Amazonがプライム会員向けに提供する音楽配信サービス「Amazon Music Prime」が11月1日に大幅リニューアルされ、聴き放題で楽しめる楽曲数が約200万から約1億に増えます。プライム会員は追加料金不要です。
今回、Amazon Music Japanのディレクター&ゼネラルマネージャーを務める島田和大氏に、同サービスのメニューを変更する狙いと詳細を聞くことができました。
また、Amazon Musicでは、スマホなどの端末にダウンロードしていつでもオンデマンドに楽しめる、ポッドキャストのオーディオコンテンツも同時に拡大します。同社のポッドキャスト シニア・コンテンツ・アクイジション・マネジャーの今井陽子氏にもインタビューしました。
Amazon Musicの「3本柱」
現在、Amazon Musicの音楽配信サービスは、約1億曲のカタログから任意の楽曲を選んでオンデマンド再生が楽しめる月額980円の「Unlimited」、プライム会員向けサービスに含まれる「Prime」と、Amazonアカウントを作れば誰でも無料で楽しめる「Free」の3種類に大別されます。
リニューアル後のAmazon Music Primeを含む、各サービスの大まかな仕様をまとめました。
【Amazon Music Unlimited】
- 月額料金:980円(プライム会員は880円)
- 楽曲数:約1億曲
- 再生方法:オンデマンド再生
- 広告再生:なし
- UltraHD/空間オーディオ:対応
- オフライン再生:対応
- Alexa音声検索:対応
【Amazon Music Prime】
- 月額料金:プライム会員料金(年額4,900円/月額500円)に含まれる
- 楽曲数:約1億曲
※従来の200万曲から上位のUnlimitedと同等の曲数に増加 - 再生方法:シャッフル再生(厳選された一部のプレイリストを除く)
- 広告再生:なし
- UltraHD/空間オーディオ:非対応
- オフライン再生:厳選された一部のプレイリストのみ対応
- Alexa音声検索:対応
※検索後はプレイリストの冒頭からシャッフル再生。曲数制限はあるが、一定数は検索した曲のオンデマンド再生が可能
【Amazon Music Free】
- 月額料金:無料(Amazonアカウント作成が必要)
- 楽曲数:約200万曲
- 再生方法:ステーション再生
- 広告再生:あり(楽曲の前後に挿入)
- UltraHD/空間オーディオ:非対応
- オフライン再生:非対応
- Alexa音声検索:対応
ほかのサービスよりもAmazon Musicが「いいところ」
「聴き放題」の音楽配信サービスは、ユーザーが楽しめる楽曲の数と種類、月額料金などが似通っていて、どれも同じに感じられるかもしれません。
島田氏はAmazon Musicの特徴として、オリジナル作品/独占配信の楽曲が聴けることや、ユーザーの好みに合わせたリスニング体験を提供するレコメンド機能を挙げています。音楽以外にもポッドキャストや、Amazon Music Studio Tokyoで制作されたライブストリーミング配信などが充実しています。
そして、Amazonによる姉妹サービスのプライムビデオやTwitchと横展開を組んで、独自性の高いコンテンツを作ることもできます。ユーザーにとっては、ECサービスを併用してCD/DVD、アーティストのオリジナルグッズを購入し、アーティストを支援できる喜びがAmazonを通じて味わえるというわけです。
今回AmazonがAmazon Music Primeのサービスを拡張する背景には「便利なプライム会員特典だけでなく、より多くの音楽と、音楽以上の価値をお客様に届けたいという思いがある」と島田氏は説明しています。
現在、国内のAmazon Musicのサービスは30〜40代前後の顧客層にもっとも多く支えられているそうですが、Amazonはその年齢層を若い18〜30代前半のZ世代にも広げるために、価格を据え置きながら、膨大なAmazon Musicのアーカイブを開放する判断に踏み切りました。
プライム会員は何が「お得」になる?
今回はAmazon Music Primeを中心にサービスの細かな仕様が変わります。
楽曲の再生方法は「プレイリスト単位のシャッフル再生」になります。従来のPrimeサービスは約200万曲のオンデマンド再生に対応していましたが、今回の変更にともない、すべての楽曲がシャッフル再生対応になります。
再生方法のイメージは次の通りです。たとえば聴きたい楽曲をAlexaによる音声検索で探すと、その楽曲を含む「プレイリスト」がヒットします。アーティストやアルバムの名称を条件に検索した場合でも、基本はプレイリストごとの再生になります。
プレイリストの中に聴きたくない曲や、あまり好きではないアーティストの曲が含まれている場合は「スキップ」もできますが、スキップできる回数には制限があります。島田氏はプレイリスト再生の活用術について「プレイリストをBGM的に“ながら聴き”したり、普段よく聴くアーティストやジャンルの関連楽曲に出会える機会として活用してもらいたい」と話しています。
一部、15件のプレイリストは例外として、ユーザーが聴きたい楽曲を選んでオンデマンド再生ができます。対象になるのは、その時々のヒット曲や推しの楽曲を集めたプレイリストになるそうです。
Primeで約1億曲が聴けるようになっても、上位のUnlimitedを選ぶ価値は十分にあると筆者は言い切れます。「オンデマンド再生」ができることも大きな理由のひとつですが、Unlimitedを選ばないと「Ultra HD(ハイレゾ)」や「空間オーディオ」が楽しめないからです。
PrimeやUnlimited、Freeの違いは、聴ける楽曲数や広告挿入の有無からも明らかです。Freeサービスについては、たとえばAmazon Echoシリーズのスマートスピーカーを購入して、とりあえず音楽配信サービスがどのようなものかを無料で試したい、という人に最適と考えられます。
ELLEGARDENの特別コンテンツを配信
Amazon Music Primeのアップデートに合わせて、人気アーティストのELLEGARDEN(エルレガーデン)とのコラボレーションが始動します。11月11日午前0時には、7組の新鋭アーティストが参加するELLEGARDENのトリビュートアルバム『ELLEGARDEN TRIBUTE』がAmazonオリジナルのコンテンツとして配信。さらにドキュメンタリーフィルム『ELLEGARDEN: Lost & Found』のAmazon Prime Video配信を11月末に控えているそうです。