神奈川県海老名市にある「ロマンスカーミュージアム」で、謎解きゲーム型コンテンツ『ロマンスカーと不思議な恋物語』が5月8日にスタートしました。デジタルとアナログを組み合わせた体験型コンテンツで、館内だけでなく外に出て解き進める構成になっており、海老名の街の魅力にも触れられます。

今回は実際に謎解きゲームをプレイしつつ、本コンテンツの実現を支えているカシオ計算機のスマートフォンアプリ「MEGURUWAY(メグルウェイ)」とロマンスカーミュージアムの担当者にお話を伺いました。

街のシンボルでもある「電車だけじゃない」ミュージアム

ロマンスカーミュージアムは、小田急電鉄の特急列車・ロマンスカーの歴代車両などを展示している鉄道博物館で、2021年4月、海老名駅前にオープンしました。

館内には3000形(SE)、3100形(NSE)、7000形(LSE)、10000形(HiSE)、20000形(RSE)の歴代ロマンスカー5車種と戦前に製造された小田急線最初の車両「モハ1」の実車が保存されているほか、新宿から小田原・箱根に至る沿線の風景を詰め込んだ巨大ジオラマや展望デッキ、入館者以外でも気軽に立ち寄れるカフェ「ビナキッチン」などがあります。

  • 2021年に開館した「ロマンスカーミュージアム」。歴代ロマンスカーの展示が目玉

    2021年に開館した「ロマンスカーミュージアム」。歴代ロマンスカーの展示が目玉

「電車だけじゃない、ワクワクを。」というコンセプトを掲げており、単に鉄道好きが楽しめる保存施設には留まらず、近年再開発が進む新しい街のシンボルや憩いの場にもなるような工夫がなされています。

鉄道好きに限らず楽しめる一風変わった催しも多く、今回始まった謎解きゲームもまさにその一つ。企画制作にはRiddleTimezが協力しており、ボリューム・難易度ともに本格的な仕上がりです。家族や友人、恋人同士などで楽しいひと時を過ごせますし、海老名に足を運んでみて良さを知るきっかけにもなるでしょう。

ロマンスカーミュージアムの営業時間は10時~17時(毎週火曜日休館)。入館料は大人(中学生以上)900円、小学生400円、幼児(3歳以上)100円。ゲームに参加するには謎解きキット(2,000円)の購入が必要です。また、各自のスマートフォンを使うのでこちらもお忘れなく。

  • 展示車両はモハ1、3000形(SE)、3100形(NSE)、7000形(LSE)、10000形(HiSE)、20000形(RSE)の6車種。写真はRSEで、2012年までJR東海 御殿場線に直通する「あさぎり」で使われていました

    展示車両はモハ1、3000形(SE)、3100形(NSE)、7000形(LSE)、10000形(HiSE)、20000形(RSE)の6車種。写真はRSEで、2012年までJR東海 御殿場線に直通する「あさぎり」で使われていました

  • 室内を見られる展示車両もあります。写真はRSEの運転席

    室内を見られる展示車両もあります。写真はRSEの運転席

  • 至る所にロマンスカーだらけの館内。謎解きの手がかりは展示物だけではないかもしれません

    至る所にロマンスカーだらけの館内。謎解きの手がかりは展示物だけではないかもしれません

謎解きゲーム『ロマンスカーと不思議な恋物語』を体験

さて、今回は取材の一環として『ロマンスカーと不思議な恋物語』を実際に一通りプレイしてきました。謎解きゲームという性質上どうしてもネタバレになってしまうため詳細な記述は控えますが、雰囲気だけでもご参考になれば。

まずは受付で謎解きキットを入手し、ロマンスカーミュージアムに入館。スマートフォンにはカシオの「MEGURUWAY」アプリをインストールしておきましょう。

  • ロマンスカーミュージアムの受付で謎解きキットを購入しスタート。まずは館内で手がかりを探していきます

    ロマンスカーミュージアムの受付で謎解きキットを購入しスタート。まずは館内で手がかりを探していきます

序盤は館内で流れる映像や展示車両などから手がかりを探し、冊子に書かれた問題を解いていきます。

大まかに言えば「問題を考える・解くのは紙、答え合わせとストーリー進行はアプリ」という具合に使い分けられており、書き込みながら考えたり複数人で見ながら相談したりしやすいアナログの強みと、進行に迷わないよう誘導しやすいデジタルの強みを組み合わせて丁寧に作られているなという印象で、こういったイベントに慣れていない人でも遊びやすそうだと感じました。

