2023年10月12日から16日まで5日間にわたり、電子機器や家電の大型展示会「香港エレクトロニクス・フェア 2023(秋)」が香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催されました。今回は22の国と地域から約3,200の出展者が集まり、世界各地から多くの来場者が訪れました。毎年、春と秋に開催されてきましたが、コロナ禍で2020年から中止が続き、HKCEC全館での開催されるのは4年ぶりとのことです。
香港エレクトロニクス・フェアには、最新技術や製品を展示する「スタートアップゾーン」もあるものの、基本的には香港や中国広東省深セン、東莞などのメーカーや工場が製品サンプルを展示して取引を行うトレードショーとしての位置付けが中心です。いわゆる「新製品の展示会」とは一風変わった雰囲気をお伝えします。
家電を仕入れて売る輸入商社から家電メーカーにもなれる
ブースを見て回ると、「ジェネリック家電」とも呼ばれる日本の中小家電メーカーの製品に似た製品サンプルも数多く見かけます。サンプル製品をそのまま輸入して日本で販売したり、自社ブランドのロゴを付けてもらって自社ブランド製品として販売したりすれば、すぐに誰でも「メーカー」になることも可能な場なのです。もちろん、日本で販売するには日本の規格や法規に合わせた仕様変更が必要な場合もありますが、日本ではまだ見かけることの少ない製品をいち早く販売すれば、大ヒットする可能性も秘めています。
魅力的な製品を仕入れて売れば家電の輸入販売業者になれますし、そこで見つけたメーカーや工場に自社で企画した商品を設計・製造してもらってメーカーになることも。さらに自社で商品企画から設計まで行い、製造だけ委託するファブレスメーカーになることもできます。
では、どういった製品サンプルが展示されているのでしょうか。今回、筆者は報道陣として参加しましたが、バイヤーとして訪れたとしたら、どのような製品をいくらくらいで仕入れられるのか、さまざまなブースで聞いてみることにしました。
香港エレクトロニクス・フェアを訪れて最初に驚いたのは、「ピカピカBluetoothスピーカー」の多いこと多いこと。あまりにも数が多すぎますし、日本でもBluetoothスピーカーは現実として飽和状態なので今さら参入するのは無茶ですが、自社ロゴを付けて得意先に配るノベルティグッズにはちょうどいいかもしれません。
その中から、水に浮くBluetoothスピーカーをデモ展示していたShenzen Haike Innovation Electronicsのブースで仕入れ値を聞いてみました。
ブースで聞く情報は「仕入れ価格」と「MOQ(Minimum Order Quantity/最低発注数量)」です。MOQは100個~もあれば、200個、500個などさまざま。今回聞いた最も大きいものだと1,000個までありました。
IP68の防じん防水性能を備え、RGBのLEDライトがキラキラ光るBluetoothスピーカー「HK608」の仕入れ値は12米ドル(1ドル150円換算で約1,800円)、MOQは1,000個とのことでした。こちらは中国のeコマースサイトAlibabaでも店舗を運営しており、サンプル商品を購入できるようになっています。
アウトドア風のブースを展開しておしゃれな雰囲気を醸し出していたNowGo Internationalのブースは、Bluetoothスピーカー「NowGo C1」を調査。仕入れ先が自社ブランドで販売する場合の仕入れ値は105米ドル(15,750円)/1000個で、「NowGo」ブランドのまま販売する場合は価格をさらに下げることも可能とのことでした。この製品は2色展開しており、「1色あたりのMOQは1,000個ですが、日本のマーケットなら2色1,000個でも大丈夫です」(担当者)とアピールしていました。
自社ブランドを展開している海外メーカーの場合、そのブランド製品をそのまま輸入販売するという選択肢もあります。魅力的な製品を多く手がけているメーカーを見つけたら、日本での独占販売契約を結ぶというのも一つの手です。
JWH Audioのブースでは、スピーカー内蔵サングラスを展示していました。スポーティーなデザインの「G120」は15米ドル(約2250円)、ややチープな雰囲気の「G100」は5.6米ドル(約840円)とのことでした。どちらもMOQは1,000個です。似たような製品、Amazonなどでは3,000円くらいからあるので不思議ではないものの、ちょっと価格の安さに驚きました。
