2023年4月12日の22時にNVIDIAの最新ミドルレンジGPU「GeForce RTX 4070」が発表となった。発売は2023年4月13日22時よりスタートする。今回は「GeForce RTX 4070 Founders Edition」を試用する機会を得たので、さっそくレビューをお届けする。一つ上位のRTX 4070 Tiに加え、前世代のRTX 3080/3070と比べてパフォーマンスや消費電力がどう異なるのかチェックしていきたい。

  • NVIDIAのリファレンスモデルと言える「GeForce RTX 4070 Founders Edition」。NVIDIAから発表されたRTX 4070の価格の目安は599ドルだ

    NVIDIAのリファレンスモデルと言える「GeForce RTX 4070 Founders Edition」。NVIDIAから発表されたRTX 4070の価格の目安は599ドルだ

Ada Lovelaceのスィートスポット? GDDR6Xは12GBの192bitで据え置き

NVIDIA最新世代のGPUである「RTX 40シリーズ」。すでにRTX 4090/4080/4070 Tiの3モデルが発売されているが、そこに最下位モデルとなる「GeForce RTX 4070」が加わった形だ。RTX 4070 Tiと同じく、WQHD解像度での快適なゲームプレイをターゲットにしている。まずは、スペックを紹介しておこう。

■GeForce RTX 4000シリーズのスペック
GPU名 RTX 4070 RTX 4070 Ti RTX 4080 RTX 3080
CUDAコア数 5,888 7,680 9,728 8,704
ベースクロック 1920MHz 2310MHz 2210MHz 1440MHz
ブーストクロック 2475MHz 2610MHz 2510MHz 1710MHz
メモリサイズ GDDR6X 12GB GDDR6X 12GB GDDR6X 16GB GDDR6X 10GB
メモリバス幅 192bit 192bit 256bit 320bit
RTコア 第3世代 第3世代 第3世代 第2世代
Tensorコア 第4世代 第4世代 第4世代 第3世代
アーキテクチャ Ada Lovelace Ada Lovelace Ada Lovelace Ampere
DLSS 3 3 3 2
NVENC 第8世代 第8世代×2 第8世代×2 第7世代
カード電力 (W) 200 285 320 320
システム電力要件 (W) 650 700 750 750
電源コネクタ 8ピン×2または300W以上の12VHPWR×1 8ピン×2または300W以上の12VHPWR×1 8ピン×3または450W以上の12VHPWR×1 8ピン×2

ポイントは、一つ上のRTX 4070 Tiとの違いだろう。メモリ容量とメモリバス幅はGDDR6X 12GBの192bitと据え置き。UDAコア数は1,792基減って5,888基となり、ブーストクロックも2,475MHzと少し低くなったが、その分、カード電力は200Wとかなり低くなり、推奨電源は650W以上と扱いやすさがグッとアップしている。ちなみにカード電力はRTX 3070 Tiが290W、RTX 3070が220Wなので、いかに低いか分かるところだ。価格は599ドルからとなっており、これはRTX 3070 Ti発売当時と同じ。原稿執筆時点では日本での価格は不明だが、RTX 3070 Tiデビュー時の価格から推測すると、10万から12万円が中心になるのではないだろうか。

電源コネクタは「8ピン×2または300W以上の12VHPWR×1」となっているが、8ピン×1仕様のカードが出る可能性もあるという。ショート基板で増設しやすいカードの登場を期待したいところだ。また、動画のエンコード目的でRTX 4070の導入を考えているなら気を付けたいのが、NVENCが1基になっていること。RTX 4090/4080/4070 TiはNVENCが2基あり、同時使用することでエンコード速度を高める「デュアルエンコード」が可能だったが、1基だけのRTX 4070はできない。

そのほか、Ada Lovelaceアーキテクチャの採用など基本的な特徴はRTX 4090/4080/RTX 4070 Tiと同じだ。詳しく知りたい方はRTX 4090のレビュー「「GeForce RTX 4090」の恐るべき性能をテストする - 4K+レイトレで高fpsも余裕のモンスターGPU」で確認してほしい。

性能テスト前にGeForce RTX 4070 Founders Editionを紹介しよう。リファレンス的なモデルなのでカード電力は定格通りの200W、ブーストクロックは2,475MHzだ。

  • GeForce RTX 4070 Founders Editionのカード長は244mm。GeForce RTX 4080 Founders Editionが304mmだったのでかなりコンパクトになった

