今回はWindowsにおけるアプリ管理を改めて考えてみたい。対象は基本的にプライベートでPCを使用するコンシューマーユーザー。ある程度の規模の企業ユーザーだと業務で使うPCは会社から支給(貸与)されるだろうし、そうしたPCはエンドユーザーが自由にアプリをインストールできないことも多い。業務用PCに余計なアプリは不要という向きもあるだろう。
さて、Windowsの比較としてLinux系を見てみると、Linux系はコントリビューター(貢献者)が用意したパッケージをリポジトリー経由、モバイルデバイスは各社が運営するアプリストアにて、OSにインストールしたアプリを更新する。一方のWindowsは、アプリを配布するWebサイトから圧縮ファイルをダウンロードし、インストーラー(MSIパッケージ)を実行するか自身で任意のフォルダーに展開する。ただし近年は、アプリ自体が更新機能を持つことが多くなった。
一昔前はWebサイトの更新をチェックするアプリも多用され、更新情報を提供するブログやニュースサイトも盛り上がっていたものだ。ユーザー自身でアプリを管理するのは煩雑なのだが、OS全体を見渡す意味では有益だった(もちろん現在でも)。
MicrosoftはWindows 8時代に独自のアプリストアを用意した。それが現在のMicrosoft Store(旧Windows Store)だ。アプリストアは開発者やアプリ提供組織から収益を得られると同時に、アプリの品質を自社が管理可能という利点も大きい。Microsoft StoreではPCゲームや映像コンテンツの配信・販売も行っているが、アプリはWindows 10時代までUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)限定であり、Windowsのアプリ市場を支えてきたデスクトップアプリ(Win32アプリ)は未サポート。のちに、パッケージ情報を同梱するMSIX形式を導入することで対応した。
登場直後は筆者も期待してMicrosoft Storeに関する記事や書籍を執筆したのだが、アプリストアとしての存在感は……。それでも、Microsoft Storeのみで提供しているアプリがあったり、AV1 Video Extensionに代表されるWindowsの拡張機能を利用・更新できたりするメリットはある。
Windowsの設定から「アプリ更新」のスイッチをオンにすれば、アプリの自動更新も行われる。ただし、Microsoftアカウントへのサインインが欠かせない。少し詳しく見るとレジストリの「HKEYCURRENTUSER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\ContentDeliveryManager」キーで動作を制御しているようだが、連動するタスクも見当たらない。どのタイミングでアプリを更新しているのかは不明だ。
筆者は一時期、「OneDriveでアプリを共有」するためにポータブルアプリや圧縮ファイル形式を選択していた。コロナ禍による外出機会の減少から各PCでアプリを共有する利点が減り、冒頭のアプリ管理を見直すことにしたわけだ。
改めて整理するとWindowsアプリは、インストーラー型、圧縮ファイル型、Microsoft Store、ソースのビルドなどで入手できる。いずれも実行可能まで数ステップの操作を必要として煩わしい。そこで推奨したいのがwinget(Windowsパッケージマネージャー)。
wingetはMicrosoftが開発したコマンドライン型のパッケージマネージャーだが、Linuxのパッケージ更新と同じく、ワンライナーで実行できることが最大の利点だ。現時点では開発者が用意したChangelog(更新履歴)を確認できず、更新できないパッケージもいくつか存在するが、その際は「winget upgrade」を実行して更新アプリを確認してから、WebサイトでChangelogを見る。エラーが発生するパッケージはアプリ自身で更新させればよい。その後「winget upgrade --all」の一括更新や、「winget upgrade powertoys」とパッケージを明示して更新する。コマンドラインのほか、WingetUIを併用する選択肢もある。
極端なことを言うと、アプリは本当に必要なのだろうか。Windowsは膨大なアプリに支えられ、そのシェアを拡大してきたOSだ。例えば用途にもよるが、メモ帳よりも高機能なテキストエディターを使用したほう便利である。起床時間の大半はPCの前に座っている筆者も最近はアプリの管理に疲れ、「wingetで全部更新できれば……」と考えている。
アプリの入手方法を一本化するためにMicrosoft Storeやwingetの活用を推奨したいと述べてきたが、個人的にアプリは必要最小限で十分。必要に駆られてからインストールすればよい。幸いにもWindows 10やWindows 11は「復元」でOSをほぼクリーンアップできる。そんな気持ちの移り変わりもあり、更新内容が乏しく関心が薄れていたWindows 11 バージョン23H2の登場が楽しみになってきた。