アワード受賞製品以外も見どころが多かったSHARPブース

かつては家電見本市的の扱いを受けていたCEATECですが、近年はB2B向けの商談や技術展示、共創の場という流れになっています。と言っても「将来の家電に搭載される技術」に関する展示も豊富ですし、環境問題に関する展示は一般の方の興味のある内容でしょう。

特にSHARPブースは一般生活に密着する内容や、家電そのものやサステナブルに関する展示が多く、興味深い内容となっていました。

  • CEATEC2024のSHARPブース

CEATEC AWARD 2024「経済産業大臣賞」を受賞したePoster

展示の中でも力を入れていたのが、経済産業省大臣賞を受賞したePoster。カラー電子ペーパーを採用したデジタルサイネージと言いたいところですが、ポスターと名乗っているのにはわけがあります。

  • 経済産業省大臣賞を受賞したePoster。右下に見えるのは上部に取り付けられている太陽電池パネルで、電源配線不要で利用できるのがポイントです

電子ペーパーは液晶や有機ELとは異なり発光しません。内容も自己保持するので、書き換えなければ消費電力は基本的にゼロと、極めて省エネな表示方法です。電子ペーパーは電子ブックリーダーやスーパーなどのほか、陳列棚の電子価格タグで見たことがある人も多いでしょう。

最近ではファミリーレストランの注文にQRコードを表示している事例もあります。陳列棚で使われている製品だと、電池持ちが数年と長いだけでなくタイムセールのようなケースでも遠隔で書き換え可能というのがメリットです。

一方、電子ペーパーにも欠点はいくつかあります。中でも目につきやすいのが、カラー電子ペーパーの場合鮮やかな発色ではないという点と、書き換えにいったん画面の消去を必要とするので「壊れた?」と思える動きをするのが問題点でしょう。つまり、頻繁な書き換えにはあまり向きません。

ePosterはサイネージのような多くの書き換えを想定しておらず、展示は「普段の表示+非常時の誘導用」を想定しています。この辺がポスターという呼称になっている主な理由でしょう。

屋外の場合、日中は太陽光。夕方以降は外部ライトで照らすことを想定しており、機器も含めた動作は上部に取り付けられた太陽電池で対応で外部電源なしでも動作するというのがポイント。フル充電で16時間程度の照明ができる、ということでした。

さらに書き換えの制御にも低消費電力のLTE-Mを採用。表示はA0サイズと大型で、屋外表示向けとなっています(A2サイズのパネルを4枚使用しているそうです)。

  • A2パネルを4枚使ったA0サイズなので、画面表示にはやや隙間が生じます。単なるポスター掲示板と大きく異なるのは容易に書き換えられるという点

デモを見ていて、一つ面白いと思ったのが冒頭で書いた書き換えプロセスで、ビデオのカット割りのようなトランジション効果によってアイキャッチ的要素を加えて違和感を減らしたものになっていました(動画を見てください)。

  • 非常時の避難経路に切り替えるという事を想定(説明を聞きながら撮影しているため音声が流れます)

  • LPWA(LTE-M)を使用し書き換え指示以外にも本体モニタリングができるようになっています

和室に似合う「家具な家電」

外の目立つところに外側に木材のアイテムがあり、何かのコンセプトモデルと思ったのですが、空気清浄機の製品でした。空気清浄機は以前からありますが、洋室に置くデザインで和の空間にはなじみにくいものでした。

これを何とかしたいという発想で隈研吾建築都市設計事務所とのコラボレーションが実現し、木の枠を外装に使用した「プラズマクラスター空気清浄機:FU-90KK」が来週21日から販売されます。

  • 家具っぽい空気清浄機。設計事務所とのコラボレーションにて生まれており、美術館でこの上に壺や彫刻が乗っていても、展示台と誤解してしまう気がします

日本の伝統的意匠「簾虫籠」から着想を得たという枠は美しく、一見して空気清浄機とは思えないものでした。一方で10年使っても狂いのないような構造にしてもらうために、話し合いを繰り返したそうです。

ぜひ店頭で見て欲しいといいたいところですが、これもB2B向け販路で販売されるため、一般家電量販店ではなかなか見つけにくいかもしれません。おしゃれなお店やホテル、美術館等で使われているシーンを実際に見かける方が早いかも。