  • 重量は実測で1,019gだった。GeForce RTX 4080 Founders Editionは2kgを超えていたので、ここでも小ささが分かる

  • 厚みはぴったり2スロット分だ

  • 補助電源は12VHPWR×1となっている

  • 従来の8ピン×2に変換するケーブルも付属

  • 出力はDisplayPort×3、HDMI×1とGeForceでは一般的な仕様

  • GeForce RTX 4080 Founders Edition(奥側)との大きさ比較

  • GPU-Zによる情報。ブーストクロックが2,475MHなのが分かる

  • カード電力は定格通りの200W

ベンチマークテスト - 性能はRTX 3080級で消費電力は150W以上低い

さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。Resizable BARは有効にした状態でテストしている。比較対象としてGeForce RTX 4070 Ti、GeForce RTX 3080、GeForce RTX 3070を用意した。いずれもファクトリーOCモデルだ。CPUのパワーリミットは無制限に設定。ドライバに関しては、レビュワー向けに配布された「Game Ready 531.42」を使用している。

■検証環境
CPU Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボード MSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリ Kingston FURY Beast DDR5 KF556C36BBEK2-32(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
システムSSD Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro(22H2)

今回はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を導入しているので、ゲーム系のベンチマークではカード単体の消費電力も合わせて掲載する。

まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

  • 3DMark

RTX 4070は一つ上位のRTX 4070 Tiに比べて10%~25%スコアダウンと言える。メモリ容量とバス幅が同じとは言え、CUDAコア数やブーストクロックが異なるので妥当な結果ではないだろうか。また、RTX 3080に近いスコアと前世代のハイエンドモデルに並んでいるのは注目すべきポイントと言える。

次は、実際のゲームを試そう。まずは、レイトレーシングやDLSSに対応しないゲームとして「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「オーバーウォッチ 2」を試そう。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ 2はBotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

  • レインボーシックス シージ

  • レインボーシックス シージのカード単体消費電力

RTX 4070 Tiに比べて4KとWQHDは約20%ダウンと3DMarkと同じ傾向だ。フルHDでRTX 4070/4070 Ti/RTX 3080がほとんど変わらないのは、描画負荷が軽いためフレームレートが頭打ちになっていると見られる。注目はカード単体の省電力だ。4Kで見ると、RTX 4070 Tiよりも約76W、RTX 3080に対しては約150Wも低い。さらにフレームレートで上回るRTX 3070よりも低いと、RTX 4070のワットパフォーマンスのよさがよく分かる部分だ。

  • Apex Legends

  • Apex Legendsのカード単体消費電力

Apex Legendはフレームレート制限を解除するコマンドを使っても最大300fpsまでしか出ないゲーム。RTX 4070 Tiレビューなど過去に掲載されたデータよりもフレームレートが低いと気づく人もいるだろう。スポットシャドウディテールに、これまでよりも描画負荷の高い「極」という設定が加わったためだ。このゲームに関してはRTX 3080とほぼ同等と言ってよいだろう。描画負荷が高くはなったが、それでも4Kで平均130fpsと十分快適にプレイできるフレームレートが出ている。カード単体の消費電力を見ると、フルHDならRTX 3080の約半分とワットパフォーマンスのよさがここでも見て取れる。

  • オーバーウォッチ 2

  • オーバーウォッチ 2のカード単体消費電力

オーバーウォッチ2も同じ傾向だ。RTX 4070は4Kでも平均85fpsと快適に遊べるフレームレートを出しており、WQHDをターゲットにしたGPUではあるが、軽~中量級の描画負荷のゲームなら4Kで十分プレイできると言ってよいだろう。

ベンチマークテスト - DLSS 3を使えばWQHDで高fps、4Kプレイも可能に

2023年3月23日のアップデートでレイトレーシングに対応した「エルデンリング」で試してみたい。リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。

  • エルデンリング

  • エルデンリングのカード単体消費電力

このゲームは最大60fpsなので、平均59fps出ていれば、概ね最高フレームレートで動作していると見てよい。レイトレーシングを最高画質設定するとさすがに描画負荷は重くなるが、それでもRTX 4070はWQHDまで十分プレイできるフレームレートが出ている。そして、最大60fps制限があることによって消費電力が低いのもポイントだ。

次は、レイトレーシングとRTX 40シリーズの強みである「DLSS 3」の性能を含めたテストを実行しよう。DLSS 3は従来からあるアップスケーラーの「DLSS Super Resolution」に、AIによってフレームを生成する「DLSS Frame Generation」を加えて、より高いフレームレートを出せるようにしたもの。フレーム生成はGPU側で行うため、CPUパワーが不足するシーンでもフレームレートを向上できるのが特徴だ。DLSS 3はRTX 40シリーズだけで使える技術で、それ以外のRTXシリーズではDLSS 2(DLSS Super Resolution)までの対応となる。DLSS 3を使うにはゲーム側の対応も必要だが、最近ではAAA級タイトルを中心に、実装するゲームが増加中だ。

まずは、「F1 22」と「Microsoft Flight Simulator」を試そう。F1 22は画質、レイトレーシングとも最高の「超高」に設定、ゲーム内のベンチマーク機能(バーレーン&晴天に設定)を実行、Microsoft Flight Simulatorはアクティビティの着陸チャレンジから「シドニー」を選び、60秒フライトしたときのフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

