2024年3月27日から4月7日までタイの首都バンコクで「バンコクモーターショー2024」が開催されました。大手メーカーの最新自動車などが展示されましたが、タイで開催されたイベントだけに日本ではみかけない自動車メーカーの出展や、タイならではの製品などが展示されていました。今回はその中からちょっと変わった製品を紹介します。

  • タイで開催されたバンコクモーターショー。中国の自動車メーカーの出展も多い

バンコクを訪問したことのある人ならば、市内あちこちでバイクが走っており、バイクタクシーも多いなど市民の生活の足になっていることを知っているでしょう。とはいえバイクからの排気ガスは大気汚染を引き起こしていることから、バイクの電動化も進んでいます。電動バイクは中国メーカーの製品が多い一方、タイのメーカーも製品を展示していました。その中の1つ、STROMは変わった展示を行っていました。写真を見ると、電動バイクが水に浸っています。

  • STROMの電動バイク

タイはスコールが多く、道路の排水事情も悪いことから、大雨が降ると道路がまるで川のようになることもよくあります。電動バイクはバッテリーを搭載するため水は厳禁な乗り物ですが、STROMのバイクは40cmの水の中でも安全に走行できるそうです。地元メーカーならではの現地の生活環境を考えた設計と言えるでしょう。

電動バイクではありませんが、1人乗りのホンダの電動モビリティ「UNI-ONE」も展示されていました。すでに日本でも試乗が行われていますが、椅子に座って身体を前後に動かすだけで走行できるなど、誰もが簡単に移動できるツールとして注目を集めています。車いすの代わりに使うことも可能でしょうから、バリアフリーツールとしても活用が期待されます。

  • ホンダのUNI-ONE

さて自動車メーカーで気になるのは最近勢いを増している中国のEV(電気自動車)メーカーの展示です。1月にラスベガスで開催されたCES2024に出展したXPENGもブースを構えていました。

  • XPENGブース

XPENGはCESで「空飛ぶ車」を発表・展示しましたが、バンコクモーターショーでは乗用ドローン「XPENG X2」を展示しました。このXPENG X2はドバイで実際に商用テストを行うなど、量産できるレベルのドローンです。

座席は2つ。自動運転にも対応するので乗客2名だけで飛ぶこともできるとのことです。本体質量は560kgとこの手の製品としては軽量。最大積載量は200kgです。最高速度は130km/h、最大航続距離は35分で、都市内のエアタクシーや荷物のデリバリー用途に使うことが想定されています。

  • XPENG X2

XPENGはロボットの展示も行っていました。一見すると犬のように見えますがかなり大柄で、これは馬のロボットである「Robot Pony 2nd Gen Prototype Premiere」です。製品名からわかるようにまだプロトタイプの試作品で、ブース内でも動作しない状態で展示されているだけでした。

  • 馬型ロボットの「Robot Pony 2nd Gen Prototype Premiere」

顔の部分はディスプレイになっており表情を表示することも可能です。子供が乗ることで愛玩ロボットとして使うこともできます。しかしそれだけではなく工場やオフィス内でちょっとした荷物を運搬する用途にも使えます。さらにしっぽの部分にロボットアームを取り付ければ、荷物などを掴んで背中に乗せることもできます。工場内で必要なパーツをピックアップしてラインに乗せる、なんてこともできるのかもしれません。現時点ではまだコンセプトに過ぎないのですが、犬より大きな馬型ロボットならではの新しい用途がいずれ見つかることでしょう。

  • 尻尾をロボットアームにすることで腕のようにも使える

こちらはHOXIDというメーカーのEV(電動自動車)「ID7」ですが、このメーカーは3輪モデルを得意としており横幅の狭い小型車を多数展開しています。フロント部分は流線型のボディーで1輪の前輪を隠しており、パッと見ると3輪モデルには見えません。シートは前に1つ、後ろに1つの2人乗りです。日本の軽自動車をさらに小型にしたような製品であり、パーソナルな移動ツールとしての需要がありそうです。

  • 3輪EVの「ID7」

中国メーカーは他にも数多くの出展が見られましたが、聞いたことも無いようなメーカーが多く展示されているEVも見たことのないものばかりでした。どことなく有名メーカーの製品に似たデザインのものもありましたが、そのあたりはどの業界でも「あるある」なのでしょう。中国のEVメーカーがここに来て急成長していることが実感できました。

  • 知らないメーカーのEVが多数展示されていた

こちらのメーカーは自社のEVの小型電動モデルをブースに置いて、来場者のお子さんが自由に乗れるようにしていました。モーターショーは家族連れの来客も多いのですが、そんなお客さんをブースに呼び込もうと自社製品のミニチュアカーを作ってしまうのも勢いのある中国メーカーだからこそ出来るのでしょう。

  • モーターショーの来客の子供用に電動ミニカーまで用意

モーターショーというと大手自動車メーカーの最新製品をコンパニオンが紹介する、というイメージがありますが、バンコクのモーターショーは変わった製品が見られるなど先進国のイベントとは異なる楽しさがありました。来年も中国やタイから新しいメーカーの出展がありそうです。

  • 先進国のモーターショーには見られない展示が多かった