アップルが、ボイスアシスタントのSiriを内蔵するスマートスピーカー「HomePod」の第2世代モデルを発売しました。iPhoneとHomePodがあれば、Apple MusicやApple TVで配信されているドルビーアトモスによる空間オーディオの対応コンテンツが、鮮やかに広がるサウンドで楽しめます。今回は、新しいHomePodで空間オーディオ再生を満喫する方法をまとめてみたいと思います。

  • 第2世代のHomePodが誕生。アップルの空間オーディオに対応するコンテンツの上手な楽しみ方を探求してみました。第2世代HomePodの価格は44,800円です

楽しい・癒やされる、空間オーディオの心地よい包囲感

アップルの空間オーディオは、ドルビーアトモスの立体音響技術をベースとする新しい没入スタイルの音楽体験です。高級オーディオや、ホームシアターのコンポーネントを手に入れなくても、iPhoneとAirPodsシリーズの組み合わせ、またはHomePodなどの手ごろな価格のデバイスでシンプルかつ手軽に楽しめるところが大きな魅力です。

ドルビーアトモスによる空間オーディオのコンテンツは現在、アップル独自のサービスではApple MusicのほかにApple TVが対応しています。FaceTimeアプリによるビデオ通話の音声も空間オーディオで聞けますが、今回はHomePodで空間オーディオを楽しむ方法にクローズアップしたいので、FaceTimeアプリの紹介はまた別の機会に譲ろうと思います。

  • 円筒型のスマートスピーカーで空間オーディオのコンテンツを再生すると、リスナーの周囲を包み込むようなリッチな立体音場が広がります

ドルビーアトモスによる空間オーディオは、リスナーの周囲360度をぐるりと包み込むようなリスニング感を特徴としています。その効果はどんな体験を生むのでしょうか?

例えば、Apple Musicの音楽コンテンツを聴くと、まるでコンサートホールやライブハウス、あるいは野外フェスのように開放的な空間で音楽を聴いているような生々しい感覚に浸れます。ジャズの女性ボーカル、クラシックピアノの静かな演奏は、自分の周りにふんわりと余韻が満ちるような心地よさに癒やされるはずです。

特におすすめしたいのが、ライブステージの録音系コンテンツです。2月17日にGLAYがApple Musicでリリースした空間オーディオ対応のライブアルバム「GLAY LIVE TOUR 2022 ~We♡Happy Swing~ Vol.3」のリアリティは圧巻です。幕張メッセ国際展示場に敷設された巨大な360度ステージで繰り広げられる演奏の感動が、Apple Musicを通じて何度も繰り返し蘇ります。

  • 圧倒的なライブ感が楽しめる、GLAYの最新空間オーディオ作品「GLAY LIVE TOUR 2022 ~We♡Happy Swing~ Vol.3」

空間オーディオがもたらす体験の価値は、豊かな音楽の広がりと包囲感、迫力の重低音などにとどまりません。例えば、映画視聴の際にも、作品の舞台に飛び込んでしまったかのような没入感が味わえます。Apple TV+で配信されているオリジナルコンテンツ「太古の地球から~よみがえる恐竜たち~」は、恐竜時代の大自然を家族揃ってリビングルームで旅するような不思議な体験を楽しませてくれます。

ホームAppからHomePodの空間オーディオ設定を決める

ここで、新しいHomePodで空間オーディオを「正しく再生する方法」をおさらいしましょう。

まずHomePodを設置する場所ですが、床の上や中空のボックスの上などに直置きするスタイルはなるべく避けましょう。スピーカーの振動がそれらに伝わり、音が不要にだぶついて締まりがなくなるからです。家電量販店などで販売しているオーディオ用のインシュレーター(制振アクセサリー)の上にHomePodを設置すると、引き締まったサウンドが楽しめます。

  • オーディオ用のインシュレーターを足もとに置くだけでも、HomePodのサウンドがビシッと引き締まります

  • インシュレーターはさまざまな製品が売られています。素材も金属やラバーなどさまざま

HomePodは、アップルが独自に設計したS7システムチップ、本体に内蔵する各種センサーとマイク、先進のソフトウェアが連係する「コンピュテーショナルオーディオ」により、置いた場所の音響特性を自動で検知してサウンドを最適化します。

  • HomePodは、設置された場所の音響特性を自動解析し、コンピュテーショナルオーディオによりサウンドを常に最適化して奏でます

なので、HomePodを壁に寄せたり部屋のコーナーに置いても、サウンドの雰囲気は変わらず一定のまま、そしてベストコンディションに保たれます。もし、手元にHomePodのような自動音響最適化の機能を持たないスピーカーがあれば、置き場所を変えて再生してみると、音の聞こえ方にバラツキが生まれることが分かると思います。

以上を踏まえて設置場所を決めたら、続いてHomePodで空間オーディオのコンテンツを正しく再生できるように、iPhoneの「ホーム」アプリの設定項目を確認しましょう。

HomePodの設定は「ホーム」アプリを開き、右上のアイコンをタップすると開くメニューリストから「ホーム設定」を選択、メンバーからHomePodのユーザーである自分の名前をタップします。次のページで「Apple Music」を選び、「ドルビーアトモス」をオンにします。

  • ホームアプリで右上のアイコンをタップし、ホーム設定を選択します(左)。続いてユーザー名を選択し、深いメニューに入ります(右)

