カシオ計算機の耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」は、優れた耐衝撃性と独創的なデザインによって、ブランドの誕生から40年を超えてファンを魅了しています。今回、G-SHOCKブランドを専門に扱う仮想世界のストア「G-SHOCK in VRChat」が10月6日にオープンします。カシオによるウオッチストアのコンセプトを、VRメタバースに再現したものです。

  • VRChatのメタバースにオープンしたG-SHOCKのストアを訪問しました

メタバースの活用によりG-SHOCKファンの拡大を狙う

「時計」はカシオ計算機にとってコア事業のひとつ。今回のメタバース企画を担当するカシオの足利昴治氏は、「G-SHOCKのブランド力を生かしてファン層を拡大することと、新規領域を創り出すという時計事業のミッションを果たすためにVRメタバースに挑戦する」と、ストア開設の経緯を語ります。

  • 企画を担当したカシオ計算機 時計BU 商品企画部 足利昴治氏

現在は数多くVRメタバースのソーシャルサービスがあります。足利氏は自ら複数のサービスを調査し、G-SHOCKのVRメタバースストアを開設する場所にVRChatを選びました。

「VRChat扱えるデジタルデータが多様で高い互換性が確保されていることから、カシオ計算機が保有するウオッチの3Dモデリングデータを活用できると考えました。何よりVRChatは、メタバースのエンターテインメントに感度の高いユーザーが世界中から集まる最大のプラットフォームです」(足利氏)

VRChatにG-SHOCKのワールドが誕生

VRChatでは、企業が作った「ワールド」にて「イベント」が開催され、「アバター」同士の交流が活発に繰り広げられています。カシオは、独特ともいえるメタバース上のアバター文化に着目しました。例えばアバターを通じて、VRChatに参加するユーザーがデジタルアイテムを着こなしながらファッションを楽しむ文化があるといいます。

「G-SHOCKもファッションアイテムとしてファンに愛されてきた時計です。メタバースでも、アバターが身に着ける腕時計として付加価値を提案できると考えました」(足利氏)

VR体験を通じた新たなG-SHOCKファンの獲得、ならびにメタバース空間で新たな腕時計の市場を創造することをミッションに掲げた足利氏の開発チームは、今回、VRChatで2つのことに挑戦しました。

ひとつはG-SHOCKの「ワールド」を作ること。本来、VRChat上ではメーカーが商品を説明するためのワールドを設けることは規約違反となります(2023年10月時点)。そこでカシオは、VRChatと直接パートナーシップを締結しました。そのうえで、G-SHOCKの魅力を伝えることを目的とした本格的なワールド、つまり仮想世界のストアをVRChatの中に起ち上げています。

  • VRChatの中にG-SHOCKの「ワールド」を開設

もうひとつは、G-SHOCKのアバターアイテムを展開するため、ワールドの中に「G-SHOCK STORE SHIBUYA」の店舗を再現して3Dアイテムを販売します。VRChat上のワールドに、pixivと連携した創作物の総合マーケット「BOOTH(ブース)」に開設した公式ショップがあります。

MY G-SHOCKのシミュレーターが楽しい

カシオが開催したメディア向けの体験会にて、G-SHOCKのVRメタバースストアを体験してきました。VRゴーグル、またはハイスペックなパソコンとモニターを手もとにそろえれば、一般のユーザーは無料でストアを訪問できます。

  • 市販のVRゴーグル、またはハイスペックなパソコンとモニターを使ってVRChatにアクセスしてから、G-SHOCKのストアに足を運びます

広々としたミュージアムに入ると、天井の中央には時計メーカーのワールドであることを意識させる「針と文字板」をかたどったモニュメントがあります。時計の内部から文字板を見上げているような、針の配置と動きに注目です。全周囲には等間隔に時字(アワーマーク)を並べました。

  • 天井には腕時計をイメージしたモニュメントを配置

正円形のホールの外壁側には、いくつかの展示台があります。

「G-SHOCKの新製品が登場したときに、VRChatを訪れた皆さまがバーチャルな実機に触れられる体験を提供したい」(足利氏)

2023年10月発売の新製品、MASTER OF Gシリーズの「MUDMASTER(GWG-B1000)」もここに展示を予定しており、ユーザーが触れると分解イメージを見られるような仕掛けも用意しています。

  • G-SHOCK新製品の解剖イメージが展示されています

エントランスの正面奥には、G-SHOCK STORE SHIBUYAの店舗をイメージしたスペースが。

「VRChat上で友人と待ち合わせをして、G-SHOCKストアで賑やかに試着を楽しんでいただけたら」(足利氏)

自由にカスタマイズが楽しめる「MY G-SHOCK」をベースに、各パーツの配色などを選んだG-SHOCKをメタバース上でシミュレーションして、アバターに試着できるサービスはとても楽しく、筆者も時間を忘れてのめり込みました。サービス開始後、カシオはこのストアでデジタルアイテムを販売することも計画しています。

  • 「MY G-SHOCK」をベースにしたカスタマイズを楽しめます

コンテンツの充実に期待

足利氏は、「メタバースでG-SHOCKの試着やカスタマイズを楽しんだユーザーが、現実世界で時計に興味を持ち、手に取ってもらえることを期待しています」と話しています。

今後はイベントといったコンテンツの企画も検討しながら、時間をかけてより良いサービスに育てたいと語る足利氏、その意気込みが伝わってきました。

  • 「アバターを使ってG-SHOCKの試着が楽しめるコンテンツなどを、VRChatに集う友だちと一緒に楽しんでほしい」(足利氏)

来場者がVRChatのストアでカスタマイズしたMY G-SHOCKのデータは、ユーザーが保存して店に持っていくことできるのでしょうか。足利氏は「技術的にできるところまでは分かっていますが、実際に提供するか検討を続けたい」と答えています。

また、VRメタバースが一定の成果を得ることができた場合、仮想空間内だからこそ実現できるウオッチのデザインも有り得るのではないかとも話していました。例えば、過去40年間に発売されてきたG-SHOCKのデジタルアーカイブをすべてそろえて、ワールドを訪れたファンがアバターに着せてみたり、現実世界のイベントと連動したりする企画があれば、メタバースを起点とした新しいG-SHOCKのファンダムが生まれるかもしれません。今後の展開に注目です。