2023年6月24日から25日にかけて、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際大会「VALORANT Champions Tour 2023 Masters Tokyo」(以下、Masters Tokyo)の最終2日間が、千葉県の幕張メッセにて開催されました。

6月11日に開幕した「Masters Tokyo」には、Americas、EMEA、Pacificの3つのインターナショナルリーグと、中国から出場権を獲得した計12チームが出場。グループステージを勝ち抜いた8チームがプレイオフに進出し、6月24日にはロワーファイナル、25日にはグランドファイナルが行われました。

記事では、記念すべき日本初開催となった国際大会「Masters Tokyo」を締めくくる、グランドファイナルの会場の模様を中心にレポートします。

2日間ソールドアウト、幕張メッセを埋め尽くす観客

2週間にわたって行われた「Masters Tokyo」は、6月11日から21日までの試合はTIPSTAR DOME CHIBAで、6月24日から25日までの最終2日間は幕張メッセにて開催されました。幕張メッセ最寄りの海浜幕張駅に到着すると、駅構内のあちこちに掲げられた「Masters Tokyo」の広告がファンを出迎えます。

会場になったのは、幕張メッセのホール1-3。中央にステージと巨大なモニターがあり、それを囲むように配置された座席を満員の観客が埋めつくします。さらにその外周に、オフィシャルグッズの物販ブースや応援ボードの記入ブース、企業ブースやキッチンカーなどが設けられました。

最終2日間「幕張メッセ - FINALS」のチケットは、ティアIVの6,600円から、ティアIの13,420円まで、4段階のティアで販売。トーナメント形式で行われる今大会では、どのチームが勝ち進むか事前にわかりませんが、最終2日間のチケットは発売直後のかなり早い段階でソールドアウトしていました。

会場では、もちろん海外から訪れているファンも見かけたものの、日本人ファンが圧倒的多数を占めていました。出場チームを問わず、『VALORANT』の世界トップチームが戦う試合を生で観たいと思った日本のファンが、それほど多かったということでしょう。

トーナメントを勝ち進み、24日のロワーファイナルに出場したのは、シンガポールチームの「Paper Rex」(Pacificリーグ)と、NAチームの「Evil Geniuses」(Americasリーグ)。そして、25日のグランドファイナルには、イギリスチームの「Fnatic」(EMEAリーグ)と、ロワーファイナルで勝利した「Evil Geniuses」が出場しました。

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    幕張メッセ最寄りの海浜幕張駅に降り立つと、改札横には「Masters Tokyo」の広告

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    駅構内ではあちこちに「Masters Tokyo」の広告が並び、ファンを出迎えた

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    入場列に並ぶファン。会場は幕張メッセのホール1-3に設けられた

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    ステージを囲むように並んだ客席をびっしりと埋め尽くす観客

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    物販ブースでは「Masters Tokyo」限定オフィシャルグッズを販売

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    応援ボードが配布され、記入ブースにはカラフルなペンが用意された

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    応援メッセージなどを自由に書き込める、寄せ書きファンボード

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    キッチンカーや出張コンビニなどが出店し、会場内で飲食物が買えた

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    企業ブースでは、さまざまな限定グッズの抽選やノベルティの配布が行われた

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    新ゲームモード「チームデスマッチ」を抽選で先行体験できるブースも

花道でハイタッチ! 目の前に現れるスター選手たちに感動

開幕から試合が行われていたTIPSTAR DOME CHIBAも、選手たちのプレイを十分間近に見られる会場でした。しかし、最終2日間の幕張メッセではより一層、目の前で選手たちを見られるチャンスがありました。最も特徴的だったのは、ファンが移動可能なエリアに花道が置かれていたことです。

ステージにつながる花道では、マッチごとに目の前を選手たちが入退場するだけでなく、両サイドから手を伸ばすファンに選手たちがハイタッチで応えます。想像以上に近くで海外のスター選手たちを見ることができ、感動するファンの声も多く聞こえてきました。

また、長く立ち止まることはできないものの、インターバルやマッチ開始直前までは、ステージ間近まで近づくことも可能でした。スタンバイ中、ステージ上からもファンに手を振るなど、最大限ファンサービスする姿が印象的だったのは、「Fnatic」のBoaster選手。メディアが向けるカメラにも、気づくとすかさずピースサインを返してくれるなど、神対応に驚かされました。

ただ、こうした選手との距離の近さが盛り上がりにつながった一方で、残念ながら今会場ではファンの移動に関するルールが明確ではありませんでした。特に大会終盤では、マッチの決着がつく前から多くのファンがステージ前に押しかけ始め、柵付近では危険を感じる場面もありました。

マナーとして、駆け寄らず自席にとどまったファンにとっては、不公平さを感じる部分もあったでしょう。もし今後も同様の大会が開催されるとしたら、安全性や公平性に配慮したルールが導入されることを期待しています。

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    グランドファイナルの白熱した試合に盛り上がる客席

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    各マッチの前後、花道の両サイドで選手の入退場を待つファン

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    両サイドから手を伸ばすファンに、選手がハイタッチで応える

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    花道でも、応援ボードを掲げて選手にアピール

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    日本ならではのキラキラにデコレーションした応援グッズも目立った

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    スタンバイ中、カメラに気づいてすかさずピースサインをくれる「Fnatic」Boaster選手

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    マッチ開始直前など、わずかなチャンスにステージ間近で撮影するファン

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    マッチ前には、「Fnatic」の選手たちが腕や手首をまわして準備体操する姿も見られた

優勝は「Fnatic」、史上初となる国際大会2連覇を達成

グランドファイナルは、今年2~3月に開催された国際大会「LOCK//IN サンパウロ」で優勝した王者「Fnatic」に対し、予想を覆す快進撃を見せたチャレンジャー「Evil Geniuses」が挑むマッチアップになりました。