  • F1 22

  • F1 22のカード単体消費電力

  • Microsoft Flight Simulator

  • Microsoft Flight Simulatorのカード単体消費電力

F1 22はフルHDとWQHDでDLSS 3の威力が顕著だ。フルHDでDLSS無効時に比べて2.2倍、WQHDで2.4倍もフレームレートがアップしている。4Kでそこまで伸びていないのは、GPU自体の性能不足だろう。それでも平均92fps出ているので快適なプレイは可能だ。一方で、RTX 3080のフルHDでDLSSを有効にしても、それほどフレームレートが伸びていないのはCPUがボトルネックになっているからだろう。DLSS 3のフレーム生成はそういう場面でこそ活きる技術だ。

それがよりハッキリ出るのがMicrosoft Flight Simulatorだ。このゲームはCPUがボトルネックになりやすく、RTX 3080はその影響でDLSSを有効にしてもフルHDとWQHDはほとんどフレームレートが変わらない。その一方で、RTX 40シリーズはCPUがパワー不足でもGPU側でフレーム生成を行うのでフレームレートを伸ばせている。

また、消費電力を見るとDLSSを有効にするとレンダリング解像度が下がるためGPU負荷が減って、消費電力も低くなる。RTX 40シリーズだとそれが顕著だ。DLSSはフレームレートが上がって消費電力が低くなるという、優秀な技術と言える。

続いて、2023年4月11日のアップデートですべての光源を正確にシミュレートする「パストレーシング」に対応し、さらに描画負荷を高めた「サイバーパンク2077」を試そう。パストレーシング対応の「オーバードライブモード」は、技術プレビューという扱いでその描画負荷の高さから利用にはRTX 4070 Ti以上が推奨されている。どれほど重いのかお試しテストとみて欲しい。なお、サイバーパンク2077はDLSS 3にも対応している。テストは最高画質設定の「レイトレーシング:オーバードライブ」にし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。

  • 4月11日のアップデートでパストレーシング対応。現状は技術プレビューとなっている

  • サイバーパンク2077

  • サイバーパンク2077のカード単体消費電力

さすがに描画負荷は強烈に重い。DLSSを使わないと4Kではまともに動作しないほどだ。ただ、RTX 4070でもDLSSをパフォーマンス設定にすれば、WQHDまでは快適にプレイできるフレームレートを出せる。なお、RTX 3070のDLSS無効時の4KとWQHDの消費電力が低いのは、性能不足でまともに動いていないためだ。パストレーシングは非常に美しい光源処理が楽しめるので、RTX 40シリーズを使っているユーザーならぜひとも試してほしいところだ。

ベンチマークテスト - CGレンダリングやAI処理はRTX 3080を上回る

ここからはクリエイティブ系の処理をテストしていこう。まずは、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を試してみよう。

  • Blender Open Data Benchmark

一定時間内にどれほどレンダリングできるのかをスコアとして出すベンチマーク。junkshop以外はRTX 3080を上回った。RTX 4070 Tiに対しては2割減といったところだ。

続いて、ベンチマークアプリの「Procyon」に追加された「AI Inference Benchmark」を実行しよう。これは、GPUを使ってさまざまなAI処理を行いスコア化するもの。文章にしても絵にしてもAI処理が注目されている今、重要な性能と言えるだろう。Windows上で機械学習を行うためのAPIである「Windows ML」とNVIDIAの機械学習を高速に実行するためにSDKである「TensorRT」の両方を試している。

  • Procyon - AI Inference Benchmark

このテストではRTX 3080を明確に上回った。AI処理に使うならRTX 40シリーズが有利と言えそうだ。

総評 - 扱いやすいミドルレンジGPUの登場

最後にGPU温度と動作クロックの推移をチェックしよう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定している。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」の値だ。室温は22度。バラック状態で動作させている。

  • GPU温度と動作クロックの推移

ブーストクロックは2,655MHz前後で推移。仕様上のブーストクロック2,475MHzなので、ゲーム中はそれよりも高クロックになる。これは最近のGPUでは普通の動作だ。温度は最大65.2度と2スロット厚のコンパクトなヒートシンクとしては十分冷えていると言える。RTX 4070はそれほど発熱は大きくないとみてよいだろう。

と、ここまでがGeForce RTX 4070のテスト結果だ。RTX 3080と同等の性能をRTX 3070以下の消費電力で実現しているという圧倒的なワットパフォーマンスのよさが最大の特徴と言える。消費電力や発熱から考えるとコンパクトなサイズの製品も登場しそうと、RTX 40シリーズでもっとも扱いやすいカードとして人気が出そうとは思う。しかし、問題は価格だ。RTX 4070 Tiから2割ほど性能が落ちることを考えると、それなりの価格差は期待したいところ。RTX 4070 Tiは12万円台が出てきている。発売当初はともかく、10万円以下が普通になればブレイクするのではないだろうか。