ロジクールから、クリエイティブ向けの入力デバイス「ロジクール MX クリエイティブ コンソール」(型番:KXCCGR/KXCCPG)が国内発表されました。10月24日に発売し、直販価格は32,780円(Adobe Creative Cloud コンプリートプラン3カ月版が付属)。カラーはグラファイト、ペイルグレーの2色。

いわゆる“片手デバイス”や“左手デバイス”などと呼ばれるジャンルに分類される製品で、さまざまな作業が行いやすいように特化されたインターフェイスを備え、通常キーボードショートカットやマウスで操作する入力をより直感的に行うことができるというものです。

  • ロジクール初をうたう片手デバイス「ロジクール MX クリエイティブ コンソール」。2デバイス1セットとして使う製品で、直販価格は32,780円

    ロジクール MX クリエイティブ コンソール。直販価格は32,780円で、Adobe Creative Cloud コンプリートプラン3カ月版が付属する。カラーはグラファイト、ペイルグレーの2色。今回試用したのはグラファイトだ

一般的なユーザーにはあまり馴染みがないかもしれませんが、イラストを制作したり、写真や動画の編集を行うクリエイターの方々には身近な製品といえるでしょう。

これまでロジクールは、ゲーミング用途の片手デバイス「G13」や、クリエイティブ入力ダイヤルを搭載したキーボード「CRAFT」などを発売してきましたが、クリエイティブ用途の片手デバイスというのは今回が初。

PC用デバイスのメーカーとしてはトップクラスのシェアを誇るロジクールの製品だけに、普段から片手デバイスを使っている方はもちろん、「新しく発売されるなら使ってみようかな」と思う方も増えてくるかもしれません。

かくいう筆者も、仕事としての写真・動画編集や趣味でのイラスト制作、作詞家としての簡単なDTM作業など、片手デバイスが活躍しそうな場面は多いにもかかわらず、実はちゃんと使うのは今回が初めて。果たしてその使用感はいかほどか、という片手デバイス初心者のファースト・インプレッションをお届けいたします!

なお、今回はmacOSとの組み合わせで使用しているため、記事中のショートカットキーなどもmac向けの内容になっておりますのでご了承ください。また機材はメーカーから借用しています。

2つのデバイスで構成されるコンソールシステム

まずはレビューに先立ち、本製品について簡単にご紹介します。

「MX クリエイティブ コンソール」は、「MX クリエイティブ キーパッド」(以下「キーパッド)と「MX クリエイティブ ダイヤルパッド」(以下「ダイヤルパッド」)の2つからなるコンソールシステム。

キーパッドには9つのディスプレイキー、ダイヤルパッドには大きく扱いやすいダイヤルやローラーが搭載されているのが特徴です。

  • 2つのデバイスで構成されている「MX クリエイティブ キーパッド」。左がキーパッド(サイズ:77.9×91.7×25.5mm)、右がダイヤルパッド(サイズ:93.7×92.1×33.8mm)

各デバイスは完全に分離しているので、そのレイアウトは自由自在。横に並べてもいいですし、キーパッドを付属のスタンドに立てて縦並びにも配置できます。その他、ご自身の環境に合わせて使いやすい位置に気軽に配置できるのは便利です。

  • 縦に並べて配置することもできるし……

  • 片側だけ右手側に置いちゃう、なんて使い方も!

これらの機能はロジクールのユーティリティツール「Logi Options+」で詳細なカスタマイズが行えるほか、Adobeのクリエイティブソフトにデフォルトで対応しているなど、使い勝手も充実していて、導入してすぐに、自分好みの運用が行えそうです。既存・新規ユーザーが使えるAdobe Creative Cloud コンプリートプラン(3カ月版)も付属します。

各デバイスはどちらもコンパクトにまとまっており、テンキーに近いサイズ感。この記事の写真のように見栄を張ってデスク上を片付けなくても、ちょっとしたスペースに気軽に配置することができます。スペック上の寸法はキーパッドが77.9×91.7×25.5mm、ダイヤルパッドが93.7×92.1×33.8mmとなっています。

  • 手のひらに乗るコンパクトなサイズ感

ダイヤルパッドはBluetooth接続、キーパッドはUSB Type-Cでの有線接続となるので、位置関係を気にせずにレイアウトできます。

今回はダイヤルパッドをキーボードの隣に、キーパッドをディスプレイラックに配置してみました。ダイヤルパッドはキーボード上から自然にスライドして操作することができますし、キーパッドはモニターから少し目線を下げるだけで表示内容を確認できるという狙いです。

  • キーパッドを上に、ダイヤルパッドを下にと、上下に分けた配置にしてみました

ローラーやボタンで微細な調整ができる「ダイヤルパッド」

ダイヤルパッドは名前の通り大きなダイヤルが1つ、右上にスクロールホイールのようなローラーが1つ、ボタンが4つ搭載されています。

本体表面には細かい凹凸の加工がされていますが、ダイヤルそのものはサラサラとしたマットな質感。しかし特に滑りやすいということもなく、軽い力で回すことができて、無段階のスムーズな回転は止めたいところでピタリと止めることができます。