日本で見たことある調理家電も……
続いて生活家電を見ていきましょう。Zhuhai Feilong Electric Applianceの回転焼き鳥メーカー「Kabob Master」は、初回注文時のMOQは1,000個、仕入れ値は18米ドル(約2,700円)。2回目の注文からはMOQが2,000個になるそうです。
同じブースのロティサリーチキンメーカー「Vertical Rotisserie Grill」は29米ドル(約4,350円)、MOQは980個。1つのコンテナにちょうど入る数量とのことでした。開いたり閉じたりしてさまざまな調理ができる両面焼きグリル「Folding Multi-function Grill」は34米ドル(約5,100円)、最初のMOQは1000個、2回目以降は2,000個とのことでした。
Olansi Healthcareブースで目をひいた、タッチパネル液晶を搭載した電動炭酸水メーカー「Olansi W60 Sparkling Water Dispenser(OLS-W60)」は、318米ドル(約47,700円)/300個。炭酸水だけでなく、粉ミルク調乳用の温水やコーヒー用のお湯(85℃)、95℃のお湯といったように、さまざまな温度の水や炭酸水を出せる高性能ウォーターサーバーといったところです。仕入れ値で318米ドルはなかなかの価格ですが、水タンクモードに加えて、水道に直結するパイプラインモードも備えているとのことなので、かなり魅力的に感じました。
Dongguan Sun-Smile Intelligent Technologyのブースで展示デモを行っていた窓用ロボット掃除機「Window Cleaning Robot B12B」は、66米ドル(約9,900円)/500個、小型モデル「S60-3」は52米ドル(約7,800円)/500個でした。
次はヘルスケア家電を。Pangaoのブースで展示していたEMS(筋電気刺激)とヒーターを内蔵するネックマッサージャー「PG-2601B19」、そしてウエストマッサージャー「PG-2645L」は、どちらも20米ドル(約3,000円)/1000個でした。さらに送料や関税なども加わるとはいえ、円安の状況でも比較的リーズナブルに感じられます。
Zhongshan GL Electronicsのブースでは、複数の子育て家電を展示していました。どれもMOQは1,000個で、熱で蚊に刺された痛みを和らげる「モスキートヒーラー」は7米ドル(約1,050円)、大人にも使える赤ちゃん用の爪磨き「ベビーネイルバッファー」は4.5米ドル(約675円)、鼻づまりを解消する鼻吸引器は8.5米ドル(約1,275円)でした。こちらもかわいらしいデザインながらお手ごろです。
Alibabaに店舗も展開するShenzhen SeamoonCloud Technologyのブースでは、日本向けのスマートロック「Smart Door Lock M510J」をデモンストレーションしていました。サムターンをドライバーで取り外して装着するタイプのスマートロック、60米ドル(約9,000円)/100個とのこと。
CR123電池で動くのは一般的なスマートロックと同様ですが、はがれ落ちるリスクのある両面テープ接着ではなく、ドライバーでしっかりと取り付けられる点がメリットと言えそうです。仕入れ値は聞き損ねてしまいました……。別途指紋認証パッドや暗証番号パッドも用意されていました。
Kaiwei Electronicsのブースでは、世界92以上の国や地域で506以上のブランドで展開されているという、レンタルモバイルバッテリー端末「Charge Eight」を展示。こちらは250米ドル(約37,500円)/200個とのことです。200台という台数は決して少なくないためハードルは高いですが、これを日本語にローカライズして導入すれば、すぐにモバイルバッテリーレンタルビジネスを始められます。
香港エレクトロニクス・フェアは、日本ではそれほどメジャーな存在ではありません。日本人の来場者も多くはないようです。しかし掘り出し物をいち早く見つけて販売すれば、企業だけでなく個人でも輸入販売ビジネスをスタートすることも可能です。米ラスベガスで開催のCES、独ベルリンで開催のIFAのように、各社が最新テクノロジーを持ち寄って大々的に発表する場ではないですが、ビジネス視点で見るとなかなか興味深い展示会かもしれません。