SDカードもついにPCI Experss転送。将来は「爆熱対策」も

SDアソシエーションブースでは、CP+初紹介となる次世代メモリーカード「SD Express」を前面に紹介していました。ほかの高速メモリカードが、転送にPCI Expressを採用しており、高速化の手法としては一般化しているので、SDアソシエーションとしても参入という感じです。

なお、SD Expressの最初の仕様であるSD 7.0が発表されたのは2018年とかなり前なのですが、SDアソシエーションズが最後にCP+に出展したのは2017年なので、CP+としては初紹介ということになります。

  • SDアソシエーションは、一般来場者の入口からほど近い場所にブースを構えていました

  • メーカー展示としてはSanDisk、Lexar、キオクシア、Nextorageがありました

  • 新規格のSD ExpressがCP+初展示となります

  • 規格自体は、数年前にSD Version 7.0として発表済で、すでに製品が3メーカーから発売済み。SanDiskは今回参考出品となります

SD Version 9.1では、SD ExpressのスピードクラスであるE150/E300/E450/E600も策定。UHSスピードクラスのV90で8k動画に対応しているので、それ以上の速度を何に使うのかというと、マルチストリームでの動画転送に対応します(自動運転や監視カメラでの記録を想定しているようです)。

  • 最新規格として、SD Version 9.1を先日発表。マルチストリームに対応したSD Express Speed Classを発表していますが、これでSDカードのスピードクラスは4種類あり、ロゴだらけになりそうです

SD Expressのカード製品はADATA、GTS、Phison、SanDiskの4製品が展示されており、SanDiskのみ参考出品となっていました。一方、メーカー別の小ブースではSanDiskが展示だけでなく、ライブベンチマークも行っていました。

【お詫びと訂正のお知らせ】記事の初出時、SD Expressカードの出展メーカーに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。記事は修正済みです。(2024年2月29日 23:45)

  • SanDiskブースでは、SD Expressカードの参考展示に加え、ライブデモで速度テスト結果を出していました

  • 画像はライブではないのですが、4種類のテストすべてを表示させています(ライブデモはシーケンシャルリードのみのテスト)

  • キオクシアは代表的な製品展示を行っていました

  • 最近発表した、SDXC最大容量となる2TB製品も展示。10万円という価格を聞いてウヘェとなる方が多かったですが、東芝時代から10万円程度の「最大容量製品」をいち早く市場投入していたイメージがあります(超古い話でいうと、当時16MBカードをいち早く市場投入した際もそのぐらいの価格でした)

一部のデジタル一眼でUHS-IIという高速転送規格が採用されていますが、まず登場する製品ではPCIe Gen3x1(これがSD Version 7.0)。これでもUHS-IIの2倍ほどの速度が得られます。将来的には、Gen4x1やGen3x2/Gen4x2に拡張される予定(これがSD Version 8.0)ですが、2レーン転送ではピン数が足りないのでピン数も拡大します。

ただし、microSDの形状では2レーンの製品は今のところ予定されていません。また、SD Expressの過去互換性はUHS-Iまでなので、UHS-II対応のデジタルカメラにSD Expressのカードを入れると速度がUHS-II比で1/3になってしまうので注意が必要です。

パソコン自作派は、PCIe Gen4の初期や現在のPCIe Gen5のM.2 SSDがかなり熱を持つということを理解していると思いますが、これはSD Expressでも同様です。状況によっては100℃を超え、サーマルスロットリングが入って転送速度が落ちるとのことで、対応製品はその点にも配慮した設計になるといいます。

後方互換性に関して注意があると説明しましたが、リーダー製品はそういうわけにはいかず、会場にも展示があったGenesys Logic社のGL9767はSD ExpressにもUHS-IIにも対応しており、現在唯一UHS-IIとSD Expressの認定が取れているチップという説明がありました。

なお、UHS-IIカードは各社まだ継続販売しますが、従来UHS-IIのmicroSDHC製品を販売していた会社は「デジカメ主体なので」という理由で生産終了となっています。対して、Nextorageはドローン等の利用性を想定し、今後UHS-IIのmicroSDXCカードを販売する予定があると予告していました。

SDアソシエーションブースに出展している会社のなかで、LexarとNextorageは別途ブースを構えていました。Lexarは、かつてMicronの傘下でしたが、2017年に中国企業のLongsysにブランドごと売却。新生Lexarとしてのお披露目の場としてCP+を選んだということになります。

  • 日本市場では再参入となるLexarブース。もともとのブランドイメージがかなりよかったので、その勢いが継続するかどうかがポイントだと思います

  • 各種メモリーカードをラインナップします

ブースでのイチオシ製品は2つ。1つは、物理的に丈夫なことをアピールするARMORシリーズ。CFexpressカードのようにSDカード表面に金属プレートを配置することで物理的に頑丈で防水・防塵にしあげたもので、ブースでは水没させた展示を行っていました。ARMORシリーズとしてはSDカードのほか、USBストレージも対応します。

  • 耐衝撃、防水、防塵性を高めたARMORシリーズを発表。SDカードの表面に金属プレートを装着しています。右側はUSB SSD

ハイスピード製品として、PCIe Gen.4に対応したCFexpressカードも展示していました。高機能製品に強みがあるので、製品展開には注目したいところです。

  • CFexpressカードはType A/BともにPCIe Gen.4対応の製品も展示

NextorageはSDカードも販売していますが、こちらも高機能製品に強みのある会社で、PCIe Gen.4対応のCFexpressカードのみならずUSB 4.0対応リーダーも展示していました。本来は同時発売の予定でしたが、リーダーは遅れてしまったとのこと。現行のPCIe Gen.3対応のリーダーよりも大きくなっている理由として「高速転送で発熱があるため、ヒートシンクの分大きくなったと説明していました。他にもSUNEASTが前回に引き続き出展しており、パフォーマンス&コスパをアピールしていました。

  • Nextorageブース。中央のステージを全面的に押し出していますが、製品も4カ所で展示

  • CFexpressのUSBリーダー。右が現行のPCIe Gen.3のもので、左が近日発売のPCIe Gen.4対応のUSB 4.0リーダー。放熱対策で大きくなったと説明していました

  • ここ数年知名度を上げているのがSUNEASTです

  • iPhone 15の背面に取り付けて、動画などを直接SSDに記録できるとアピールしていました

CP+でのメモリカードは、連写や動画撮影という高速転送のニーズがあるので、新規格のアピールの場として使われていますが、機器の対応が追い付いていない点には要注意です。

たとえば、CFexpressのPCIe Gen.4製品は確かに高速ですが、まだデジタル一眼カメラでGen.4製品はなく、高速カードによる撮影メリットはありません。対応カードリーダーを使うことで、その後のワークフローは高速に転送できます。

また、使い込んだメモリーカードはHDDほどではありませんがフラグメンテーションの問題があるので、適宜「完全フォーマット」をした方がよいとセミナーで語っていたカメラマンもいました(SDアソシエーションは公式フォーマッターを無料配布しており、CFexpressではカメラ側で対応している機種が多いと説明されました)。

  • 高速規格が出るのは良いのですが、互換性も気にする必要があります。SD ExpressカードはUHS-II転送をサポートしないため、UHS-IIカメラにSD Expressカードを入れるとUHS-I転送になるため、速度が1/3に落ちます

  • このため、リーダー用のLSIでは両方の互換性を持った製品があり。Genesys Logic社のGL9767は現在唯一UHS-IIとSD Expressの認証が取れた製品であるとアピールしていました

  • GL9767のパソコン用ボードも展示