  • 冊子を見て考えたり紙を組み合わせて解いたりとアナログの良さもありつつ、困ったときのヒントや街に出る場面でのマップ連携などデジタルでしっかりアシストしてくれるところもあります

    冊子を見て考えたり紙を組み合わせて解いたりとアナログの良さもありつつ、困ったときのヒントや街に出る場面でのマップ連携などデジタルでしっかりアシストしてくれるところもあります

中盤からはミュージアムを飛び出し、海老名の街を歩きます。今度は街中にあるものがヒントになってくるので、近くに住んでいる人や通い慣れた人でも、あまり自分では行かないスポットや見過ごしていた物など、いつもと違う視点で街をじっくり眺めるからこその発見がありそうです。

謎解きの難易度は本格派。最初に渡されたキットに入っている冊子やシートを組み合わせて答えを導き出すアナログパートもあれば、アプリならではの意外性のあるギミックを使ったものもあり、ひたすら画面や冊子とにらめっこするのではなく柔軟な発想が必要でなかなか頭を使います。

想定プレイ時間は約3時間とのことで、17時閉館であることを考えると午前中のスタートがおすすめ。ゲームの進行状況に応じて周辺のお店で使えるクーポンが手に入るので、途中で食事や休憩をとりながら1日じっくり遊ぶのが良いでしょう。

ロマンスカーミュージアム&MEGURUWAY担当者インタビュー

ここからは、ロマンスカーミュージアムを運営する小田急エージェンシーの小泉さんとカシオ計算機の青田さんに、謎解きゲーム型コンテンツ『ロマンスカーと不思議な恋物語』を提供する背景やねらいについてお聞きします。

  • 小田急エージェンシーの小泉さん(写真左)とカシオ計算機の青田さん(写真右)にお話を伺いました

    小田急エージェンシーの小泉さん(写真左)とカシオ計算機の青田さん(写真右)にお話を伺いました

――今回スタートした謎解きゲーム型コンテンツ『ロマンスカーと不思議な恋物語』も含めて、ロマンスカーミュージアムさんでは一般的な鉄道博物館や保存施設とはひと味違う、鉄道ファン以外にも興味を持ってもらえそうなイベントを多く開催されていますよね。こういったアイデアはどこから生まれているのでしょう?

小泉:当館には「電車だけじゃない、ワクワクを」というコンセプトにありまして、鉄道ファンはもちろん、鉄道にはあまり詳しくない・興味がないという方でも楽しんでいただけるような企画をしたいと常に考えております。例えば今ですと、横浜中華街にある水族館「横浜開運水族館 フォーチュンアクアリウム」さんとのコラボ企画も開催中です(※7月15日まで)。

――立地的にも駅を出てすぐの目に留まりやすい場所ですし、館内の様子を見ても地元の方を中心にさまざまな方が訪れる場所になっていそうですね。

  • 小田急線海老名駅に隣接した立地で、駅を出るとすぐにミュージアムカフェ「ビナキッチン」が見えます。ちょっとレトロな洋食を中心としたメニューが揃っており、もちろんカフェだけの利用もOK

    小田急線海老名駅に隣接した立地で、駅を出るとすぐにミュージアムカフェ「ビナキッチン」が見えます。ちょっとレトロな洋食を中心としたメニューが揃っており、もちろんカフェだけの利用もOK

――その点で言えば、この謎解きゲームも鉄道好きに限らず幅広い層に楽しんでもらえる内容になっていると感じましたが、あえて言えば「こんな人に遊んでもらいたい」というターゲットはありますか?

