LINE、ヤフー、PayPayの3社は13日、オフラインとオンラインを横断したマイレージ型の販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」を発表しました。リアル店舗で購入しても、ネットで買い物しても、飲食店で支払ってもブランドごとのマイルが貯まっていく、そんなサービスです。2023年3月の提供開始を予定しています。
“三方良し”の販促DXに
国内の販促市場は、いまだダイレクトメールやチラシなどのアナログが中心。そのため「メーカー」はユーザーの購買行動などのデータが得られず、正確な効果測定も困難で、継続的で最適な販促活動がしにくいという課題を抱えています。また「ユーザー」は様々なキャンペーンがあるなかで、いま何がイチバンお得なのか分かりにくい状態。そして「小売り」には準備に手間がかかる、情報を効率よく届けられていない、という問題があります。
そこでZホールディングスのグループ企業であるLINE/ヤフー/PayPayの3社は連携し、それぞれの強みを最大限に活かしたマイレージ型の販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」をスタートさせます。LINE代表取締役社長の出澤剛氏は「グループの総力を挙げて販促のDXを推進していく。オフラインとオンラインをつなぎ、メーカー、ユーザー、小売り、三方良しの販促DXにしていきたい」と説明。将来的には、Zホールディングス全体で販促領域で年間売上1,000億円規模を目指していく、と意気込みます。
では実際、ユーザーにはどのようなメリットがあるのでしょう。これについてヤフー代表取締役社長 社長執行役員CEOの小澤隆生氏は「買えば買うほどお得なサービスになります」と紹介します。たとえばあるブランドのビールをよく飲んでいるユーザーの場合。その銘柄は近所のスーパーでも購入するし、ネットでも注文しており、また飲食店で飲むこともあるでしょう。その合計金額が一定額に達したら何%のPayPayポイントを付与する、そんな利用イメージです。
メーカーにとっては”お得内容”を自由に設計できるのも魅力です。たとえば、その商品をよく買っているユーザーに対してのみレジで新商品のサンプリングを渡す、一定条件を満たしたユーザーだけ価格を下げる(実際はPayPayポイントをキャッシュバックすることでダイナミックプライシングを実現する)、といったことを考えています。
メーカーにとってもLTV(顧客生涯価値)を最大化できるサービスです。「これまではお客様をいかに獲得するかに重きを置いていましたが、昨今では、1人のお客様にいかに利用してもらうか、つまりLTVの最大化がマーケティングにおける要望として大きくなってきた。そこに向けたサービスでもあります」(小澤氏)と言います。
ここで小澤氏は、あらためて「グループにPayPayが加わり、ユーザーがリアル店舗で購入したデータまで収集できるようになったので、今回のサービスを提供できるようになった」と説明。月間利用者数約9,300万人のLINE、月間利用者数約5,500万人のYahoo! JAPAN、登録利用者数約5,300万人のPayPayという、3社のユーザー基盤を活かして取り組みを進めていくと説明します。
なお、同日の発表時点で参加を表明している企業は、アサヒ飲料などの大手飲料・消費財メーカー、そしてウエルシア薬局/スギ薬局/サンドラッグなどの小売・eコマースなど。今後も順次、参加企業を拡張していくとしています。
最後にPayPay代表取締役 社長執行役員CEOの中山一郎氏が登壇し、メーカー向け販促サービスについて説明しました。今回の取り組みでPayPayは、特定の加盟店で利用できる従来型のPayPayクーポンに加えて、商品を限定できる新たなクーポンも2023年5月を目途に発行していきたい考え。ユーザーの利用方法はこれまで通りで、事前にPayPayアプリで商品のクーポンを獲得し、レジでPayPay決済すれば特典が自動適用されるとしています。中山氏は「これまでの小売店の販促サービスに加え、これからはメーカー向けの販促サービスも強化していきます」と説明します。
またLINE、ヤフー、PayPayの3社は、購買データを活用した継続的かつ効果的な販促を実現するため、メーカーや小売などの企業が参画する「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」を設立。今後、参画企業を順次拡大していく考えです。
長い名称は変更の余地あり?
このあと質疑応答の時間がもうけられ、LINEの出澤氏、ヤフーの小澤氏、PayPayの中山氏が記者団の質問に回答しました。
メーカー、小売店が独自に展開している既存のポイントプログラムの統合も考えているのか、という問いに中山氏は「皆さんがオリジナルで展開されているポイントサービスは大切にしていきつつ、互換性を持たせればポイントの交換もご案内できますし、あるいは各社のマイレージプログラムを代替することも可能です。いかようにも展開していけます」と回答。
手数料について聞かれると、小澤氏は「小売店に新たなコストは発生しません。参加いただくメーカーさんに、マイレージ参加の利用料をいただきます」。メーカー側はどのような情報を取得できるのか、という質問には「サービス開始当初は、顧客層、属性が分かる分析機能を提供します。順次、機能を拡張していきます」とのこと。
また、「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」という長い名称はなんとかならなかったのか、と聞かれると「ごもっともなご意見だと思います。来年3月までに新たな名称が決まるかも知れません。現在のところ、3社が協力していきますというところをご認識いただくため、この名称になっています」と小澤氏も苦笑い。
他社のポイントサービスと比較したときの強みについて聞かれると、出澤氏は「国内に5つくらいのポイント経済圏があるなかで、我々の強みはユーザー基盤と多種多様なサービスにあります。eコマースあり、フィンテックあり、決済もある。これ以上、ポイントを活かせるサービスを抱えるグループもないと思います。今後、Zホールディングス全体としても、ポイント戦略にフォーカスしていきます」と回答しました。