MRとVR、両方の没入型エンターテインメントが楽しめる米Metaの新しいヘッドセット「Meta Quest 3」が発売されました。筆者のように裸眼視力の弱いユーザーがQuest 3による体験を満喫するために欠かせない、Zenniの「Meta Quest 3用 度付きレンズ」の魅力をお伝えします。

  • Meta Quest 3に装着して視力を補正できる、Zenniの「専用度付きレンズ」を導入してみた

メガネの上からヘッドセットは困難。ならば専用度付きレンズだ

Meta Quest 3はスマホやPCとの接続が不要なスタンドアロン型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)です。片目あたり2,064×2,208ピクセルの解像度を持つ2つのディスプレイと、Infinite Display光学スタックを組み合わせた「Infinite Display」を備え、リフレッシュレートは最大90Hzから、今後のソフトウェアアップデートで120Hzまで対応予定。よりスムーズな動画表示を実現します。

  • Meta Quest 3のディスプレイは片目あたりの解像度が2,064×2,208ピクセルの高精細な映像表示を実現する

Quest 3は、1台のデバイスでVR(Virtual Reality:仮想現実)とMR(Mixed Reality:複合現実)の表示を切り替えながら楽しめるデバイスですが、やはり前身であるOculus(オキュラス)シリーズも含む、Meta Questシリーズ初のMRデバイスであることがこの製品の特長。高精細なフルカラーのパススルー映像に引き込まれます。米クアルコムがXRデバイスのために最適化した最新システムICチップ「Snapdragon XR2 Gen 2」を搭載しているので、動画表示はとても滑らかです。

ところが、筆者は裸眼の視力が弱いうえに、コンタクトレンズも苦手。以前Metaが開催した実機の体験会で試したところ、筆者がふだん使っているメガネのフレームは幅広すぎたので、メガネをかけたままQuest 3を着けることは困難でした。Quest 3の発売後に実機を借りて試していますが、最もフレームの細いメガネならなんとか“Meta Quest 3・オン・ザ・メガネ”ができるものの、内側でメガネが浮いてしまうため、心地よくエンターテインメントに入り込めません。

  • フレームの横幅がカツカツなので、先にメガネをMeta Quest 3の内部に装着・固定してからヘッドセットを装着するスタイルとしていた。メガネのフレームにテンションがかかってしまうのが難点

やはりベストコンディションでQuest 3を楽しむのであれば「専用の度付きレンズをつくるべきだろう」ということで、今回の取材のために、アメリカのアイウェアブランド・Zenni Opticalが提供する「Meta Quest 3専用 度付きレンズ」を製作してもらいました。このレンズの仕様や注文方法、デリバリーのプロセスは、基本的には通常通り購入する場合と同じだったので、これからQuest 3専用レンズの購入を検討する人にこのレポートが役立てば幸いです。

  • Zenni Opticalの専用度付きレンズを入手した

ZenniのQuest 3専用レンズは近視・遠視、乱視にも対応

ZenniのMeta Quest 3専用 度付きレンズは、MetaのWebサイトから購入可能です。HMDの左右レンズにはめ込む着脱式のオプションレンズで、価格は7,499円(ペア)。

購入時には、ユーザーの視力を記した処方箋が必要になります。誰かにレンズをプレゼントする場合を想定して、決済後に所定のメールアドレスに処方箋を入力するためのリンクを送ることもできますが、いずれにせよ商品の性格上、正確な処方箋の提供が求められます。

筆者は最近メガネを新調したので、そのときの処方箋がすぐに参照できました。データはZenniのWebサイト上のフォームから数値を手入力するか、または処方箋の画像をアップロードして送る方法が選べます。処方箋が見つからない場合は、眼科などに足を運びましょう。

  • 筆者がよくメガネを作る大手チェーン店が提供するアプリには、購入履歴の他に度数情報が保存されている。度付きレンズを購入する際にとても役に立った

Zenniのレンズは1枚のレンズに1つの補正機能を持つ短焦点レンズで、反射防止や防傷・防水コーディングのほか、指紋防止コーティングも付いてきます。近視と遠視だけでなく乱視の補正にも対応する、ふだん使いのメガネに近いレンズが制作できる点が、乱視持ちの筆者には一番感動的でした。スマートアイウェアの度付きレンズの中には「乱視には非対応」のものも多くあるからです。なお、このレンズはQuest 3専用で、前世代の「Meta Quest 2」とは互換性がありません。

注文した商品はFedExの国際貨物便でアメリカから直送されました。納期は注文から約2週間でしたが、Quest 3の発売直後だったので、もう少し空いている時期であれば早く到着するかもしれません。

やっとQuest 3の実力に出会えた満足感

Zenniから届いた商品を開封してみます。Quest 3の外箱と同じ色をしたダンボールの中には、左右1枚ずつレンズを封入したブルーの化粧箱があり、さらにレンズ用のキャリングケースには、マイクロファイバー製クリーニングクロスが封入されています。

  • Zenniからの直送便で届いたレンズ。パッケージはQuest 3の雰囲気に統一されていた

  • レンズとキャリングケースが同梱されている

  • 左右のレンズが個装になっていた

  • キャリングケースの中に、マイクロファイバー製クリーニングクロスが封入されている

  • キャリングケースのサイズはこんな感じ

  • 交換レンズはぱっと見は左右の区別が付きにくいカタチだが……

  • 側面にL/R(左右)が記載されているので見分けが付く

さっそくレンズを取り付けてみます。Quest 3本体のレンズのフチにある溝に度付きレンズをカチッとはめ込むだけで、着脱はとても簡単。薄いレンズなのでヘッドセットの装着感にも影響はありません。

  • Quest 3のレンズの上にZenniのレンズを装着

  • オプションのレンズは薄型なので装着感に影響はない

「見えるぞ! 私にもメタバースが見える!」

筆者は思わず自宅でシャウトしました。

Quest 3の中に無理矢理メガネを装着した場合と比べて、映像の見え方は圧倒的にクリアです。メガネのフレームに視界を遮られることもなく、またヘッドセットのフィット感も格段に安定します。ようやく「真のMeta Quest 3体験」に出会えた気分です。

  • 肉眼でQuest 3の高精細なメタバースの世界が見える! ようやく最高の体験に触れることができて歓喜しました

メガネ越しに見る映像との比較になってしまいますが、度付きレンズが加わることによって画面の周辺に歪みが生じたり、映像の明るさが落ちたりすることもありません。

  • Zenniのレンズを付けずに肉眼でディスプレイをのぞき込むと、筆者の場合左側のようなぼやけた見え方になる。Zenniのレンズを装着した後は、右側のようなとてもシャープなイメージに。MR/VR酔いに苦しんだ悲しみにさよならだ(画像はイメージ)

Zenniのレンズは、遠近両用のようなマルチビジョン仕様には対応していませんが、そもそもヘッドセットのディスプレイに表示される映像を見る用途であれば単焦点のレンズが適しています。

入手後から厳しい目線で粗探しをしながら度付きレンズを試用していますが、筆者は文句の付けどころを見つけることができません。最高の満足度です。視力の弱い方もMeta Quest 3を思い切り楽しむのであれば、ぜひ度付きレンズの購入を検討するべきです。