2022年で45周年を迎えたバンダイのカプセルトイ事業「ガシャポン」。年間720種類(2021年実績)も発売されるという、さまざまな趣向を凝らしたカプセルの中身にばかり目が行きがちですが、実は自販機も人知れず進化しています。2022年11月から稼働予定の最新マシン「ガシャポンステーションW」をバンダイ本社で一足先に体験してきました。
国内外のキャッシュレス決済に対応した「ガシャポンステーションW」
カプセルトイ自販機といえば、コインを数枚入れてハンドルを回せばカプセルに入った小さなおもちゃが出てくるというシンプルな構造で、一般的には電源も不要なため、大規模な専門店からスーパーマーケットなどの片隅まで、ありとあらゆる場所に設置されています。
設置場所を選ばず、値段も手頃でついつい買ってしまうというのもガシャポンの強みですが、その一方で、近年は空きテナントの有効活用も兼ねて数百台規模のカプセルトイ自販機を並べる専門店も増えてきました。また、外国人観光客にも日本ならではの物として人気がありますし、最大で2,500円/回まで設定できるという大人向け高級路線「プレミアムガシャポン」のような新展開もあり、必ずしも「ついで買い」需要ばかりではなくひとつのカルチャーになっています。
ガシャポンステーションWはまさにそのような変化に対応した新型マシンで、国内外のキャッシュレス決済に対応したことが最大の特徴。日本の「PayPay」「d払い」「au PAY」「メルペイ」だけでなく、中国系の訪日客に利用者の多い「WeChat Pay」と「Alipay(支付宝)」も使えます。
マシンに入れる商品も幅広く対応しており、数百円の通常商品から先述のプレミアムガシャポン、そしてカプセル格納部を入れ替えることでA4サイズのクリアファイルなども販売できる「フラットガシャポン」仕様にもなり、多彩な商品を販売できます。
実はキャッシュレス決済対応のカプセルトイ自販機はすでに登場しており、「スマートガシャポン」という名称で2019年から展開中。ただし、スマートガシャポンは現金非対応のキャッシュレス決済専用機(交通系IC/コード決済)だったため、限られたスペースで多品種を販売したい設置店にとってみれば現金客とキャッシュレス決済を利用したい客に対応するためには倍のスペースが必要ということでもあり、導入に壁がありました。ガシャポンステーション“W”という名称は、1台で現金とキャッシュレスのどちらにも対応できることに由来しています。
キャッシュレス決済に対応するため、通常のマシンと違って設置にはコンセント(電源)が必要になりますが、通信回線に関しては数台ごとにまとめてLTE接続を行う専用機器が用意されているため、光ファイバーなどの回線工事は不要。また、設置条件の厳しい交通系電子マネーをあえて省いたことでも自由度が上がったといいます。
ガシャポンステーションWを導入する最初の店舗は、11月2日にオープン予定の「ガシャポンのデパート イオンモールKYOTO店」。同モール内の「ガシャポン バンダイオフィシャルショップ イオンモールKYOTO店」とあわせて西日本最大級のカプセルトイ専門店となる見込みの直営店で、バンダイのカプセルトイ新商品をすべて入荷するのはもちろん、ゲットした商品を置いてSNSなどで映える写真を撮れる「ガシャ撮りスポット」も設置されます。
実際にPayPayでガシャポンを回してみた
今回は実際にガシャポンステーションWでキャッシュレス決済を使った購入の流れを体験させてもらいました。まずはスマートフォンのQRコードリーダーでマシンの右下にあるQRコードを読み取ります。
すると、1台ごとに固有のWebページが開き、商品名と金額が確認のために表示されます。その下で支払方法を選択でき、今回はPayPayを指定。次の画面ではPayPayアプリに移動し、無事に支払いが完了しました。
決済が完了したという情報がLTE回線経由でマシンに飛ぶと、金額表示部が緑色に光ります。この状態になったらハンドルを回せるという合図。あとは通常通りハンドルを回せばカプセルが出てきます。ちなみに、支払いをして1分間ハンドルを回さなかった場合はキャンセル扱いとなり、返金処理が行われるとのこと。
私見ですが、やはりカプセルが出てくるまで中身が分からないワクワク感を演出する上で、このハンドルを回す儀式の存在は大きいはず。キャッシュレスで支払っても購入体験が味気なくならないのは嬉しいところです。その一方で、両替してコインを用意するという頭を冷やすタイミングが発生しない分、テンポ良くいくらでも回し続けられてしまうのはコレクターたちにとってはありがたくも恐ろしい機能かもしれません。
また、購入時に決済方法を選ぶような新たな操作が発生せず、キャッシュレス決済を使わない小さなお子さんなどが小銭を握りしめて買いに行く場合にも買い方が難しくならない実装方法となっている点も好感が持てます。シンプルながらよく考えられた仕様だなと感じました。
「ガシャポン45周年プロジェクト」ほかにも続々
冒頭でも少し触れましたが、ガシャポンは1977年から展開され、2022年に45周年を迎えました。このガシャポンステーションWも45周年プロジェクトの一環という位置付けです。最後に、同時発表された他の45周年プロジェクトもご紹介します。
まずは「キンケシフルアクションスペシャル 01」。ガシャポン初期から40年近く愛され続けているヒット商品「キンケシ」の最新版で、シリーズ初のフル可動仕様となります。全身14カ所の関節が動き、お好みのポーズや技を決めて飾れます。価格は1回500円、11月第2週から順次発売予定です。
そして、小学館の雑誌「小学8年生」12・1月号(10月末発売)の付録として、初代ガシャポン自販機「BVM100」のペーパークラフトも登場します。組立済の見本を確認したところ、全高約260mmとかなり大きく、ハンドルを回してカプセルを出すこともできる本格的なものでした。現存する実機はかなり希少なので元ネタを見たことがあるお子さんはほとんどいないはずですが、親世代には懐かしく、親子で楽しみながら作って遊べるのではないでしょうか。