「Evil Geniuses」はもともと、Americasリーグで振るわないスタートを切り、チームを率いるPotterコーチの解雇がささやかれるほどの状況でした。その後、「Evil Geniuses」はリーグプレイを6位でギリギリ突破し、プレイオフ3位で「Masters Tokyo」への出場権を獲得しています。こうした背景から、「Evil Geniuses」への期待はあまり高いとは言えませんでした。

ところが、今大会で「Evil Geniuses」は、各インターナショナルリーグ1位通過チームである「LOUD」、「Team Liquid」、「Paper Rex」の3チームをすべてなぎ倒し、グランドファイナルへ進出。誰も予想していなかった、驚きのシンデレラストーリーを歩みました。

そうして優勝トロフィーの目前まで上りつめた「Evil Geniuses」でしたが、グランドファイナルでは「Fnatic」が3-0でストレート勝利。試合終了後、「Evil Geniuses」の選手たちとコーチがステージ正面に並ぶと、観客たちは「EG! EG!」と健闘を称えるコールを送りました。

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    怒涛の快進撃で優勝トロフィーの目前まで上りつめた「Evil Geniuses」

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    中央に優勝トロフィーが輝くステージで、2チームはBo5のグランドファイナルを戦った

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    逆境を乗り越え、チームを導いたPotterコーチ(写真右)。まだ数少ない女性コーチでもある

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    試合を終え、ステージに並んだ「Evil Geniuses」に温かい声援が送られた

「LOCK//IN サンパウロ」に続き、圧倒的な実力を見せつけた「Fnatic」は、この優勝により国際大会2連覇を達成。2021年にスタートした公式大会「VALORANT Champions Tour」において、これまで国際大会を連覇したチームはおらず、今回「Fnatic」が史上初となる2連覇を果たしました。

実は、前大会「LOCK//IN サンパウロ」のグランドファイナルでは、「Fnatic」がホームチームであるブラジルの「LOUD」を破って優勝したことで、優勝インタビューが始まるころには、大半の観客が帰ってしまうという出来事がありました。しかし、「Masters Tokyo」では、満員の観客が最後まで見守り、盛大な声援とともに「Fnatic」の連覇を祝いました。

日本のファンが全チームに対してリスペクトあふれる声援を送っていたのは、もちろん最終日に限ったことではありません。海外のさまざまな選手やキャスター、ストリーマーたちは、こうした日本のファンによる応援の姿勢を称賛し、多くの人が「ぜひまた日本で国際大会を開催してほしい」と語っていました。

大勢のファンが見つめるなか、優勝インタビューで「Fnatic」のBoaster選手は、覚えてきた日本語でのメッセージを披露。「こんにちは、皆さん! 勝って皆さんの応援を聞けてうれしいです。応援ありがとうございます。みんな大好き! 次はもっと日本のチームと戦いたいです」と話し、会場は大歓声と拍手に包まれました。

Boaster選手が触れたように、今大会では日本チームが出場権を逃し、ステージに立つことが叶いませんでした。日本の会場や観客のすばらしさを感じれば感じるほど、やはり日本チームの姿を見られなかったことが悔やまれます。近い将来、日本で再び国際大会が開催され、ステージ上で戦う日本チームを応援できることを願っています。

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    今大会でも圧倒的な強さを見せ、優勝を手にした「Fnatic」

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    史上初の国際大会2連覇を果たし、トロフィーを掲げる「Fnatic」

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    優勝インタビューで見事な日本語のメッセージを披露した「Fnatic」Boaster選手(写真中央)

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    ステージを取り囲み、両チームに大きな声援を送ったファンたち

まだまだ多くの大会が続く、2023年の『VALORANT』シーン

「Masters Tokyo」が終了したばかりですが、2023年の『VALORANT』シーンは、まだまだ多くの大会が控えています。まずは、6月28日よりタイ・バンコクで開催される「Challengers Ascension」。2024年度のインターナショナルリーグへの昇格をかけた国際大会で、日本からは国内大会「Challengers Japan Split 2」で優勝した「SCARZ」が出場します。

また、7月14日からは女性限定の国内大会「Game Changers Japan」がスタート。国内大会を勝ち進んだトップ3チームが東アジア大会へ出場し、さらに東アジア大会の優勝チームが世界大会「Game Changers Championship」に出場します。昨年は、日本チーム「FENNEL HOTELAVA」が世界大会への出場を果たしており、今年も日本チームの活躍に期待が寄せられます。

そして、7月15日からは世界大会「Champions 2023」への出場をかけた予選「Last Chance Qualifier」(以下、LCQ)が始まります。PacificリーグのLCQには、日本から「ZETA DIVISION」と「DetonatioN FocusMe」の2チームが出場。「Masters Tokyo」で優勝した「Fnatic」が属するEMEAリーグは2枠、PacificリーグとAmericasリーグは1枠の出場権をかけて争います。ぜひ日本チームの活躍を応援しましょう。

・Challengers Ascension: Pacific(タイ・バンコク)
グループステージ:6月28日~7月4日
プレイオフ:7月7日~7月9日

・Game Changers Japan(オンライン)
Split 1 Open Qualifier:7月14日~7月16日 ※配信なし
Split 1 Main Stage:7月28日~7月30日 ※配信あり

Split 2 Open Qualifier:9月9日~9月10日
Split 2 Main Stage:9月30日~10月9日

・LCQ: Pacific(韓国・ソウル)
7月15日~7月23日

・Champions 2023(アメリカ・ロサンゼルス)
8月6日~8月26日