小泉:友人同士や恋人同士はもちろん、実際にやってみて「これから親しくなりたい人」にもすごくいいんじゃないかと思いました。クイズを一緒に考えたりとか、自然とコミュニケーションができるじゃないですか。絆が深まったり、意外と知らない一面が見られたりもしそうです。

――たしかに会話のきっかけになるというか共通の話題ができるので、互いのことをまだあまり知らない間柄でも話しやすそうですよね。ストーリーのテーマも「恋物語」でした。

小泉:ロマンスにちなんだストーリーというだけでなく、実は歴代ロマンスカーと関係のあるキーワードなどもあって、鉄道ファンの方だと「おっ」と思う部分もあるかもしれません。深いところまで考えてくださった謎解きだなと思いました。

――ストーリーや問題の作成はどういった体制で行われたのですか?

青田:謎解き制作会社のRiddleTimezさんがギミックとストーリーの草案を考えてくださり、カシオではその謎を活かしながら没入感のあるストーリーに仕上げていきました。

――これまでのMEGURUWAYの導入事例としては自治体などによるデジタルスタンプラリーが多く、謎解きゲームという形式は今回が初めてかと思います。どんなところを工夫されましたか?

青田:やはり謎解き自体はアナログ的なものだと思うのですが、そこにソフトウェア・アプリケーションというデジタルのものを絡めることで、より何か面白い体験になればいいなというところはすごく工夫しました。周辺エリアの実際にあるオブジェや看板を使ったり、スマートフォンのカメラやセンサーを使ったギミックを入れたり、デジタルとアナログの掛け合わせで普段あまりない体験を提供できたと思います。

――『ロマンスカーと不思議な恋物語』を実際にプレイしてみて、ミュージアムのコンテンツでありながら館内を見て回るだけでなく外に出て街の魅力に触れる時間が長く取られていることに驚きました。ロマンスカーミュージアムの取り組みとして、地域を盛り上げていくことも重視されているのでしょうか?

小泉:ロマンスカーミュージアムとしては鉄道の魅力だけでなく海老名や街の魅力もみなさんに知っていただきたいという思いがあります。ミュージアム以外にも楽しいところがたくさんあるので、ミュージアムのコンテンツを通して海老名の魅力をみなさんに知っていただきたいですし、よりこの街を好きになっていただきたい、訪れていただきたいですね。

――プレイ時間は3~4時間ぐらいと結構ボリュームがあるので、じっくりと街のことを知ってもらえる良いきっかけになりそうですよね。

小泉:途中でクーポンがもらえるので、カフェでお茶しながら考えていただくのもいいなと思います。

  • 海老名駅の東口にある「ビナウォーク」。小田急の駅から見て反対側、JRの線路を挟んだ北西には「ららぽーと海老名」も2015年にオープンしている

    海老名駅の東口にある「ビナウォーク」。小田急の駅から見て反対側、JRの線路を挟んだ北西には「ららぽーと海老名」も2015年にオープンしている

――ロマンスカーミュージアムのコンテンツを通して海老名の魅力を伝えたいというお話がありましたが、実際どんなところが魅力だと感じられていますか?

小泉:私はけっこう地元なので、子どもの頃から海老名を見ていまして。ビナウォーク(※2002年開業の複合商業施設)ができて、前は森や田んぼだったところがどんどん開発されて人が来るような街になっていって、小さいながらにすごく感動したことを覚えています。ここ10年ぐらいでさらにいろんな商業施設ができたり、小田急電鉄の本社も実はそこに……

――えっ、小田急の本社って海老名にあるんですか!? 新宿とかなのかなと……

小泉:そうそう、そこの建物に移転したんですよ(ミュージアムのすぐ近くにある建物を指す)。そんなわけで、小田急も街づくりにとても力を入れている街のひとつになっていますね。これからもっともっと発展していくでしょうし、ロマンスカーミュージアムが3年前にオープンして、一緒に海老名を盛り上げて成長していく存在になれているのが嬉しいなと思います。

青田:私はアプリのデバッグで先々月ぐらいに初めて海老名に来て、すごく素敵な街だなというのが第一印象でした。街の魅力はなかなか普段生活していても気付きにくいところもあると思いますが、MEGURUWAYは自分から行くきっかけがなかったような場所にも周遊させることができるアプリです。すでにある地域資源のようなものを我々のアプリを組み合わせることでより広めていけますし、素敵な街の魅力をもっと伝えるお手伝いができれば良いなと思っています。

――本日はありがとうございました。