ワコムでは11月18日~19日の2日間、東京・新宿の特設会場にて年次イベント「コネクテッド・インク2022」を開催。初日のセッション『ダンデライオンアニメーションスタジオのリモート制作への挑戦!』では、同社がいかにしてリモートワーク主体でアニメ作品を制作できるようになったのか、その秘密が明かされました。

  • ダンデライオンアニメーションスタジオの関係者が、リモート制作をスタートした経緯について説明しました

コロナ禍をきっかけにリモートワークへ

ダンデライオンアニメーションスタジオは、2022年12月3日公開の映画『THE FIRST SLAM DUNK』の制作会社のひとつ。ほかにも『ドラゴンボール超』や『あんさんぶるスターズ!!Music』などアニメ・ゲームを中心として、CG制作に多数携わっています。

ダンデライオンアニメーションスタジオ テクニカルスーパーバイザーの西谷浩人氏は「弊社には80名ほどのスタッフがいますが、現在、そのうちの7~8割がリモートで作業しています。それまで会社の近くに住んでいた社員も、コロナ禍になりリモートワークが中心の世の中になると、家賃の安い地域に引っ越して行きました」と当時を振り返ります。

  • ダンデライオンアニメーションスタジオ テクニカルスーパーバイザーの西谷浩人氏(左)と、同社 経営管理室 採用広報の山崎拓哉氏(右)

これに同社 経営管理室 採用広報の山崎拓哉氏も、「それまで会社にスタッフが集まって仕事をすることが当たり前でしたので、リモートワークで仕事なんてできるわけがない、という意見も出ました。でもコロナ禍でせざるを得ない状況になった。そこで、在宅に移行しやすいセクションから切り替えていくことになったんです」と応じます。

  • セッションでMCを務めたのは、ワコム 代表取締役社長兼CEOの井出信孝氏(左)

セキュリティが高く、かつメンテナンスなどのサポート体制が整っているサービスを調べていたところ、リモートアクセスソフトウェアの「Splashtop(スプラッシュトップ)」にたどり着いた、と西谷氏。スプラッシュトップはリモートサポートなどのソフトウェアを開発するシリコンバレーで設立された米国企業です。

リモートワークでアニメを制作するため、ローカルPCでワコムのペンタブレットとSplashtopアプリを使うとペンタブの詳細データ(筆圧、傾きなど)が遠隔PCに転送され、遠隔PCからはワコムドライバーover Splashtopを介して最大60フレームの画面がローカルPCに転送される、という仕組みを構築しました。

  • ワコムのペンタブ×スプラッシュトップのコラボにより、リモートでも遅延のない作業環境ができたといいます

「まずはアプリを作ってもらい、弊社の数名でリモート環境をスタートさせました。課題にぶつかっても、スプラッシュトップに相談するとすぐにレスポンスがあって安心感が得られました。使用中のアプリも、スタジオからの要望に応える形でほんの数週間でみるみるブラッシュアップされていったんです」と西谷氏。

これにスプラッシュトップ チャネルセールスマネージャーの中村夏希氏は「いま絶賛開発中、というようなアプリを持ち込んで試してもらったりもしましたね。お客様からお声がかかると、すぐに形にできるのが弊社の強みです。是非、これからもたくさん使っていただいて、ご要望をいただければと思います」と笑顔でコメントしました。

  • スプラッシュトップ チャネルセールスマネージャーの中村夏希氏

これにワコムの井出社長は「先日、スタジオで山崎さんにお会いしたとき、まさに“一筆入魂”といった感じで作品に取り掛かっている姿を見ました。クリエイターさんは1本の線にも魂を込めています。だからリモートであっても、そんな遅延のない作業環境が大事になってくるんですよね」とコメントします。

  • スタジオで実際に山崎氏が作業している様子も紹介。ちなみに、山崎氏は現在採用・広報のポジションですが、以前はルック・コンポジットユニットのリーダーを務めていました

  • リモート描画の遅延による違和感を視覚的に解消する「Project Instant Ink」の技術開発を手がける、ワコム クラウドETコアプロジェクトリーダーの淺田一氏(左)、EMRモジュール/ファームウェア シニアマネージャーの加藤龍憲氏(右)

今後の展望について、西谷氏は「これからも基本的にリモートワークは続いていくものと思います。そこで弊社でもインフラ環境もさらにアップデートしたり、スタッフの意見を取り入れて働きやすい現場にしていきたい。ワコムさん、スプラッシュトップさんには引き続きご協力いただきながら、これからも良い作品を作っていきます」、山崎氏は「活動を支えてくださる方たちと二人三脚のような気持ちで、良い作品を作るという目標に向けて歩んでいけたらという気持ちです」と話していました。