compute Unitの効率向上。RDNA 3比で40%性能を向上
- Ray Tracing Engineの性能向上
などに対応したとする(Photo02)。
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Photo02: この図のレベルだと、RDNA 3のそれと見比べても違いが良く判らない。しいて言えば、RDNA 3では32bit SIMD Vectorだったのが、RDNA4ではDual 32bit SIMD Vectorになっている程度である。
ここで特に力を入れたのがRay Tracing Engineで、RDNA 4に搭載される第3世代アクセラレータでは
- Intersection Engineを2つに強化。これによりRay box/Ray triangle testingの両方で2倍のスループットが実現
- Ray Transofrm、及びoriented boxまたはbounding boxと呼ばれる新しいハードウェアアクセラレータの搭載
により、Ray Tracingのスループットを2倍に出来た、とする(Photo03)。
またAI処理の性能も大幅に向上したとする。新しくFP8をサポートした事に加え、FP16で従来比2倍、INT 8なら4倍の処理性能を実現できる様になったとする(Photo04)。細かいところでは、他にエンコーダの描画品質向上とかPCIe Gen5対応なども果たしている(Photo05)。
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Photo04: RDNA 3ではAIはDirectMLに対応しているという程度で決して高性能とは言えなかったが、RDNA 4では明確にAI処理の性能向上を果たしている。Sparsityに対応したのも新しいポイント。
さてそのRNDA 4を利用した最初の製品であるRadeon RX 9070シリーズ(Photo06)であるが、ポジション的にはRadeon RX 7900 XTX/XTとRadeon RX 7900 GREの中間に位置するとしている(Photo07)。それぞれのスペックはこんな具合(Photo08)である。Radeon RX 9070 XTの方は304Wと微妙に8pin×2の補助電源の枠をはみ出しているが、まぁ実際には8pin×3構成の製品が殆どだろうから、これは問題にはならないだろう。
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Photo07: もともとPhoto01で$700未満、なんて数字をだしているあたり、個人的にはRadeon RX 9070XTが$699、Radeon RX 9070が$599あたりではないかと予想しているが、さてどうだろう?
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Photo08: チップそのものはどちらも同じもの(Navi 48と言われているが公式ではない)。ちなみに質疑応答によればTSMCのN4で製造され、ダイサイズは357平方mmとの事。なおMonolithic構造だそうだ。
まず下位グレードになるRadeon RX 9070(Photo09)であるが、Radeon RX 7900 GREとの比較(Photo10,11)という形で性能が示された。Radeon RX 7900 GREは丁度1年前に発表された製品であるが、結論で示したように「Ray Tracingを使わなければGeForce RTX 4070 Superと同等」といった感じであり、その意味ではGeForce RTX 4070 Tiといい勝負、RTX 4070 Ti Super相手だとどうだろう? といった位の性能は期待できそうである。
一方Radeon RX 9070 XT(Photo12)もやはりRadeon RX 7900 GREとの比較(Photo13,14)であるが、こちらはRTX 4070 Ti Superに互角という感じの性能が期待できそうだ(RTX 4080相手には厳しそうだが)。
さてこれにあわせて公開されるのがHypr-RXのUpdate(Photo15)で、ゲームによっては最大3倍のフレームレートが期待できるとしている(Photo16)。またFSR4も用意されており、こちらはFSR 3.1のAPIでそのまま利用できるとし(Photo17)、性能を引き上げつつ(Photo18)しかも画質が向上すると説明している(Photo19)。30以上のゲームがこのFSR4に対応しており、2025年中に100以上に増える、とする(Photo20)。Hypr-RXないしFSR4を使う事で、Radeon RX 9070XTなら多くのタイトルが4Kで200fps前後のフレームレートを期待できる、とする(Photo21)。
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Photo15: Hypr-RXは以前こちらで説明したようにFSR+Radeon BoostとRadeon Anti-Lagであるが、ここにFluid Motion Frames 2.1が追加された格好。Fluid Motion Framesはフレーム生成技術である。
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Photo20: もっともDLSS 4対応タイトルが既に75あることを考えると、もう少し努力が必要かもしれない。
フレームレート改善以外の部分では、Noise SuppressionやMedia Encode、AI PC能力の向上が図られた、とする(Photo22)。Media Encodeに関しては、同じbit rateでの画質が大幅に向上したとしている(Photo23)。またAI周りでも性能が明確に向上した(Photo24)としている。このAI周りに関しては、Optimizerを利用する(Photo25)事により、更に性能を引き上げられる、とも説明している(Photo26)。
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Photo23: Noise Suppressionに関しては以前からあった機能だが、機能強化点が今一つ不明である。
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Photo23: 逆に1080pの6Mbpsで、こんなに画質劣化してたっけ? というのが逆に疑問ではあるのだが。個人的にRadeon RX 6600を利用、H.264の1080pを3Mbpsで普段エンコードに使っているが、もう少し品質が良かった気が。
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Photo26: 例えばProcyonに含まれるStable Diffusion XLの性能はRadeon RX 7900 GRE比で1.7倍だったが、最適化を施すとこれが4.1倍まで向上するとしている。
あと、細かいところではSoftware StabilityとかImage Inspector、Chatなどの機能も追加されたとしている。
このRadeon RX 9070/9070 XT、3月6日に発売開始となっている。ただ現時点での正確な価格(これは国内だけでなくWorld Wideのものも含む)や、日本における発売開始日などは不明である。