  • 中央にある大きなダイヤルは美しい仕上がり、かつ操作もしやすい

ローラーは表面に滑り止め加工がされているので指のかかりも良く、ダイヤルと比べるとほんのわずかに重いかな? と感じましたが、こちらも同じくスムーズな回転です。左手を添えた際に自然と人差し指の位置にくるので、指で探る必要もなく快適です。

  • 細かい滑り止めが施されたローラーは右上に配置

4つのボタンは配置が大きく離れているので混同する心配も無いでしょう。左上の2つのボタンは写真だとわかりづらいですが、左ボタンが凹、右ボタンが凸の形状になっているので指先で判断しやすくなっています。いずれもクリック感があり、レスポンスも良好です。

  • クリック感のあるボタンが隅に配置されている

先述の通りPCとの接続はBluetoothで行われ、ロジクール製品でおなじみの機能である、最大3台のPCをワンタッチで切り替えられるEasy-Switch機能にも対応しています。ワイヤレスなので本体からケーブルが出ておらず、縦に並べて配置しやすくなっていますね。

9×9ボタンを搭載、最大135の機能を割り当てられる「キーパッド」

「キーパッド」には、画像を表示できる9つのディスプレイキーがズラリと並んでいます。

いわゆる片手デバイスというよりは、Elgatoの「Stream Deck」のようにランチャー的な要素を兼ね備えたデスクトップデバイスといったところ。ディスプレイは発色も良く、1つのキーにつき480×480px(200ppi)の高解像度で非常に見やすくなっています。

  • 明るく高解像度なディスプレイキー

ディスプレイキーはカコカコとしたタッチで、パンタグラフ式のキーボードのような柔らかめの感触です。真ん中のキーにはホームポジションのような突起が付いているので、ノールックでも操作しやすいでしょう。

ディスプレイキーの下にあるページングボタンではページの切り替えが可能で、9個以上の機能にアクセスしたい場合でも自由に設定ができます。

  • ページを切り替えられる「ページング・ボタン」。最大15ページ分を設定でき、多くの機能を割り当てられる

また、先述の通りキーパッドにはスタンドが付属しているので、画面を見やすいように角度をつけて設置することもできます。キーパッドはUSB Type-Cケーブルでの有線接続ですが、このケーブルを固定するためのガイドも用意されているので、本体を傾けてもケーブルが邪魔にならないように配慮されています。

  • スタンドに立てれば角度がついて見やすい

  • ケーブルも邪魔にならない仕様

  • キーパッドはUSB-Cケーブルによる有線接続

  • ダイヤルパッドは単4形乾電池×2を背面に内蔵する

動画の編集作業で使用してみた

それぞれのデバイスをBluetoothとUSB Type-Cで接続し、Logi Options+上で認識させるとすぐにセットアップが完了。同ソフト上では各機能のカスタマイズも行えますが、まずは初期設定のまま使ってみることにしました。

なお発売日(10月24日)時点のネイティブプラグインはAdobeのPhotoshop、Illustrator、Premiere Pro、After Effects、Auditionなどのほか、14以上のアプリケーション・プラグインに対応。今後新たなプラグインやアイコンパックなどがダウンロードできる新しいプラットフォーム「LOGI マーケットプレイス」も開始する予定といいます。

さて、Adobeの動画編集ソフト「Premiere Pro」を立ち上げてみると、キーパッドの画面が自動的に切り替わり、Premiere用に最適化されて表示されます。

先述の通りAdobeのソフト用の設定がプリインストールされているので、いちいち設定を行わなくてもすぐに使い始めることができるというわけです。しかもアイコンのカラーがそれぞれのソフトに合わせてデザインされているという凝りっぷり。

  • Premiereを起動すると、紫を基調としたアイコンに変化

  • Photoshopではネイビーの背景&水色のアイコンに

まず、めちゃくちゃ初歩的な部分ですが、ダイヤルパッドのダイヤルで動画編集タイムラインのスクロール、ローラーでズームが行えるのが非常にありがたい!

今まではキーボードショートカットとマウスホイールの組み合わせで行っていた操作ですが、ソフトごとに組み合わせが異なる(Premiereはoption+ホイールでズームできるが、Excelではcontrol+ホイールでズーム、など)ショートカットに頭を抱えていたので、全部まとめて同じ操作に設定できちゃうのはかなり快適です。

また、アンドゥとリドゥがワンボタンで行えるのも想像以上に便利でした。「もうcommand+Zが指に染み付いてるしな……」なんて思っていましたが、ワンタッチでパッと入力できるだけで体感速度がこんなに変わるとは!

また、個人的にキーボード入力はキーストロークが深いほうが好みなのですが、こうした編集操作はストロークの短いボタンでカチカチ入力するほうが明らかにマッチしています。マズい、これを知ってしまうと戻れなくなってしまうかも……!?