  • 天然木材を使用し、さらに角度を変えて組まれているので……向きを変えてみてもこのような外観。一方、長期の利用も想定した作りになっているとの事

  • 上蓋を外すと、確かに空気清浄機っぽい見かけです

リサイクルと低環境負荷

プラスチックのリデュースとリサイクルが重視されていることろですが、シャープは以前から割と地に足の付いた活動を紹介しています。

  • カーボンニュートラルとサステナブルに関する取り組み。今年はプラスチックのリユース以外の展示が目立ちました。正面は薄型テレビのパネルを原材料にして利用する事例です

CEATECでは2022年に「自己循環型マテリアルリサイクル技術」を紹介していました。洗濯機の内槽のポリプロピレン樹脂をリサイクルすることで2022年時点で「内槽⇒内槽⇒内槽と3回目の再利用をしている」というもの。

今年は洗濯機内槽の展示がありませんでしたが「4周目に入った」と説明してくれました。2023年には水平リサイクルだけでなく、添加剤を工夫することで難燃性を高めたアップグレードリサイクルの展示を行っていました。

今年は製品本体だけにとどまらず、梱包材の脱プラスチックに挑戦。まだ重量物には対応できないものの、空気清浄機や電子レンジの梱包材にパルプモールドや段ボール、バガス配合紙を使用する取り組みを紹介していました。また、プラスチック率を減らすため、冷蔵庫の卵トレーの一部に竹材料を入れた事例を紹介していました。

  • 空気清浄機の緩衝材にパルプモールドを使った例。パルプモールドの場合、あまりに重い重量物には対応できないとの事

  • 電子レンジの緩衝材として、段ボールを利用した例

  • エアコン室内機の緩衝材に段ボールを組み合わせて利用

  • 冷蔵庫の卵トレー。従来(左)はプラスチックだけですが、竹の切削材を混ぜることによりプラスチックの利用率を減らしています(右)

生理用ナプキン配布の社会実装

東日本大震災以降、災害時の女性用生理用品の配布に関しては結構広まってきたイメージがあります(男性ゆえに配布現場を直接目にすることはありませんが、記憶では家の近くの信金で配布しているという掲示を見たことがあります)。シンプルな形で必要な人に必要なだけ届けるという課題に対して、社会実装実験が行われています。

  • 生理用ナプキンの配布機。多くの人に利用してもらうためには必要な数だけ取れる仕組みが必要という事で下のようなディスペンサーを作っています

現在シャープが浜松市と共同で行っている事例として、新型のディスペンサーを展示していました。以前は上から手を入れて取るという形でしたが、今回展示されたのは手をかざすと扉が開いて一つだけ取れるというもの。配布される生理用品は浜松市が災害時用にで保管している備蓄からローリングストックで賄うようです。

  • 手をかざすと扉が開き、ナプキンが取り出せます

  • いったん取ると、数分間は再度開かない仕組みになっているとの事

実装実験は浜松市以外でも行われており、展示を見ていて「パシフィコ横浜に行ったときもそういう掲示があったなぁ」と思い出しました(これもシャープが協力しているそうです)。

ヘルシオ20周年。新製品のトースターも先行展示

加熱水蒸気を使って調理するレンジ「ヘルシオ」は発売20周年を迎えていますが、会場には新製品のウォーターオーブントースター:AX-WT1も展示されていました。

オーブントースターなので通常のヒーターもついていますが、ヘルシオらしく加熱水蒸気を使い、「外はパリパリ、中はもっちり」なトーストができるということで面白そうです(筆者は自宅でパンを焼くのに魚焼きのガスグリルを使っており、バゲットを再加熱する際、表面を水でビショビショにして焼いています。これで外はパリパリ、中がふんわりになります)。

  • 12月5日に発売予定されているAX-WT1。ヒーター+加熱水蒸気の組み合わせで焼き加減が選択できる仕組みです

もちろんトーストだけでなくいくつかの機能がありますが、その中でも「揚げ物の再加熱」、「ノンオイルフライ」に関しては実際に試してみたいと思いました。うちでもから揚げをよく作りますが、一晩経つとシナシナ、再加熱するとシナシナかコゲコゲになりがち。揚げたて以外は食べにくい印象ですが、再加熱でもパリパリにできればうれしいところです。

  • メニューを見ると冷凍品にも対応していますし、揚げ物の再加熱、ノンフライから揚げ、焼き芋にも対応するとあり、ちょっと試してみたい感じ