  • Apple Musicの設定から、ドルビーアトモスのトグルをオンにします

この設定を済ませれば、あとはApple Musicの空間オーディオに対応する楽曲をHomePodで再生すると、立体音楽体験が自動で選ばれます。反対に、先ほどの設定をオフにすれば、空間オーディオ対応のコンテンツがいつも通りに再生されます。

「ホーム」アプリで選んだドルビーアトモスの設定は、Apple MusicのタイトルをHomePodのSiriで検索・再生した場合、またはiPhoneやiPadからAirPlayで再生した場合のどちらでも有効です。

Apple TV 4Kの設定が優先される

HomePodは、Apple TV 4Kの「デフォルトオーディオ出力」のスピーカーとして設定できます。せっかくApple TV 4Kを導入して、Apple TV+など動画配信のコンテンツが大画面テレビで楽しめるようになっても、テレビの内蔵スピーカーのサウンドがいまひとつモノ足りなく感じている方には、HomePodの導入を強くおすすめします。

  • Apple TV 4Kのデフォルトオーディオ出力をHomePodにします

Apple TV 4KとHomePodを連動させたあと、Apple TVの設定から「App」を選択し、「ミュージック」アプリの設定から「ドルビーアトモス」を自動に設定すると、空間オーディオ再生が有効化されます。

  • ミュージックアプリの設定を選択

  • ドルビーアトモスの設定を「自動」にします

この場合は「Apple TV 4Kの設定が優先される」ことを覚えておきましょう。Apple TV 4Kでドルビーアトモスの選択が自動になっていれば、先ほどの「ホーム」アプリからHomePod側のドルビーアトモスをオフにしていても空間オーディオ再生になります。反対の場合も同じく、Apple TV 4Kのドルビーアトモスが「オフ」であれば、こちらの設定が優先されます。

HomePodを2台揃えることができたら、それぞれを連係させてステレオペアの再生システムとして活用できます。空間オーディオもまた、ステレオペアで再生すると音場の広がりに豊かさが加わり、音像の定位が力強さを増してきます。結果、空間オーディオの立体感は音楽、映画やドラマなどコンテンツの種類を超えて高まることが期待できます。

  • HomePodが2台揃うと、シアター鑑賞の環境も充実します

44,800円のHomePodを2台購入すると、ユーザーにとっては9万円弱の出費となります。オーディオの著名ブランドが販売するスタンダードグラスのドルビーアトモス対応サウンドバーとほぼ同等の値段で、負けない音質を備え、可搬性能にも優れるHomePodのステレオペアはとてもお買い得だと思います。ステレオ再生に使わない場面では、1台ずつ別々の部屋で楽しむこともできるからです。

空間オーディオとは別件ですが、HomePodの設定には「低音を減らす」というメニューがあります。HomePodはコンパクトながらもパワフルなスピーカーなので、夜間に音楽や映画のサウンドを再生すると低音が響きすぎるように感じるかもしれません。そのような時に「低音を減らす」機能が奏功します。

空間オーディオの醍醐味をこの曲でチェック!

ドルビーアトモスによる空間オーディオに対応するコンテンツをApple Musicで探す方法を紹介しましょう。

ミュージックアプリの「検索」メニューを選択すると、カテゴリ検索の中に「空間オーディオ」が見つかります。こちらのページに入ると、空間オーディオに対応する新作から「注目のプレイリスト/アーティスト/アルバム」などトピックスから気になる楽曲が検索できます。ロックやクラシックなど、音楽のジャンルごとにおすすめの楽曲がまとめられているプレイリストも、知らなかった空間オーディオ対応の名作との出会いを促してくれます。

最後に、筆者がおすすめしたい空間オーディオ作品を紹介します。HomePodを手に入れたらぜひ聴いてみてください。

【1】アリス=紗良・オット アルバム「ナイトフォール」から『Clair de lune』

ピアニストのアリス=紗良・オットが、「夜という特別な時間帯が持つ神秘性、美しさ、孤独を表現した、3人のフランスの作曲家たちの作品」に焦点を当てたという、静謐なピアノ独奏曲のコレクション。クロード・ドビュッシーの代表作『Clair de lune(月の光)』は、HomePodによる空間オーディオ再生で聴くと、月明かりに照らされた夜の草原がわが家のリビングにたちまち広がります。魔法のようなひとときに浸れます。

【2】松任谷由実 アルバム「ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~」から『中央フリーウェイ』

ユーミンの爽やかなボーカルはもちろんのこと、この曲の一番の魅力は淡いエレクトリックピアノのメロディが醸し出す美味しい浮遊感ではないでしょうか。大学生の頃に、この曲を加えた「ドライブのBEST」をカセットテープにまとめて、カーステレオで鳴らしながらカノジョとデートした真鶴の夕陽を思い出します。第1世代のHomePodに比べて、中高音域の透明感がさらに増した第2世代HomePodの魅力がよく見えてくる曲です。

【3】クリストファー・ウィリッツ アルバム「Gravity」から『Crescent』

ベッドルームにHomePodを置いて、眠りにつく直前の「瞑想=メディテーション」のルーチンに空間オーディオはいかがでしょうか。心地よいアンビエントミュージックに包み込まれると、1日の疲れも吹っ飛びます。エンターテインメントで刺激を受けるだけでなく、心を静かに整える用途にも空間オーディオを徹底活用しましょう。