  • ダイヤルパッドは各ボタンにアクセスしやすい

もちろんキーパッドの操作も快適です! タイムライン上の各ツールの切り替えや、クリップのエフェクトコントロールなどの表示をワンタッチで行えること、それらのショートカットキーを覚えずともサクサク操作できるのがありがたい。こうしたデバイスはOBS Studio(動画配信用ソフト)などと相性が良いイメージでしたが、ローカルの編集作業でもかなり活躍してくれます。

ただ、使っていくうちに「この機能はあまり使わないな」「この機能はここにセットしておきたいな」という細かい点が気になってくるのも事実。というわけで、Logi Options+でのカスタマイズもチェックしていきましょう。

Logi Options+で各機能をカスタマイズ!

Logi Options+でデバイスを認識させると、デバイスの画像を見ながら機能のカスタマイズが行えるようになります。たとえばダイヤルパッドのカスタマイズ画面を開くとこんな感じ。ダイヤルやローラー、4つのボタンの機能を自由に設定することができます。

  • 各ボタンの機能を自由に設定可能

ちなみにこちらの右下のボタンに初期設定されている「Action Ring」はロジクール独自の機能で、マウスカーソルの周りに各機能のランチャーを表示させることができます。もちろんこのリングの項目もカスタマイズできるので、マウス入力を多用する項目を立ち上げたい時にはキーパッドより素早く操作することができるかも。

  • マウス操作をサポートしてくれるActionRing

話が逸れましたが、キーパッドのカスタマイズ画面も見てみましょう。といっても、9つのキー上に設定したい操作を直接ドラッグ&ドロップするだけで設定できるので非常に簡単です。

すでにキーに設定されている項目同士を入れ替えることもできるので、スマートフォンのホーム画面をカスタマイズするように直感的に行えます。

  • アクションメニューからドラッグ&ドロップするだけの簡単操作

これらは基本設定の他に、先ほどのPremiereのように各ソフトに合わせた設定を用意することも可能です。もちろん任意のソフトに合わせて新規作成することもできるので、今回は普段使っている楽譜制作ソフト「MuseScore」用の設定を作ってみることにしました。

好きなソフトに合わせて機能を割り当ててみる

本製品はそれぞれのソフトに合わせた設定がプロファイルとして保存されているので、新たにプロファイルを作成して設定していきます。

自分自身で新規作成することはもちろん、プロファイルをインポートすることもできるようなので、環境を移行したり、他のユーザーが作成したプロファイルを共有してもらうこともできそうです。

  • インストールされているソフトの中から選択してプロファイルを作成

  • Adobe用のプロファイルはバリエーションも用意されている

先ほどのようにキーパッド上にショートカットキーなどの操作をドラッグ&ドロップしていくわけですが、それぞれのキーアイコン画像なども詳細に編集することができます。やろうと思えば、先ほど紹介したAdobeのソフト用の設定のように凝ったデザインにすることもできそうです。

  • 表示されるテキストのフォントやアイコン画像、色やレイアウトも自由に設定できる

というわけで、楽譜の制作で使用するそれぞれの音符への切り替えボタンを作成してみました。アイコン画像は「いらすとや」さんのものを使用させていただきましたが、かなりわかりやすく仕上がったのではないでしょうか!?

  • 各音符を可愛いデザインで表示

  • ソフトを立ち上げるとすぐに反映される

MuseScoreはフリーソフトでありながら自由度の高い楽譜データの作成ができることが魅力的なのですが、ショートカットキーがわかりづらかったり、そもそも日本語キーボードだとショートカットが上手く動作しなかったりと、ビミョーに使い勝手が気になるところもチラホラ……。

しかしKeypadにショートカットを設定することで、(少なくともパッと使ってみた感じは)問題なく動作させることができました。「無くてもいいけど、あると細かいストレスを解消してくれる」という使い方が、様々なソフトに対して眠っていそうです。これは使い込み甲斐がありそうだ……。

  • ショートカットを多用するなら、平置きでも使いやすいかも

片手デバイス初心者にもオススメなコンソールだった

以上、「MX クリエイティブ コンソール」のご紹介でした。筆者はこれまで「キーボードショートカットがあれば片手デバイスなんて要らないっしょ」などと思っておりましたが、今回のレビューではそんな固定観念を見事に打ち砕かれてしまいました。

使っているうちに「あったほうが絶対便利」であることに気付かされ、いつの間にか必須になっているこの感覚は、かつてスマートウォッチに抱いていた先入観に近いものがあるかもしれません。

今回のようにキーボードの隣に置いて使用するだけでなく、液晶タブレットや板タブレットを主に使用する人にとっても相性バツグン。初めての片手デバイス選びで迷っている……なんて方にも、強力な選択肢となりそうです。皆さんのクリエイティブをより快適にサポートしてくれるパートナーとして、ぜひ本製品をチェックしてみてくださいね。

  • 液タブ・板タブユーザーにもうってつけ

  • 快適なクリエイティブ・ライフを!